18.意外な再会
今俺の目の前で、勇者&スティーブ&大臣vs王女&治癒師vsヴィンセントさん&知らないおっさんの言い争いが繰り広げられていた。
言い争いの内容は、俺を勇者パーティーに入れるか入れないか。
賛成派は勇者&スティーブ&大臣、反対派はその他4名。しかし反対派も、反対派同士で言い争っている。カオス。
そして俺の意見は誰も聞いてくれない。完全に蚊帳の外。
どうして……どうして……。
どうしてこうなった!?
◆◇◆
スティーブにお姫様抱っこされ、ギルドの休憩室に運び込まれてしまった俺。
スティーブは俺の靴を勝手に脱がせて、捻った足首を診ている。乙女の足に勝手に触れるな馬鹿野郎。
「おいスティーブ、その人の足はどうだ?」
「軽い捻挫のようですね。マリアンヌ、ヒールをかけてくれ」
そうスティーブが言うが、返事がない。
というのも、女性陣は凄い目つきで俺のことを睨みつけているからだ。
俺が思うに、エカテリーナ王女殿下はスティーブが好きで、マリアンヌ様とやらは勇者が好きのようだ。2人とも男の趣味わりーな。
そんなスティーブと勇者に甲斐甲斐しく世話をされている、ぽっと出の謎の美少女。女性陣が不愉快に思うのも無理はない。
「マリアンヌ、どうしたんだい?」
「……どうもこうも、何で私がそんな見ず知らずの女に魔法を使ってやらないといけないわけ?」
「そうですわ。マリアンヌの魔法は、勇者様や仲間である私たちのために使われるものですから」
「お前ら、何言ってんだ!? 怪我人を放っておくのか?」
正直言って放っておいて欲しい――とは口が裂けても言えないので、とりあえず黙って成り行きを見守るしかなかった。
しかし、暫くすると休憩室の外からドタバタと誰かが走ってくる音がした。
そして扉が壊れるんじゃないかというくらい勢いよく開けられた。
「レイラっ! 大丈夫か!?」
「えっヴィンセントさん!? なんでここにっ?」
「それはこっちのセリフだ!」
休憩室に駆け込んできたのは、アガサのハンターギルド長のヴィンセントさんだった。何でアガサにいるはずのヴィンセントさんが王都に?
「お前が足を折ったって聞いてびっくりしたぞ!」
「折っては無いですよ、捻っただけです」
「そうか、それならまだよかったが……」
「師匠の知り合いっすか?」
勇者がヴィンセントさんを師匠と呼んだ。
あーということは、勇者の指南役として結局ヴィンセントさんは王都に召集されてしまったということか。
「ああ、うちのギルドで受付をしていた子だ。俺の娘みたいなもんだ。地方に行くって言ってたのに、何で王都にいるんだ?」
「地方に行こうと思っていたんですけれど、何処がいいか迷ってとりあえず王都のギルドで情報収集をと思って」
「そうだったのか」
「あの……ヴィンセントさんは結局?」
「ああ、王命で強制徴集だ」
可哀想に。
とはいえ、勇者とヴィンセントさんの仲はそう悪いようには見えなかった。
一応勇者も“師匠”と呼んでるし。勇者が魔王軍と戦う意思を見せたのも、ヴィンセントさんの指導の賜物かもしれない。流石だ。
「マリアンヌ嬢、どうかこいつの怪我を治してやって欲しい」
「……分かりました」
ヴィンセントさんに言われて、マリアンヌは渋々といった感じで、私の捻挫を治してくれた。
凄い、一瞬で痛みが吹き飛んだ。
そう言うスキルだとは分かっているけれど、俺のスキルとはエライ違いだ。
「ありがとうございました、マリアンヌさん」
お礼を言うも、マリアンヌはそっぽを向いてしまった。何もしていないのに完全に敵認定されてしまっている。
まぁいい。もう用は無い。ヴィンセントさんと予想外の再開には嬉しかったけれど、私はここにいるべきじゃない気がする。
「あの私――」
「なぁ師匠」
私帰ります、という言葉は勇者に遮られてしまった。
「ん? なんだ」
「レイラちゃんのことを、俺らのパーティーに入れたいんだけど」
「は? ソウタ、お前何言ってんだ」
俺も「は?」である。こんなか弱いレイラを勇者パーティーに入れるとか、死んで欲しいのかコイツ。
しかし勇者は大真面目にこう言い放った。
「レイラちゃんが一緒じゃなきゃなきゃ、俺魔王と戦わねーから」
そして冒頭の言い争いに繋がるのである。
ちなみに知らないおっさんは、後から来た王都のギルド長だった。
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