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16.ランチはもちろん男の奢り

 俺に向けられる視線――男からの色を持った視線、女からの嫉妬交じりの視線、どれもこれもが癖になる。


 早速王都見物に出た俺は、深くかぶっていたフードを取り払い、美しいレイラの顔を晒して街を闊歩していた。

 視線が突き刺さる、みんな俺に釘付けだ。

 この瞬間が一番癖になる。これだから女装は素晴らしい。

 誰も彼もが俺の虜!


 ああ、女神さま! 俺に女装という趣味を目覚めさせてくださってありがとうございます!

 生前の筋肉質な俺とは全く違った今生をありがとうございます!!



 ◆◇◆



 時刻は昼、お腹がすいたので、ちょっとおしゃれなカフェに入ってみた。


 メニューを見ると……高い。思った以上に。流石は王都、物価が地方よりも1.5倍程度高い。

 あまり余計な出費はしたくなかった。


 そこで俺は費用を節約するべく、ちょっとスキルを使用した。

 先ほどから私をチラチラと見ている数人の男たち。そのうちの1人に対してスキル“魅了”を発動させた。ただニッコリとほほ笑んでやっただけ。


 脳内アナウンスが聞こえる。


『スキル“魅了”が100%発動しました』


 スキルにかかった男が、俺のテーブルにやってきた。


「やあ、君見かけない子だけど何処から来たの? 名前は?」

「レイラよ、ハーベルって田舎からきたの。王都には今朝ついたばかりなの」


 そんな他愛のない話をしつつ、スキル“誘惑”も発動。もちろん100%かかった。

 

 ふっ、造作もないわ!


 男を見ると、男は夢心地と言った様子で、目がとろけている。


「さてと、私ドリンクとランチメニューとデザートはアイス。支払いは――」

「もちろん俺が奢ります、いえ奢らせてくださいレイラ様。なんでもお申し付けください」


 こうして俺は一銭も使わずに、豪華なランチを楽しむことが出来た。


「ねぇあなた、ギルドってどこにあるか知らない?」


 ランチを終え、誘惑100%状態の男にギルドの場所を尋ねた。


 スティーブに遭う可能性はあったけれど、情報収集のためにはギルドに行くが一番だった。

 ギルドではフードを深く被っていれば大丈夫だろう。


「ギルドでしたら、この通りを真っ直ぐ言ったところの突き当りにあります。ご一緒いたしましょうか?」

「いいえ、大丈夫よ。ランチご馳走様。楽しかったわ」


 そう言って俺は男とお別れした。この分だとこの男は、数日間は“魅了”と“誘惑”は掛かりっぱなしだろう。しばらくは夢見心地。

 

 これは練習である。しっかりスキルを使って、レベルを上げなければいけない。男は丁度いい練習台だったのだ。

 流石に”男殺し”は相手に口付けする必要があるため、相手のどこでも構わないとは言いつつも、気軽にやれるものではない。


 こうして俺はスキルの練習をしつつ、素晴らしいランチを楽しむことが出来たのである。

 


 ◆◇◆



 男に言われたように通りを進むと、ひときわ大きな建物があった。

 王都のギルドの本部の建物だ。

 流石は王都のギルド本部――アガサの町のギルドの5倍はあるそうな規模感である。


 俺はフードを深く被り顔を隠し、早速中に入った。

 建物の中は非常に混雑していた。


「すごい人、いつもこうなのか?」


 俺が小さく呟くと、その声を拾われてしまったのか隣に立っていた男が声をかけてきた。


「あんた、王都のギルドは初めてかい?」

「ええ、そうです。凄い人でびっくりしました」

「いつもはこの1/3程度だぜ」

「え? そうなんですか?」

「ああ、今日は何でも勇者様ご一行が視察に来るんだとさ。だから勇者様見たさにこの混雑さ」


 そう言うことか。

 俺も勇者は一度見てみたかったからタイミングは良いといえばいいのだが、この混雑では情報収集は無理そうだ。

 仕方ない、今日は勇者とやらの顔を見るだけにして出直すとすることにしよう。


 俺がそう考えていると、にわかに入口付近が騒がしくなった。


 勇者様ご一行がやって来たらしい。

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