表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/80

13.ギルド長の悩み

 異世界から勇者を召喚? そんなことが出来るなんて驚きだ。

 その異世界から召喚された勇者とやらは、魔王や魔族たちを倒せるような人材なのだろうか。もし……もしその勇者とやらが、俺がいた世界からきた人だったら、日本人だったらと考えると、興味はあるのだが。

 ……とにかく俺にとっては遠い世界の話で、下手に関わり合いになると面倒な予感しかしない。



「勇者様の指南役だなんて、悪くはない話ではないのですか?」


 前線復帰してくれと言うわけではないのだから、悪くない話だと思う。勇者の師匠とか、良い箔だ。


「いや、それがだな。どうもその勇者様の素行とやらがあまりよろしくなくて、陛下も手を焼いているらしい」

「それは大変ですね」

「王都のギルドが用意した指南役は全員クビ、しかも勇者様はそれなりに強いらしくて、A級ハンターでも相手をするのがキツイらしい」

「……それ、もう前線に送ったほうがいいんじゃ」


 それだけ強いならさっさと戦って欲しいものだ。


 先代魔王は15年以上前に倒れ、現在代替わりしているという話は聞いたことがある。

 しかしこの新魔王は先代よりも強くカリスマ性に溢れている。歴代最強魔王の呼び声も高い。

 そのせいで魔族の領土は拡大する一方で、人間側は押されっぱなしらしい。


 そういう事情もあって、王家は秘術とやらで異世界から勇者を召喚したのかもしれない。起死回生の一手として。


「勇者とやらは、どうやら実戦は怖いらしい」

「え、使えなっ!」


 思わず本音が出てしまい、慌てて口を塞ぐ。

 ヴィンセントさんは気にした様子もなく、話を続けた。


「鍛錬はするらしいが、自分より弱いヤツを痛めつけるようにして強さを誇示して、他の時間は女を侍らせて宴会をしているそうだ」

「最低じゃないですか」

「ああ、最低だな。そんなんだから性根を叩きなおす意味も込めて、俺に指南役の依頼が来たんだが――とても矯正できるようには思えん」

「私もそう思います」

「陛下からは何度か相談の手紙をいただいているが、読む限り勇者はクズだ。……それでも勇者だから取り入ろうとする奴は大勢いて、そいつらが勇者を持ち上げるから更につけ上がる」


 完全に悪循環になってるようだ。

 勇者とやらがどうゆう世界から招かれたのか知らないけれど、余程お花畑の平和な世界から来たに違いない。そうでなければ、自分を心配してくれる人を蔑ろにして、自分を利用するために甘言をする人を側に置くはずがない。


 こりゃ勇者召喚は失敗だな。


「それで指南役選出に困った王都のギルドが、ギルド長に打診してきたんですね」

「そういうことだな、はっきり言って迷惑だ。昨日断ったのに、あのスティーブとかいう男は人の話を聞きやしない」

「そうですよね、なんか思い込んだら一直線って感じで」

「だろ、だろ、だろ?」


 孤児院にいたときのスティーブと性格そのものは変わっていない。常に自分が正しいとそう思って行動している。

 断られる、抵抗される、否定される――そう言ったことはあり得ないといわんばかりの自己中心的な奴。

 そんな奴がギルド長の説得に派遣されるなんて、王都のギルドは余程の人材不足なのだろうか?


 とにかくもうスティーブを関わり合いになるのは御免だ。

 男であるレイを知っているというのも危険すぎる。いつレイラがレイだと気が付くか分かったもんじゃない。

 残念だがギルドのバイトは任期満了でサヨナラ。残念だ。


ブックマークや評価、本当に励みになります! レビューもとても欲しいので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ