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1.女神さまからスキルを貰う

挿絵(By みてみん)

 人は生まれながら平等だなんて、絶対にそんなことはないと思う。

 家柄や環境――そして容姿。


 俺の名前はレイ。ファミリーネームは無い。


 元々は日本という国に住んでいたどこにでもいる男子高校生だったが、うっかり交通事故で死亡。何か車が突っ込んできたのは記憶にあるけれど、気が付いたらこの世界に転生していた。

 今の俺は戦災孤児ってやつで、教会運営の孤児院で生活している。



 俺は今日16歳になり、孤児院から旅立ちの日を迎える。


 持ち物は殆どない。リュック一つで済むくらい。

 だが、俺にはそれだけで十分だ。


「ついにこの日がやってきた! 俺は今日から女装して生きていくぞ!」


 1人部屋で決意表明をして、女装グッズの詰まったリュックを背負い、誰にも見送られることなく俺は旅立った。



 ◆◇◆



 始まりはありふれたもので、戦争で村が焼けて俺一人が生き残った。

 人間と魔族の長きにわたる戦い、それに巻き込まれたのが俺。そんな境遇の子供なんて、このご時世わんさかいて珍しい話でも何でもない。


 その時俺は1歳くらいだったようで、そんな幼児期の記憶なんて残っていない。両親とかの記憶もまるでないし、感傷もなかった。


 前世の記憶は3歳くらいからはっきりしてきたけれど、よくある異世界転生者が現代知識を活かして無双するみたいなことはできなかった。

 元々はただの男子高校生だ。何かできるはずもない。


 物心ついた時にはちょっと大きめの町の孤児院で生活していた。

 普通よりも下の生活だったけれど、最低限の衣食住は保障されていたのでその点については大きな不満はなかった。日本で生きていた頃に比べたらアレだけど、生きていける、ただそれだけで十分だった。


 別の不満はあったけれど――。


「っ、いてっ!」


 小石を投げられた。怪我をするようなサイズの物ではないが、当たればそれなりに痛い。


「やめろよ! 俺がなにしたっていうんだよ!?」


 そう抗議すれば、相手の少年たちはからかう様に言い返してきた。


「お前、なよなよして女みてー」

「はははっ、そんなんで男? ちんこついてんのかよ! あーはははっ」


 同じ孤児院の少年たちで、俺よりもいくつか年上。

 俺を虐めている中心人物は、名前をスティーブをという。


 今生の俺は体格に恵まれず、線が細い。顔も女顔。髪も頻繁に切れないので伸びてしまっており、とても男には見えない有様だった。

 前世の俺はがっちりスポーツマンタイプで、それなりにモテていたのに。トホホホ……。


「お前みたいなやつは、孤児院出てもハンターにはなれねーよ。俺たちは孤児院を出たらギルドに入ってハンターになるんだ! いつか強くなって、世界のために魔王と戦うんだ!」

「そうさ、レイちゃん! お前みたいになよなよした奴には一生無理だな、ははははっ。もう行こうぜスティーブ!」

「おうよ!」


 そう言って最後とばかりに石を投げつけて、連中は走り去っていった。


 こんなことは日常茶飯事だ。


「はぁ……別に俺は成長したらハンターになるつもりとかないんだけどな」


 自分が体格に恵まれていないのは分かっているし、ハンターになって魔族と戦うつもりもなかった。ベースは現代の日本人、そんな勇気はない。


 しかし孤児院から旅立った者の多くはギルドに所属し、魔族と戦うハンターになるケースが多い。

 何故なら、彼らは魔族に恨みがある。村を焼かれた、家族を殺された、そんな恨みだ。


「別に魔族に恨みがあるわけじゃないし、大人になったらその辺の店で従業員として雇ってもらおう……」


 そんなことを考えていた俺だが、13歳の時に一つの転機が訪れた。



◆◇◆



 13歳になると教会でスキルの伝授が行われる。これは例外なく、誰もが受けることが出来る。

 俺は嬉しかった。これぞ異世界転生の醍醐味だと!


 貰えるスキルは3つ。

 優しい女神様なので、スキルの希望はある程度聞いてくれることが多いそうだ。


 数年前、スティーブはハンターに適したスキルを手にしたと喜んでいた。

 俺は普通のスキルがいい。


「司祭様、孤児院のレイです。13歳になりましたのでスキル伝授をお願いします」

「よくきたね、早速女神さまにお祈りしなさい。この紙を持って、女神像の前に立って」


 そう促され、女神像の前で祈る。

 渡された紙は今は白紙だが、スキル伝授と共に内容が浮き上がる仕組みになっている。


 俺は祈った。

 カッコいいスキルにも憧れはある。剣技とか魔法使いとか……。でも前世が平和な国の男子高校生なので、戦うとかは無理。

 ここは堅実なスキルをお願いするべきだと考えた。


 どうか自分が生きていくうえで最良のスキルをください。裁縫とか、料理とか、接客とか……。


 そしてフッと身体が温かくなるのを感じた。

 ドキドキしながら目を開ける。

 紙には3つのスキルが浮かび上がっていた。


「……はっ!?」


 俺はそのスキルを見て仰天した。

 思っていたのと違う。あまりにも違いすぎる。

 俺はそのまま白目をむいてぶっ倒れた。


 あぁ女神様、一体俺はこのスキルでどう生きろというのでしょうか?


 紙に浮かび上がっていたスキルは、『魅了』『誘惑』『男殺し』だった。


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