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「夏休みの仕事。ある程度は片付いたから、映画でも借りて観ようと思ってさ。」



ハルはそういうと7分丈デニムのポケットから家の鍵を取り出した。



「あの近くにレンタルビデオ店なんてあったんですね。」



「逆にあそこくらいしかこの辺にはないからなぁ。」



――――


雨が降りしきる公園で小野谷ハルと遭遇した僕は雑談もなしに襟を引っ張られたのだった。

ハルは僕の身体を見るなり何かを察したような表情を浮かべ、着いてくるよう促した。


徒歩で5分ほど歩いたところにハルの家はあるらしく、もう5分ほど歩けば僕とハルが通っている中学校に行けるらしい。

右往左往しながら彷徨った道は以前住んでいた町へと続いていたのだ。


話した情報はこれだけで、歩いている時もハルは終始無言だった。


ちなみに呼び捨てで呼んでいるのは、彼女が生徒に対して友達のように接するからで、ハルと呼ぶのも、どちらかというとあだ名で呼んでいるニュアンスに近い。

ちなみに僕はしっかり先生と呼んでいるが、、、心の中でくらいは良いだろう。

――――


ガチャリと鍵があく音がして、ハルは家のドアを開けた。



「楽しみにしていた一番風呂は泉にあげるから、とりあえず入ってきな。せっかく成績が良いのに風邪でもひいたら馬鹿になっちゃうよ。」



ハルはビニール傘をたたみながらそう言うとリビングの方へと向かった。



僕は濡れたスニーカーを脱ぐ。――服はどうしようか。。。



「「あ、濡れた服は洗濯機ね。靴は立て掛けておきな。」」



ハルの声が少しこもって聞こえてきて、僕は分かりましたと返事をした。姿は見えていないはずなのに、どうして僕の迷っていたことが分かったのだろう。



僕は言われた通り濡れた服を洗濯機に入れ浴槽の扉を開けた。



入念に身体を洗ってから湯船に浸かると、どこからともなく幸福感が沸き上がってきた。



そして涙も湧いてきた。



どうしてだろう。あなぜ涙が出るのだろう。



お湯の温度は熱すぎるし、浴槽は小さくて足は延ばしきれない。



どうしてだろう。



―――



僕は赤くなった瞳がハルに知られないようもう一度顔をよく洗い浴槽を出る。



脱衣所には綺麗に折りたたまれた翡翠色のバスタオルとスウェットが置かれていた。



「「それ着て―。」」



再度タイミングを見計らったかのようにハルの声が聞こえた。



僕は用意された服を着ると、一度深呼吸してリビングへと向かった。



「やっぱりちょっと小さかったね。袖のあたりがなんかおかしい。」



「いえ、着るものを貸していただけただけで――」



「元彼の服なんてうちにはないからなぁ。――でもまぁ泉は女の子みたいな容姿だし大丈夫だよ。」



「先生、それは気にしている事なので――」



「そうなの?可愛くていいじゃん。可愛い方が良いよ。絶対。」



「いや、まぁ、はぁ。」



僕はそういうとハルの部屋を見渡した。



青がベースだが、モノトーンの配色も多く空というよりは深海。といった雰囲気だ。



家具は少なく、僕と同じくらいの背丈をした観葉植物とグレーのソファ、テレビを取り囲むように作られたテレビ台にはたくさんのDVDが並んでいた。パッケージは英語やカタカナが多い。



「泉ご飯食べた?」



「いえ、食べてないです。」



「肉じゃがあるよ。食べる?」



ハルはそういうと僕の返事も待たずキッチンへと歩いて行った。



肉じゃがなんて給食でしか食べたことが無い。



「ドライヤーあるから髪乾かしちゃいな。あと何か観たいDVDあったら勝手にやって。」



僕は机の上に置いてあったハルが借りたであろうDVDをプレイヤーに読み込ませるとドライヤーで髪を乾かした。



「それ見るのー?私もみたいからちょっと止めておいて―」



映画はアメリカの映画だった。



【ブルーベリーパイは選ばれなかっただけ】なんてしきりに言っていたが僕にはあまり内容が理解できなかった。














ハルが作った肉じゃがはしょっぱかった。





ジャガイモも少し芯が残っていた。













僕は大きい鍋の半分まであった肉じゃがを全て平らげた。




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