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プロローグ

 子供が自立するのはいつなのか……、正確に答えられる人は果たしているのだ

ろうか……。


 義務教育を終えたら?


 職についたら?


 成人を迎えたら?


 独り暮らしを始めたら?


 詳しく知りたい人は国語辞典なり広辞苑なりを引いてもらえば学術的な解答が

載っているのかもしれないが、「自立」という境界線は非常に曖昧だ。何をもっ

て「自立」したことになるのか、それは人それぞれの感性によるものだと思う。


 例えば両親が亡くなってしまったと考えよう。これは「自立」するというより

は、「自立しなければならない」になる。強制的に、だ。今までは誰かがしてく

れたことも含め、全て自らで行わなければならない。

 家に帰ればご飯が出来ており、暖かい寝床でぐっすりと眠る。洗濯ものもカゴ

の中に放りこんでおけば次の日にはキチンと洗濯された状態で置いてある。普通

だと思っていた世界が、いかに恵まれていたか、また、同じだけの労働を今度は自

分一人でしなければならないという事。


 つまり「自立」する、ということはそういうことだ。


 誰の力も借りず、誰の助けもいらない、自分一人だけで全てを抱え込み、全て

を上手くこなすこと……それが「自立」、つまり子供である自分との決別なので

ある。


 だから俺は強くなる必要があった。「自立」する、ということは自分一人の面

倒でも厄介だというのに、俺にはそれにプラスして守るべき人が、まだ何も出来ない被保護者がいたから。

 だから俺は早く成長しなければならない。早く一人でなんでも出来るようにな

らなければいけなかった。たとえ誰かを突き放してでも誰かの手助けを借りるつ

もりはなかった。それは結局のところ俺の甘えでしかなく、俺の成長にはならな

いからである。


 だから俺は早く大人になる必要がある。俺の大切な人を守る為に、俺の大切な

人をこれ以上悲しませないように。


 そのためだったら俺は、俺の中の他の何を犠牲にしたっていいと思っていた。


 だから俺はいつか「自立」する。もう、手を引いてくれる誰かは存在しておら

ず、今度は俺が手を引いて先に連れて行かなければならないのだから。


 つまりは、そんな詰まらないお話。そんな独り善がりな考え方しか出来ていな

かった、突然「自立」を迫られ、追い詰められていた俺の陳腐で退屈な日常生活の話。


 結局のところ、いくら形だけ「自立」しても、頭の中が子供の俺では、何も出

来やしなかったのだ。その頃の俺には、そんなこと考えるだけの余裕が足りていなかった――



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