死因はゴミ箱で頭を強打
僕、ジル=オルドランドは、言ってみればヘタレというやつで、本当になんの取得もない。
魔力もない、運動神経も皆無、頭脳に関しても平々凡々だ。
同年代の皆は冒険者として旅に出て、魔法を扱っていたりするが、そんなことは僕には到底出来ない。
村の人間達からは何かと笑われ、貶され、苛められ、邪魔者扱いされる。
まぁ、仕方ないと思ってる。
だって僕は何も出来ないから。
ドブに落とされたり、水をかけられり、ゴミを投げつけられたり、そんなのは日常茶飯事だ。
そして村で定着した僕のあだ名はナメクジ野郎。
まぁ…ナメクジなら、ゴキブリよりマシかな…。
こんな僕の取得を強いて言うのなら、何でもかんでも状況をすんなり受け入れられることぐらいかもしれない。
そんな僕の日常のとある一日の出来事。
村人の一人がふざけて投げたゴミ箱の角が、僕の頭にいい具合にヒットした。
痛いと思う暇もなく、僕の意識は暗闇へ。
そして二度と戻らない……はずだったんだけど…。
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次に僕が目を覚ました時、その場所はいつもの村じゃなかった。
雪が舞い散る、奥深い山の中だった。
僕の付近には、卵の殻のようなものが散らばっている。
卵にしては大きすぎる気もするが。
…あれ……僕、何でこんなところに…?
死んだんじゃなかったっけ…?
村の人たちが、僕の死体を山に捨てたのかな…。
実は死んでなかったみたいだけど…。
そう思いながら僕は自分の姿を見ようとした。
けれど、どうやっても人間の肌が見えない。
真っ白い鱗で覆われた何かが視界に映る。
…なんだ? これ…。
そう思って触ってみようと手を動かす。
…手を…動かす…?
手を動かしたはずが、動いたのは人の手じゃない。
こちらもまた白い鱗に覆われた鋭い爪をもつ大きな足だ。
…ん……?
んん…!?
怪訝に思って僕は近くにあった凍りついた水たまりを見る。
すると、その水たまりが映し出したのは、真っ白な鱗に覆われた、紫色の目を持つ…ドラゴンの姿だった。
…あれ……僕…ドラゴンになっちゃったみたいだ…?
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