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父親が来た。
仕事で忙しいのに、学校に来てくれた。
迷惑かけて、ごめんなさい。
私はあれから、親が来るまでずっと職員室の担任の前に立たされていた。
次の授業で席を立たれる先生にも、すれちがいざまに反省しろと言われた。
立っている間、誤解を解こうと担任の先生を呼んだが無視され、周りの先生に話そうとしたが、こちらも呼びかけても無視される。
誤解だとポツリとつぶやいたが、何人かの先生が呆れた冷たいまなざしを向けただけだった。
そんな苦痛の時間を過ごし、さすがに泣きたくなった頃、親がやってきたのだ。
「お待ちしておりました。」
担任の平坦な声で始まり、親と担任が一通りのあいさつをする。
校長や教頭も職員室にやってきた。
そして本題。
親に説明している間も、校長室や空き教室に行こうとせず、まるで見世物の様に職員室で話す。
もちろん、他の先生も机に座って聞き耳を立てていた。
「・・・・と言う理由で、今日はお呼び出しいたしました。」
担任が怒りをあらわに親に説明し終わる。
「それが本当なら、申し訳ありません。ですが、娘にも理由を聞いてくださいましたか?」
父親の一言で担任が一瞬たじろぐが、勢いよく口を開く。
「反省や謝罪もしないんです!」
理由を聞いたかと聞いたのに、答えになっていない。
その他、担任はいかに私が悪いのかとまくし立てる。
「まあまあ、先生も落ち着いて。泣いてた生徒たちも謝ってくれるのなら許すと言ってるんです。子供さんに何が悪いのかちゃんと理解させ、反省をするよう親御さんからも言ってっください。もちろん、私ども教師も今後この様なことがおこらないよう指導していくつもりですが、ご家庭でのありかたもご家族と話し合ってもらえますでしょうか?」
校長が担任をいさめながら、私の親に言ってくる。
ご家庭でのありかたって・・・私の家庭環境が悪いって言うの!
「先生方はこの子が悪いと決めつけているようですが、理由をちゃんと聞きましたか?私はまだこの子から理由を聞いていないんです。この子の話もちゃんと聞きたいと思います。それから、今後どのようにしていくかのお話になるかと思いますが。・・・ゆみこ、ちゃんと何があったのかお父さん達に教えてくれるかい?」
「何を!」
担任がしゃべりだそうとするのを父親が手で制す。
それを見て、私は親がちゃんと私を見てくれると確信ししゃべり始めた。
「誤解なの。」
「誤解?どう言うことだい?」
父親が優しく聞く。
「お昼休みに女子の集団に体育倉庫横に呼び出されたの。でね、わけのわからないこと言って殴ってきたの。はじめは避けたけど、石まで投げてきたから危ないと思って殴り返しちゃったの。私のほうこそ何もしていないのに。」
私が悪いと決めつけてたから話もさせてもらえなかったけど、やっと話せた。
「娘の話を聞く限り、非は呼び出した子達にあるようですが?」
父親が私を信じて、先生方に言ってくれる。
「ですが、あの子達全員が泣きながら訴えてくるのですよ。全員が嘘をついているとも!」
まだ担任が焦りながら怒鳴り返してくる。
「先生、落ち着いてください。誰か、保健室から生徒達を連れてきてもらえますか?双方のお話を聞きましょう。」
校長が他の先生に泣いて訴えたという子達を連れてくるよう指示を出す。
「ここではなんですので、場所を校長室に移しましょ。」
教頭先生がうながす。そう言えば、そろそろ放課後になる。他の生徒達も来るかもしれない。
「私どもはここでかまいません。それよりも、今、保健室にいる子供達の親御さんたちにもきていただかなくてよろしいのでしょうか?」
父親が教頭の申し出を断り、柔和な顔をして言うが眼が笑っていない。
「いえ、ことが大きくなってはお子様もまずいのでは?」
校長がちょっと焦りながら言う。
「まずいことはありませんよ。それより、私どもを呼び出した理由が『何が悪いのかちゃんと理解させ、反省をするよう親から言う。先生方の今後の指導の話し合い。家庭環境のありかた。』でしたよね。ならば、一方の親だけではなくお互いに話さなければ改善されないと思いますが?」