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魔法陣攻略2

 首筋にチリチリするような違和感が付き纏っている。その感触に従い横へと身を投げ出した。

 魔物の尻尾が異様な変形を見せてオレの頭があった場所を切り裂いていた。まるで太刀だ。

 続いて周囲に雷撃が奔る。


 鎧兜のおかげで痛撃にまで至らないが、それでも痺れる不快な感触は残る。

 【知覚強化】で視覚が、触覚が、魔物の動きを察知していた。

 再びオレの後ろをとろうと頭上にいる。

 空中にいる間は避けようがあるまい。

 そう思って薙いだのだが尻尾で迎撃された。


 盛大に火花が散る。

 剃刀のように鋭い刃がオレの右腕を掠める。そしてそのまま地に落ちた。

 偶然だが尻尾を切り落としたようだ。

 地面に落ちた魔物にサーシャ達が殺到する。逃げ場はない。

 と思っていたらオレに向けて突進してきた。

 体当たりを腹に喰らった。割と効いたぞ。

 その代償に魔物も捕まえた。左手で額の赤い石を握って右手の日本刀で首元を突き刺した。

 そのまま抉るように手首を返して切り上げる。手ごたえはあった。


 地面に落ちた魔物にサーシャが苦無を突きたてた。

 だがこいつは動きを止めない。というかダメージを与えられていないようだ。

 さすがにこれはおかしい。

 カティアが魔物を押さえつけてメイスで叩きまくっている。ダメージを受けている箇所が剥がれ落ちていた。

 あれ?これってまさか。

 騙されてる?


 ショートソードを抜いて魔物に突き立ててみた。魔法が介在する攻撃であればカーバンクルにはダメージが通らない筈だが。

 すんなりと貫通する。

 苦無ではまるで歯が立っていない。魔法の武器でないと傷つかない魔物か。


 騙された。

 騙されてました。

 こいつは魔法生物だ。一種のゴーレムだと思えばいい。

 カティアの持つタンガロイメイスは魔法式を問答無用で破壊する。崩れているのは魔法式が崩壊して体を維持できなくなっているからだ。

 【魔力検知】でも見分けがつかなかった。これは仕方がないのだが。

 単純に腹立たしい。こんな奴を用意していたとは。

 額の赤く光る石もフェイクだった。刀で頭を突くとボロボロと崩れていく。

 動けないよう押さえ込まれた魔物にカティアが思い切りメイスを叩き込んだ。タンガロイメイスならば魔法生物であろうがなかろうが関係ない。

 その一撃は魔法生物を維持する魔法式をまとめて破壊し尽くした。

 魔物はまるで砂のように崩れ去った。


「この魔物は結局なんだったんでしょう?」

 サビーネの問い掛けがオレの耳に痛い。魔晶石を拾いながらサーシャ達を見回す。

「こいつは魔術師が作り上げた魔法生物だ。まんまと騙されたよ」

 失敗は素直に認めるべきだ。反省すべきを反省して先に進む方が生産的だ。


 【転移跳躍】で次の魔法陣へと跳ぶ。今度こそいいイメージを残して勝ちたい。

 魔法陣は平滑に磨かれた岩盤に描かれている。石版は3つだ。【魔力検知】で見ると石版に埋め込まれているのは間違いなく魔結晶だ。

 さっきのマッドオーガ級の魔物を覚悟せねばなるまい。

 石版3つを外すとガーディアンが召喚されてくる。今までになく出現が遅い。

 半透明で全体像が浮かび上がり、徐々に実体化してくる。これまたデカい。


 パイアボア。

 イノシシの化け物だ。オーガのような再生能力はないが、その牙と体当たりの破壊力はオーガを遥かに超えるだろう。

 喰らったらただでは済まない。例え防具が優秀であっても。


 (オレに構わず回避に専念しろ!!)

 どうせこいつもオレを集中して狙ってくる筈だ。それを逆手にとって攻撃を組み立てる。

 猪突猛進で来るしかない相手だ。大丈夫。

 そんな思いを打ち砕く勢いで巨大な巌のようなイノシシが突進してきた。

 正直、おっかない。


 両手に2本のショートソードを抜き放ち【収束】と【粒子加速】を念じる。

 【位相反転】を念じて目の前に不可視の壁を築くが。

 さすがにあの突進を完璧に食い止められるとは思えなかった。

 壁に突っ込んできたのと同時に【転移跳躍】する。

 跳んだ後に聞こえてきたのは凄まじい音響だった。オレがいた場所を見るとイノシシは通り過ぎていた。

 やはり【位相反転】の壁も突破したのか。それどころか岩盤に頭から突っ込んでいた。

 その巨大な尻に矢が次々と突き刺さる。矢が肉を抉り、矢から顕現した火精サラマンダーが表皮を焼き始めた。

 戦斧が投擲されて皮を深く削っていく。

 甲高い音が響いてサーシャがダガーの能力で穴を穿つ。

 血も出てるしダメージも与えているのは確実なのだが、魔物は悠然とこちらを振り返ってきた。

 頭のほうも血だらけだ。【位相反転】で築いた壁で自らの突進のダメージを受けておいてそれだけなのか。

 跳んでいなきゃ死んでるじゃないの。


 (奴はオレにしか攻撃してこない。オレの周囲に近寄るな!)

 全員に念話で指示しておくと魔物にオレも突進する。

 頭を下げて突っ込んでくるイノシシに対して、極僅かな距離を【転移跳躍】してやり過ごす。

 ショートソードを左前脚に叩き込む。【粒子加速】の効果もあって剣は深い所まで斬り込んでいた。

 MPが満たされる感触もある。大ダメージを与えた筈だ。

 だが。

 より一層荒ぶる気配が濃くなっていくようだ。吐く息も激しい。

 威嚇するように見下ろす目は血走っている。恐怖心を抱かずにはおれない。

 いつの間にか背中に岩盤を背負う形になっていた。

 またしても突進してくる。上に向けて反り返る牙の先端が目前に迫っていた。

 牙の大きさだけでオレよりも太い。これ喰らったら痛いじゃ済まないんだろうな。

 【転移跳躍】で突撃を避けた。

 魔物は再び頭から岩盤に突っ込んだ。洞窟全体が地震のように揺らぐ。

 自らが傷つくのも構わず唯突っ込んでくる。思えばガーディアンとして縛られているのが哀れだ。

 坑道の岩盤に自ら突っ込んで自滅しているのだ。平原や森でならオーガすら簡単に捕食する魔物だというのに。


 さりとてオレもどう仕留めたらいいのやら、これといった決め手が無い。

 できるだけ高い火力で仕留めたいが、図体が大きすぎて致命傷を与えるのも困難だからだ。

 別の手を試してみよう。

 【空間偏移】を剣に念じる。

 剣の表面に黒い魔法式が浮かび上がる。そしてすぐに後悔した。

 【空間遮断】の効果を発動できたはいいが、ごっそりとMPが削れて殆ど空に近い。体の中に鉛を仕込んだような息苦しさがある。

 回復するには攻撃しないといけない。

 イノシシが起き上がり体勢を整えようとする所を横合いから突っ込んだ。

 右手の剣を前に突き出してそのまま腹に突き込んだ。半径50cmほどの穴が穿たれる。

 空間ごと削った魔物の肉がMPにと変換されていく。オレの心も急激に軽くなっていくような気がする。

 そのまま剣を上へと斬り上げた。

 胴体がほぼ半分、一気に分割された。間違いなく致命傷になっただろう。

 まだ繋がっている胴体部分は左手の剣を突き込んで斬り飛ばしていく。

 巨大な胴体が完全に両断され、その切断面から時間差を置いて大量の血液が噴出していった。


「今のは一体?」

 サビーネの驚く顔も見慣れたものだが今日のは格別だ。

 いや、サビーネが持ってる突撃槍の方が付与されている効果が高いんだけどな。

「サビーネが持ってる槍と弓矢に似た魔法がかかっていると思えばいい」

「・・・その剣は一体いくつの魔法が込められているのですか?」

「いくつだったかなあ」

 おとぼけ。

 サビーネは呆れながらも苦笑する。

 最近は彼女も真面目一辺倒ではなくなってきていた。いい傾向である。

 イノシシからは魔結晶が拾えるかと思ったが魔水晶だった。残念。

 個体としてはまだ若い部類なのだろう。

「いや、でかいなこいつ。食えるのかな?」

 カティアは食う方に興味が向いているようだ。イノシシなら旨いんだろうけどな。

 試しに鉈を取り出して分厚い皮の下にある脂肪層とピンク色の肉の間に切り込んでみる。

 塊肉を切り出してみた。血抜きしきっていないからさすがに獣臭い。

「あとで食ってみるか?」

 ここで焼肉もなかろう。サーシャまでも興味深く肉塊を見ている。

 時間があったら肉を全部捌いて香辛料と塩を揉み込んで干し肉とか燻製にして・・・そんな暇ないな。

 材料も無い。それにここは坑道だ。

 【転移跳躍】でラクラバルに持って帰るのが現実的だ。高く売れそうだしな。

 オーガの死体は利用価値が無くなっていたので放置したが、こいつは使えそうな所が残っている。

 特に牙は使える。オレだったら攻城兵器の先端にしちゃうな。

 それにこの巨体で生肉を放置することになると魔物にエサを与えるようなものだ。

 見つけてある魔法陣はもう1つ残ってるが今日明日中に見つかって攻略されるとも考え難い。

 問題があるとすればオレ達が目立つ事だ。

 しかし目立ちたくないのであればライネルでアントンを放置して跳んでいただろう。今更、だよなあ。


 こいつは持って帰るか。

「今日はここまでにしておくか。このイノシシはもって帰るぞ」

 イノシシの上半身の死体によじ登ると【転移跳躍】の範囲を拡大する。

 ラクラバルに残した【フィールドポイント】周辺に障害物がないのを確認して跳んだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 木陰の下に小さな山のようなイノシシの死体が2つ出現していた。

 上半身の上にはカティアが、下半身の上にはラクエルが座っいて、周囲で遠巻きに見ている冒険者や行商人の視線を浴びていた。

 木陰にいたサビーネは真面目に注意深く周囲を見回しているようだ。真面目すぎる。

 オレはサーシャと冒険者ギルドの担当3人を引き連れてサビーネに近付いていく。

「問題はなかったか?」

「ええ、大丈夫です」

「でも色々と聞かれただろう?」

「それはもう。牙を売ってくれとしつこいのがいましたが排除しました」

 どう排除したのかと。怖いことはしないで欲しい

 ギルドの男たちはあきれ顔だ。

「まさか本当に仕留めたのか」

 丹念に説明したんだがやはり信じていなかった。オレみたいな若造が相手では仕方がないとはいえ少しムッとしてしまう。

「で、これを買い取って欲しいんだけど」

「待て。すぐに算定できんぞ」

 まあそうでしょうとも。

 でも肉はどうする。腐ると大変ですけど。

 血抜きは肉の自重で自然と行われていた。周囲に血溜まりができていた。

「うちでパイアボアの牙と皮の引き取ったのはかなり昔の話だ。記録もない。ギルド長に相談だな」

 部下が手に負えない仕事を上司に相談するのはどこも一緒だよな。仕方が無い。

 1人がギルド長を呼ぶために戻っていく。1人がイノシシの死体の周囲を回って検分していた。

「胴体を両断したのか。これはどうやって・・・」

 あまり深くツッコミは入れないで欲しいな。

 もう1人は牙をずっと見ている。きっと頭の中では様々な計算をしていることだろう。


 見ているだけでは暇だ。

 サーシャ達を集める。

「焚き火をするから適当に燃やせる木切れでも集めてきてくれ」

 オレはオレでやりたい事を始める。きっとオレの表情は悪戯小僧のようになっているに違いない。

 切り取っていた肉塊を【アイテムボックス】から取り出す。包んであった古着は血を吸って真っ赤だ。

 鉈をまな板の代わりにして乗せると日本刀を抜く。

 肉塊を薄めにスライスしていく。少し引く要領で薄切り肉が次々と出来上がっていった。

 半分ほどを古着にスライスし終えた肉を戻す。

 焚き火をするには多すぎるほどの枯れ木が集まっていた。

「もう集めなくていいぞ」

 掌に【ファイア】を構築して枯れ木の山に火を付ける。鉈の上に肉のスライスを2枚並べると焼き始めた。

 肉の脂身からじわりと油が出ていい香りを周囲に振りまいた。

 苦無で肉を返して両面を焼く。塩も胡椒もなくて焼いただけだがどうか。

 食べてみる。

 【知覚強化】で味覚も強化されているせいか、血に含まれる僅かな塩味が効いていて意外と旨い。

 でもやはり物足りない。塩と胡椒だな。

「胡椒ならあるけどー?」

 ラクエルが気を利かせて胡椒を取り出した。あれ?買ってたの?

 だが渡りに船だ。粒胡椒を苦無で潰して生肉に少しまぶす。

 また2切れを両面焼いて食ってみる。普通に旨いな。

 獣臭さはあるが気にならない。

「・・・塩は要るかね?」

 行商人だった。ありがたい申し出感謝。

 少量をセム銀貨2枚で分けて貰って早速使ってみる。

 絶妙に旨くなった。これはいけそうだ。


 猪肉の塩胡椒焼きの匂いが周囲を一周する。さきほどの行商人だけでなく、ラクラバルの住人も興味深くイノシシの死体を見るようになっていた。

 さっきまで視線に込められた感情は驚愕だったが、今は食欲にまみれている。素直なものだ。

 体調も問題ない。

 次に3枚を焼いてサーシャ、カティア、サビーネにも食べさせてみた。

 顔を見ただけで旨かったのだと分かる。満足だった。


 暇潰しで焼肉などやっていたらギルド長らしき威厳を周囲に振りまく人物がやってきた。

 平服だがその体はよく鍛えられているのが分かる。禿頭に黒い髭、そして何より鋭い眼光が印象に残った。

「こりゃあ大変じゃな・・・」

 何がでしょ?

 冒険者ギルドの者同士で何やら話をしていた。

「こいつの肉を食ったのは50年以上前じゃよ。ワシは冒険者になったなかりじゃったよ。中々旨くての」

 ほう、やはり旨いのか。

「特にレバーは精がつくらしくての。ワシも大変なことになったわい」

 何が大変だったんですかナニが。

 ただのエロ親父にしか思えないぞ。

「持ち込んだ冒険者はこちらです」

「こんなに若い連中がか?」

「間違いありません。プレートも確認済みです」

 鋭い眼光で睥睨してくるがオレは肉を食うのに夢中、なふりをした。

 いや、旨いのは本当なんだけどさ。

 ちょうど鉈の上で肉が焼けた。

「食べてみますか?」

 イノシシ肉は鉈の上で旨そうな匂いを発散していた。

 オレの顔と肉とを見比べた。

 肉に手を伸ばして口の中に放り込んだ。

 食欲万歳。

「ふむ。まだ獣臭はするが十分旨いな」

「ですよね。これを腐らせるのは勿体無いんで持ってきました」

「・・・食いきれんな、これは」

 ですよねー。

「で、これを冒険者ギルドで引き取れ、というのかの?」

「そうですが」

「肉は処分しきれんぞ」

「干し肉や燻製にしたらどうです?」

「量が量じゃからの」

「大トンネルのドワーフ族なら食い尽くしてくれそうなものですけど」

「どう運ぶんじゃ、この大きさじゃぞ?」

 値引き交渉は長く続きましたとも。一番粘ったのはやはり2本の牙だ。

 その場で引き取りを申し出てくる商人が現れてしまい収拾がつかなくなった。

 でもオレも引くつもりはない。

「これでどうじゃな?」

 ギルド長が耳打ちで提示してきたのは白金貨12枚だ。微妙と言えば微妙なのだが。

 白金貨12枚で手を打つことにした。

 ギルドからの助勢らしく既に3人ほどが皮を剥ぐ作業に取り掛かっている。

 その作業を護衛する冒険者らしきパーティも来たようだ。

「ではギルドまで一緒に来て貰おうかの」

 はしたないが焼けた肉を頬張りながらギルド長の後を追いかけた。

 事情も聞かれるのは確実だ。長い時間にならないことを祈ろう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 事情聴取というほどの事はなかった。

 魔法陣を潰した際の獲物となれば文句はないのだろう。

 転移したのだって転移のオーブとラクラバルの道標があれば誰にでも可能なのだ。

 不審な点はない。

 パイアボアはオーガをも捕食する凶悪な魔物だ。

 狭い坑道の中で自滅したのだ、と説明することで納得をして貰うことにする。

 不審な点はない、と思う。

 あの胴体をどうやって両断したのか、これはとぼけるしかなかった。

 不審、だよなあ。

 でもギルド長は深く追求してこなかった。これには安堵したものだ。

 白金貨12枚を受け取り【アイテムボックス】に放り込むと早めの夕飯を買い込みに屋台へと向かう。

 明日にでもラクラバルの冒険者ギルドに古い坑道の情報が伝わることだろう。

 既に見つけてある残り1つの魔法陣は明日朝一で潰しに行くことにしよう。


 予定外の収入もあって余裕がある。ギルドで携帯食料とオーブ類を買い求め、帰り際に露店で布地を新たに買い足した。

 部屋で夕食を摂ってサーシャ達は各々が普段通りの作業をこなす。

 オレも【遠視】と【遠話】で情報収集を行う。結果は芳しくは無かったが気分はいい。

 なんだかんだで実入りが良かったからだ。


 今日だけで魔結晶が9個。昨日のキマイラとストーンゴーレムの分を含めて14個だ。

 魔水晶が14個。

 まさに荒稼ぎ。一財産を築いたと言ってもいい。

 鑑定してみると、魔法陣に使われていたものは魔力が減っているものが多かった。

 だがそれが当たり前なので気にしない。

 魔水晶は小さな球体で、そのまま放置しても魔力を損なわない。

 魔結晶は小さな球体の中に結晶が生じており、そのまま放置していると魔力を周囲から少しづつ吸収する。

 魔法陣に使っていた魔結晶は標準的な魔水晶よりも魔力が低くなっているのもあった。

 リストバンドにくっつけて持ち歩けば魔力を勝手に吸収するので、その価値は額面どおりにはならない。

 充分です。

 未探索の迷宮を先行する旨味はこういう所だ。前作でもテレマルクと2人、この手で荒稼ぎをしてきたことが思い出される。

 戦闘だけが成長の糧ではないのだ。


 赤っぽい鉱石は柘榴石だった。ガーネットの原石になる。

 【鑑定の鏡】の評価だと魔水晶にも届かない評価だが、磨けばその価値は高まることだろう。

 錬金魔術で磨いてみるか。

 しかしいきなりこれを磨くのは価値を損ないそうで怖い。

 これは保留することにした。


 報酬で貰った宝石を鑑定してみる。

 枠は銀とプラチナ。そして石はなんとアレキサンドライト。

 【鑑定の鏡】の評価は昇華魔結晶5.0以上、だ。マジックアイテムでもないってのに何なのこの高評価。

 以上、とあるのはプレミアがつく可能性を示唆している。おっかない話だ。

 こんな物を報酬にして簡単に渡すなんてドワーフ族の感覚はおかしい。

 今は部屋の明かりで赤く光っているが、太陽光の下では青緑に光る筈だ。

 もう日が暮れているのが惜しい。

 明日の夜明け時のお楽しみにしておこう。

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