魔法陣攻略
ライネルの集落を一旦出て大トンネルをラクラバルへと戻る。
無論、このまま戻る訳ではない。【転移跳躍】を行うためだ。
古い坑道で見つけてあった魔法陣の近くには全て【ダンジョンポイント】を残してある。
これもいい機会だ。
荒らされる前に潰して回ろう。サビーネもかなり戦力として頼りになるようになっていた。
サーシャ達の顔を見回す。昨今は探索行や戦闘をある程度こなしてきている所為か自信に満ちた顔を見せるようになった。
ラクエルだけはあまり変わってないけどな。
「これから魔法陣を潰して回るぞ。強敵が相手になるだろう。油断するなよ」
自信を持つのはいい。でも過信はしてはならない。
それはオレにだって言える事だ。
【転移跳躍】した先は古い坑道で最初に見つけた魔法陣の近くだ。
周囲に魔物はいない。
ここの魔法陣は石版が4つだ。【魔力検知】で確認できる魔力の大きさから見て魔水晶を用いていることが分かっている。
ここの魔法陣で魔物が召喚されている所は3回しか見ていないが、マッド・ドリリーニ、ゴブリン、ゴブリンだった。
大した規模の魔法陣ではない。
確実に弱いガーディアンが出てくる保証はないが、手頃な相手になってくれる可能性は高いだろう。
サビーネを除く4人で一斉に石版を外すと奇妙な音が天井に響いてガーディアンが召喚され始めた。
極端に大きくはなさそうだ。バグベアくらいだろう。
それでも十分に大きいんだが、昨日のストーンゴーレムで感覚がおかしくなってる。
スキュラだ。
超絶美人である。
滑らかで長い髪の毛は金色に光り輝くかのようで艶やかだ。
顔はキツイ印象があるものの気にならないほど美しい。
胸は見事な形で張り出しており、引き締まった腰は胸を強調するかのようだ。
でも褒めちぎるのはそこまでだ。
そこから下にはヘルハウンドをやや小さくしたような犬の顔が並んでいる。まるでスカートのように。
頭の数は6頭分あった
尻尾は魚の下半身だ。イカの足が2本、腰の辺りから伸びている。
巨体を支える脚は犬のものだ。何本あるんだ、一体。数えるのも面倒だ。
船頭多くして船山に登る。
どの頭が統率しているのか、前作でも話題になった魔物だ。
女性の上半身はアンコウの疑似餌と同じ扱いになっていたみたいだが、本当の所はどうなんだろうか。
(こいつは素早いぞ、足を止めるな)
念話を飛ばしておいてオレは【転移跳躍】を念じる。
スキュラの上半身の後ろに跳んだ。
抜き放った日本刀を背後から袈裟斬りにしてやる。だがこれはスキュラへの誘いだ。
犬の顎が届かないこの位置を攻撃してくるならイカの触手しかない。
思惑通りに触手が伸びてくるのをギリギリ引き付けるとスキュラの上から飛び降りた。
ついでに下半身に体重をかけた一撃を見舞ってやる。
2本ある触手の片方を根元から両断する。魚の尻尾にも深く斬れ込みが生じて大量の血を撒き散らした。
犬の口から怒りの遠吠えの大合唱だ。
魔物はオレの存在を気にし過ぎている。足が止まっていた。
チャンス。
カティアのクレイモアが犬の頭の下顎から突き込まれて上顎まで貫いていた。
脚元でサーシャが高速で通り過ぎていく。魔物の足を止めて仕留める戦い方はオレ達の定石になりつつあった。
オレもカティアも魔物から距離を置く。追撃をかけようとするスキュラに矢が突き刺さった。
1つの犬の頭の下顎が半ば砕かれ1本の脚が地面に縫い付けられていた。
それでも最も近くにいたカティアに2つの頭が噛み付こうと追ってくるが。
脚の動きが止まっていた。
ラクエルの矢から一瞬地精ノームが姿を見せたかと思うと魔物の足に岩塊と化して固定しているのだ。
目の前で動きが止まった犬の頭をカティアが一撃で両断する。
オレも横合いから尻尾に数撃を与えて切り飛ばしてやった。
残っていたもう一方のイカの触手がオレに迫っている。
吸盤が、目の前に、見えて、いた。
鋭い棘が、全ての吸盤に、備わっている。
ゆっくりとした攻撃にしか見えない。
姿勢を前傾させてやり過ごすと触手の根元に刀を突き入れて切り上げた。
一撃で触手が地に落ちる。
サーシャは大きく迂回して無傷の首を牽制しながら凄い速さで岩壁を駆けていく。
魔物の攻撃は悉くサーシャの後塵を拝していた。
オレとカティアがまだ自由な魔物の脚を次々と撃ち減らし、ラクエルとサビーネの放つ矢が犬の頭を次々と沈黙させていった。
最後に残った犬の頭は胴体に駆け登ったサーシャが後ろから止めを刺し、魔物はようやく沈黙した。
ガーディアンとしてはスキュラは小物だろう。キマイラに比べたら圧倒的に楽だった。
しかしスキュラか。
海辺や大河のような場所で奇襲してくるからこそ脅威になる魔物だ。
坑道では本領発揮できなかったことだろう。気の毒に。
魔晶石を回収すると次の魔法陣へと向かった。
次の魔法陣は石版はなく、岩盤に直接魔水晶が埋め込まれていた。数は3つある。
ここで召喚される魔物はアリばかりの奴だ。金槌とタガネで外す作業を進めているうちに2匹出現していた。
倒すのは全く問題はないのだが蟻酸が気になってしまう。失明の危険もあるから油断ならない。
ある程度外せそうな所まで岩盤を削った後、3つの魔水晶を次々に外していった。
岩盤が揺れてガーディアンが召喚され始めた。
現れたのはスライム系の魔物だ。しかも大きい。
【ライト】の光の下では綺麗な黄金色に輝いていた。
イエロープディング。
また厄介な奴が現れたものだ。
唯のスライムとクラウドスライムは火で焼くのが面倒がなくていい。臭いのを我慢すればいいだけだ。
前に見かけたブルーゼラチンもそうだが、このイエロープディングも焼けば比較的簡単に倒せる。
但し、発生するガスは猛毒だ。坑道のような場所で焼くのは危険すぎる。
確かイエロープディングは皮膚や肺の中を焼く強酸性の毒だったっけ。
スライムだから物理攻撃は意味がない。魔法の武器もこいつには処置なしだ。
凍らせて砕きたい所なのだがこいつには耐性がある。できなくはないだろうが面倒臭い。
(ラクエルはこいつを焼いてくれ。全員近付くなよ、毒にやられるぞ)
やはり焼くのが面倒がない。
毒ガスはなんとか防御しよう。
イエロープディングがプルプルと震え始めていた。
ブルーゼラチンは流動性が高くて粘性をあまり感じないが、こいつは粘性が高そうだ。
【魔力検知】で魔力の高まりが感じられる。こいつは雷撃系の魔法攻撃を行い、麻痺した所を捕食するタイプだ。
だがラクエルの攻撃の方が早い。
火精サラマンダーが2匹、イエロープディングの表面に顕現すると盛大に表面を焼き始めた。
オレも魔法を構築する。
形状はスクリーン。平面状に結界を構築すると属性魔法の【ブリーズ】を念じる。
範囲を拡大して坑道を完全に塞いでいった。即席のエアーカーテンになる。
念のため、スクリーン形状の結界には若干の厚みも持たせておく。
エアーアーマーになるまでの厚みは必要ないだろう。防ぐのは気体だし。
【ライト】の光の下、イエロープディングは為す術もなく焼きあがっていった。猛烈に煙が生じているが、オレ達の目の前で遮断されている。
煙が収まるまで暫し待つ。楽と言えば楽なのだがMPが心配になってくる。
黄のオーブを1つ消費してもう少し待っていると、イエロープディングは魔晶石を残して炎と共に消えていった。
坑道を塞いだまま【物体引寄】を念じる。スクリーンを維持したままだから、効果発動まで結構手間取った。
魔晶石を手元に引き寄せて回収する。
(全員集まれ)
念話でサーシャ達を集めると【転移跳躍】を念じる。
古い坑道の最も奥へと跳んで逃げ込んだ。
次の魔法陣は石版が3つだ。しかも魔結晶で構成されている。
場所も広く天井も高い。ここで大型の魔物が召喚されている理由もそこにあるのだろう。
ここで召喚されているのはロックスキンクだ。召喚間隔はそこそこ長いようなのだが、さほど待たずに召喚されてきた。
MP回復の生贄になってもらうのだ。
両手にそれぞれショートソードを抜いて【収束】を念じる。MP吸収効果を高めるためにやや強めにしておいた。
ラクエルも剣を抜いてオレと並んで大トカゲに相対した。彼女もMPを補充するのにこいつはいい相手だろう。
硬い上にタフだが動きは鈍い。振り回してくる尻尾にだけは注意だ。
オレとラクエルだけでザクザク切り刻んで終了した。あまりに手ごたえがないが、魔法剣がなければ時間をやたらと必要とする魔物なのだ。
装備に感謝だ。
石版の継ぎ目を少し削って外しやすくしておくと一斉に外す。
すぐに【アイテムボックス】へ放り込むと魔法陣があった場所から距離を置いた。
どこかで大きな音がする。空気だけでなく岩盤までもが震えてるような感覚に陥りそうだ。
目の前にガーディアンが現れ始めていた。
オーガだ。しかも唯のオーガではない。
今までに戦ったオーガよりも一回り大きい。その肌はより浅黒く、その顔付きはより凶暴に見えた。
マッドオーガ。
オーガの亜種だとも変異種だとも言われてる奴だ。
これはまた厄介すぎる。
両手のショートソードには【収束】の効果が残っている。それに【粒子加速】を追加して念じていく。
剣に沿うように生成する結界は棒状。これに属性魔法の【サンダー】を念じて雷撃の槍を構成していった。
威力を上げるために更にMPをつぎ込んでからショートソードの能力で雷撃の槍を増殖させていく。
8本生成した所でマッドオーガが召喚を終えていた。
雷撃の槍を解き放つ。
両手両足を縫い付けるつもりが全て避けやがった。なんて奴。
(サーシャ、カティアは奴の横から回りこめ!)
念話で指示して魔物がこちらに突進してくるのを迎え撃つ。
最後に石版を手にしたのはオレだ。魔物は最優先でオレを襲ってくる。
それを逆手にとればいいのだ。
【位相反転】を念じて不可視の壁を目の前に築く。同時にオレに向けて拳が振り下ろされて不可視の壁にまともに撃ち込まれた。
その威力はそのまま魔物へと跳ね返り拳は消し飛び腕は肘のあたりで奇妙に曲がってしまう。
それでもこのオーガは懲りない。オレに蹴りを放つ。
だがその時点で既にオレの攻撃がオーガを串刺していた。
最初に外した雷撃の槍だ。
【誘導】で8本とも魔物を貫いていた。雷撃の効果で魔物の体は反射的に縮み込むように反応する。
だがさすがに麻痺するまでには至っていない。
坑道を壊さんばかりに吼える魔物の顔に矢が突き立ちその肉を削っていく。削られたそばから再生が始まりあっという間に傷が塞がっていった。
はええよ。
だがこっちの追撃も苛烈だった。
坑道にピアノを鳴らしたような音が響く。サーシャがダガーの能力を使って攻撃したのだろう。魔物の肩の辺りがごっそりと削られているのが見えた。
カティアのクレイモアが左足首に豪快に叩き付けられていた。一撃で粉砕するには至らないものの、二撃目で両断してのけていた。
雷撃の槍の先端同士から雷が生じて何かが顕現しようとしていた。
雷精ライオットだ。この不定形の精霊は丸くなったりヘビのように伸びたり、形を変えながら雷撃の槍の先端を飛びまわっていく。
雷撃の槍へと一瞬のうちに同化すると魔物の内側へと入り込んでいった。内側で雷撃の槍の間を駆け回って肉と神経を焼き切っているのだろう。
オーガの目から岩盤へと雷が走っていた。脳にも攻撃を仕掛けているのだ。
たまらず咆哮を上げてオレにぶつけてくる。だがその声はオレには届かなかった。
音精フォーンがいつの間にかオレの肩にいた。この精霊が周囲の音を完璧に遮断している。
外見はな山羊をモチーフにした子鬼で手のひらサイズなのだが。
実に頼もしい限りだ。
次の瞬間、オーガの胴体に大穴が開いた。音が聞こえていないので、まるで悪夢のように現実味の薄い光景だ。
サビーネが突撃槍を投擲したのだと分かっていた。奥の手だな。
効果的に足止めもしながらダメージを与えてきている。順調ではあるのだが。
それでもオーガは倒れない。再生能力も異常だ。
大ダメージを幾つも喰らっていながらオーガはオレに向かってくるのだ。戦いやすい反応で助かるんだが怖いことに変わりはない。
魔物の股間をすり抜けながら両脚に剣を叩き付けた。MPが一気に回復していく。
【粒子加速】によって強化された剣はあっさりとオーガの肉を裂いていくのだが、再生するスピードも早い。
雷撃の槍を【誘導】で手元に2本戻すと更に増殖させていく。オーガから奪ったMPをもつぎ込んで威力を上げていく。
新たな雷精がラクエルの掌の上で踊っているのが見えていた。雷精ライオットもまた槍のように魔物の肩口を切り裂くとそのまま体内へと侵入していく。
雷撃の槍は追加で更に8本、全身に撃ち込んでやる。頭にも2本貫通しているのだが魔物の動きは鈍る様子もない。
どこまでタフなんだこいつ。
サビーネが開けた大穴は塞がれかかっている。
最初に吹き飛んだ拳も再生を終えているようだ。
だが動きそのものは鈍ってきていた。再生速度も緩やかになりつつある。
オーガが後ろにいるオレに視線を向けようと振り返ったその時。
再び集中攻撃を浴びせていく。
オレは右脚の脛に、カティアは左脚の脛に、次々と剣を撃ち込んだ。
オーガの視線はオレを捉えようと周囲を睨み回す。内側からの雷撃を喰らって片目が再び破裂した。
遂にオーガは立っていられなくなり地面に両手をつく。右手首にラクエルが剣を撃ち込み出した。
左手首にはサーシャが取り付いて小刻みにダメージを積み重ねていく。
雷撃の槍の貫いている周辺も徐々に黒く焼けただれてきた。ダメージが再生速度を確実に上回り始めていた。
サビーネが突撃槍を構えているのが見えていた。投げつけた槍をもう回収していたのか。
助走で勢いをつけて突進してくる。その勢いのままオーガの頭に突撃した。
頭が半ば以上吹き飛んで胴体の半ばまでをも抉っていった。
オーガの胸元から魔水晶を抉り取って、ようやく再生が止んだのが確認できた。
雷撃で散々焼いた肉の匂いが周囲に充満している。
音精フォーンがオレの肩から消えていき世界に音が戻ってきていた。
ようやく五感で倒した感触を味わっていた。酸鼻をきわめる光景ではあるが、達成感は大きい。
倒した魔物の中では間違いなくこれまでで最強の相手だった。
連携も良かった。サーシャ達の表情も明るい。
だが反省点もある。
雷撃系を選択したのは良かったんだろうか。麻痺する様子がなかったから今ひとつ有効だったように感じない。
冷却系で動きを鈍らせる方法はなかっただろうか?
火炎系でダメージ優先させた方が良かったんじゃ?
死体から何も利用できないのも不満点としてはある。皮の一部を持ち帰って防具にでも加工できれば、と思っていたがまともな部位がない。
ドロップアイテムもない。倒したら倒したで急にセコくなるのもゲーマーの性だ。
今日も当面は生き残れた。次があるならもっと上手に戦えることだろう。
それにしてもサビーネの突撃の威力は大したものだ。
前作でキロンの奴にもっとやらせておくべきだったか。追い討ちに便利だろ、槍突撃って。
【転移跳躍】で次の魔法陣へ向かう。
今度はさっきよりも楽だろう。魔法陣を構成する石版に埋め込まれているのは魔水晶だ。
石版の数は3つ。ここで召喚される魔物で確認しているのはゴブリンだけだ。
さっさとガーディアンにお出ましして頂きたい。
だが出現した魔物はさっきのマッドオーガよりも大きかった。
ウッドだ。但し特大である。
(焼いちゃうー?)
(そうだな)
ラクエルが念話で話しかけてくるのに合いの手で答えてしまった。
ウッドの中心部に火の手が上がる。一気に炎がウッドの全身を包むように延焼していった。
だがその火も長く続かない。燻ぶるように鎮火していく。
(ちょっと燃え難いよー?)
そうだな。何か見落としているような。
【知覚強化】で強化された感覚が異常を察知していた。
僅かな頭痛に嘔吐感だ。
これは。
一酸化炭素中毒。
不完全燃焼が起きているのではないのか。
(全員、距離をとって離れろ!!ラクエル、あの火は消せるか?)
(できるよ!)
坑道のゆるやかな登り坂を一気に逃げた。ウッドはゆっくりとだがこちらに向かってくる。
広めの坑道に出たら少し呼吸が楽になった気がした。
失敗した。
盛大に燃やしすぎるのも考えものだ。広いとはいえ坑道なのだ、空気が限られている閉鎖空間なのを忘れていたとか迂闊すぎる。
(時間はかかるだろうが刻んでいくぞ)
それだけ指示するとオレも刀を抜いてウッドに近付く。
空隙だらけで容積が膨らんだウッド相手に枝を削るのは面倒としか言いようがないのであった。
小枝を切り払うだけの簡単なお仕事でした。
但し単純作業を長時間、伸びてくる枝に絡めとられないよう注意を払いながらというのは精神的苦痛にしかならない。
魔法陣を設置した奴は余程嫌がらせが好きなのだろう。
当然ウッドは倒したのだが、回収できたのは魔水晶どころか魔晶石に留まった。
宿に帰ったら自己批判ものだ。
まだ魔法陣は3つあるのだ。この落ち込んだ気分を浮揚する機会は残っている。
次の魔法陣へと【転移跳躍】で跳ぶ。
魔法陣は壁に嵌め込まれていた4つの石版で形成されていた。【魔力検知】で見ると石版に埋め込まれているのは魔水晶だろう。
さっきのような例もあるので油断はできない。
4つの石版をサーシャ達とタイミングを合わせて一気に剥ぎ取った。
今度現れた魔物は比較的小さかった。
・・・カーバンクルじゃないのか?こいつは。
リスのような外見に額に真紅の宝石、確かにカーバンクルの特徴を備えているがサイズは明らかに違う。
カーバンクルとしては大きいのだ。
亜種か変異種なんだろうか。
それにこいつがカーバンクル系の魔物だとするならば問題がある。オレ達の装備は既に魔法付与されたものが多すぎる。
(魔法は使うなよ!)
両足脛に差し込んであった苦無を1本づつ、サーシャとサビーネに渡す。
タンンガロイメイスを【アイテムボックス】から取り出すとカティアに渡して、鉈も取り出すとラクエルに渡しておく。
オレは刀を抜き放ってカーバンクルもどきに相対した。
こいつの動きは速い筈だ。オレ達で果たして追従できるのかどうか。
その答えはすぐに出るだろう。
魔物の体が全て召喚し終えたその瞬間。
オレの目の前から消えていた。