ゲーム世界に入ってみよう
《カイザード・オンライン2》は中学高校を通じてやり込んだものだ。
いや、やり過ぎた。
黒歴史的な意味で。
仕様書の概要を斜め読みしていく。前作を踏襲しているというのがコンセプトの一つならば、細かく見る必要もないだろう。全文チェックは支援AIに丸投げした。
プレイヤー数はピーク時の半分以下にまで減っているそうだが、今もなお運営されている。
そういえばID放置してたっけ。
かつてプレイしてたIDとパスワードを思い出して確認してみると・・・生きてるじゃん。
課金どうなってる、と思っていたら自動課金継続になってる。
・・・おバカさんなオレ。
前作でのオレのキャラは成長し尽くしてしまっている。
カウンターストップ、といつしか呼ばれていた。
オレは当時11人いたカウンター・ストップの1人だった。
・・・このキャラのまま新ゲーム適用とかダメだろ。
こういうゲームの楽しみは成長させて強くなっていく達成感が伴わないと。
まあ開発屋もそこまで愚鈍でもあるまい。どうせアルファ・テストなのだ。
不具合はあって当然と思っていればいい。
仕事でも使っているナノポッドに入るといつもの手続きを支援AIが進めていく・・・
で、今日の支援は誰だろう?
《本日の支援AI担当はC-1とD-2、です。》
やや暗めの音声でC-1が答える。
《カイザード・オンライン3α版インストーラーを精査します。暫くお待ちを》
脱力感のある音声はD-2が報告する。
《精査終了。問題は検出されませんでした》
《精査終了。問題は検出されませんでした》
C-1とD-2がハモった。
《0-1ホームサーバーとのリンク継続使用をマスター権限で保持します》
《0-2ホームサーバーを自宅管理業務の使用領域に設定変更します》
《ナノポッド管理業務をB-1とA-2に割り振ります》
《PDCA精査ルーチンをA-1、C-2、D-1、B-2に割り振ります》
C-1とD-2の音声が次々に脳内で反響する。
ナノマシン導入過程は1分以内で終了する。
この速さは驚異的だろう。
ただ、オレに適合させている有機コンピュータは性能的に大したことはない。
この8基の有機コンピューターは7年近くの時間をかけて鍛えてきた兵なのだ。
同調がスムースに進んでいくようになっている。
《D-1、シンクロ確認。》
《B-2、シンクロ確認。》
《A-1、シンクロ確認。》
《C-2、シンクロ確認。》
《B-1、シンクロ確認。》
《A-2、シンクロ確認。》
お留守番よろ。と脳内でコメントを残し、仮想ウィンドウのインストーラーを起動する。
新規作成とカイザード・オンライン2データの引継ぎの選択画面が出る。
引継ぎを選択し先に進む。
プレイを開始しますか?《はい》《いいえ》
何か抜けてるような気がするんだが・・・
まあプレイしていけばなんとかなるだろ。
仮想ウィンドウの《はい》を選択して先に進もう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
確かにここでミスをしていたのだ。
有機コンピュータだって全てをカバーできる万能なものではない。
後の祭りとはこのことだ。