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装備充実

 ショートソード1対が入ってた箱にはオレが使っていた装備と付与魔術で作ったアイテムが満載だ。

 自分のものでありながら用途や使い方を忘れているものが随分とある。

 だがさすがに使い倒しているものは忘れようがない。


 まずは防具だ。

 竜皮のジャケットに竜革の鎧兜の一揃いを取り出した。

 見慣れた奴だ。

 カウンターストップのメンバーで狩ったドラゴンは何匹もいたが、最上位種は2匹だけだ。

 その2匹の死体は様々なマジックアイテムに加工され、メンバー全員で使われていった。

 この防具もそんな由来のものの1つだ。


 早速着替えてみる。

 この装備はサイズも自動で調整してくれるから面倒がない。違和感なく装備できる。

 体を適当に動かしてみても問題なさそうだ。

 軽量化の効果がある魔法もかかっているので実に軽快だ。


 ショートソード1対は両腰に佩刀する。

 この1対の剣は鎧兜と連動する防御機能が魔法式として組んである。

 軽量化も魔法で組んであるから装備してても苦にならない。

 こうなると今使っている日本刀の扱いをどうするかが悩ましくなる。

 ショートソードは抜かずとも魔法戦闘能力にボーナスが効くからメインは日本刀でもいい。

 使い勝手はどちらも捨て難い。

 当面は持ち歩いて実際に使ってみてからでいいだろう。結論は先送りだ。


 目の前には前作で一時期使っていたショーテルもある。

 長柄と組み合わせると死神の鎌にもなる奴だ。

 あのいけ好かない死霊魔術師に作ってやったが、周りが怖がるから使ってない、という理由で里帰りした一振りだ。

 前作の体格なら問題ないだろうが、今の体格では取り回しが面倒だ。


 ショーテルを使う前に持ってたクレイモアはどうか。

 刃部分にオリハルコン、刀身にミスリル銀と鍛鋼のハイブリッド魔法剣だ。

 破壊力抜群の一振りなのだが、今の体格だと背負うにしては大きすぎる。

 探索には向かないのは明白だ。


 サーシャやラクエルでも使えそうな得物をいくつか選んで机の上に並べておき、他の箱も見て回る。


 真っ先に目に付くのは実に煌びやかなフルプレートアーマーだ。

 あのエルフが身に着けていた奴だ。

 大剣もある。両手剣のグレートソードが一振り。

 全部オリハルコン製の装備だ。殲滅戦闘に最も威力を発揮する奴なのだが、いかにも目立つ。

 「ラクエル、使ってみるか?」

 「えー?」

 まあそうだよな。

 この防具と剣の一揃いは、魔法能力そのものを剣撃能力に上乗せすることができる。

 オレが精神魔法で【同調】して魔力を上乗せしたら、一撃で山の地形を変えたこともある傑物だ。

 使いこなせれば大きい戦力なのだが。

 目立つしラクエルに使いこなせるかも自信がない。保留しておく。


 同じ箱に竜皮のジャケットに竜革の鎧兜が一揃いあった。

 あのエルフがフルプレートアーマーの前に使ってた奴だ。

 オレが今着ているのと同じ製作ロットのものである。

 「こっちはどう?」

 「んーと、今着てるのも愛着あるんだけどなー」

 「・・・精霊を住まわせている、という事かな?」

 ニンマリと笑われた。

 それならそれで手段があるだろう。

 この箱にあのエルフが使っていた装備があるなら・・・やはりあった。


 火精のオーブ、水精のオーブ、地精のオーブ、風精のオーブ、木精のオーブ・・・

 精霊系のオーブを連ねた首飾りだ。こいつには名前があった筈だが失念した。オレが付与魔法で作ったマジックアイテムじゃないし。

 外見は数珠のようにも見える。

 「こいつが使える筈だ。鎧は着替えておけ」

 あまり気乗りしない様子で着替えたラクエルに首飾りを渡す。

 「これを身に着けておけ。自動的に精霊を移せる筈だ」

 「・・・もうこれに精霊がいるみたいだけど?」

 「問題ない」

 着替えたラクエルが精霊を召喚していく。


 火精サラマンダーが7匹。

 地精ノームが2匹。

 風精シルフが5匹。

 木精ドライアドが4匹。

 闇精シェイドが15匹。

 光精ウィル・オ・ウィスプが4匹。

 雷精ライオットが2匹。

 音精フォーンが1匹。

 睡精サンドマンが2匹。

 雪精ジャック・オ・フロストが4匹。


 多すぎだろ。

 どんだけの数の精霊を支配してたんだか。支配している精霊の種類も多い。

 特に闇と恐怖の精霊シェイドは多い。

 よく喧嘩してなかったな。


 それで終わりじゃなかった。レイピアからデカいのが1匹出てくる。

 カーシーだ。

 犬の体をした闇の中位精霊の筈だが。

 こんな奴までいたんか。


 「・・・うん、全部素直に移動してくれたよー」

 いや、支配してる精霊の数が尋常じゃないぞ。

 ツッコミ入れていいんだろうか。

 「・・・そうか」

 「前からいた子達はいいのかな?」

 「まあ普段からよく言い聞かせておけ。なんなら精霊界に戻してもいい」

 「うん、そうだねー」

 相変わらずかっるいな。


 そういえばラクエルが支配していた精霊に水精ウンディーネがいなかった。

 「水の精霊は苦手か?」

 「昔は地精のほうがもっと苦手だったんだけどねー」

 「転向して変わったのか」

 「そう。あ、水の精霊魔法はちゃんと使えるよ!ちょっと面倒だけど」

 そうか。苦手なのを知っていれば問題あるまい。


 あとラクエルに使わせたいものは弓矢か。

 「弓は使えるか?」

 「昔は好きだったけどねー」

 好き嫌いの問題じゃねえ。

 「弩弓なんかはどうだ?」

 「あれは優雅じゃないしー」

 美的センスで語るのかよ。


 目に付けたのはあのエルフが大剣をメインで使う前に使ってた弓矢だ。

 トネリコ製の弓である。

 矢筒もあった。この矢筒を作ったのはオレだ。

 【アイテムボックス】と一体化したタイプで無限とも思える収納力を持っている。

 束ねた矢も3束ほどもある。矢尻はミスリル銀でコートした特製のものの筈だ。

 「こいつなんだが」

 ラクエルに弓を渡してやる。

 弓を引いて具合を試し始めた。

 他に使えそうなレイピアにロングソードも取り出して机の上に置く。


 次はサーシャだ。

 これらの箱にかつてのカウンターストップ達の装備品があるのなら、まだ竜皮のジャケットと竜革の鎧兜があるだろう。

 ザッと見て回るとやはりあった。

 一緒に入れてある装備にも見覚えがある。

 豹人族の魔法戦士のものだ。同じ箱に原色で鮮やかに彩られた槍がある。


 「サーシャ、このジャケットに鎧兜だ。着替えてみろ」

 「ブーツもですか?」

 「ああ。完全に【獣化】しても大丈夫だ」

 「そうなんですか?」

 首を傾げる。

 うん、機会があったら【獣化】してもらって確かめたほうがいいな。


 サーシャの場合、オレよりも体格が小さいから武器の選択が難しい。

 特長である機動力を活かしたものがいいんだが。

 ああ、あれがいいか。

 あの剣士に作ってやったサブウェポンだ。

 オレのショートソード1対と同じ使い方ができる。

 探してみたらやはりあった。

 今使わせているダガーよりも更に小振りになる。但し刃は肉厚である。

 これも2本で1対のものだ。

 「サーシャ、今使ってるダガーと盾は外してこれを使え」

 「これをですか?」

 「うむ。使い方は後で教える」

 サーシャもラクエルも普段から使える剣があったほうがいい。


 他の箱からもいくつか見覚えのある武器があるから見繕っていく。

 レイピア3本、ショートソード2本、ロングソード3本、サーベル2本に絞っていく。

 「2人とも、この中から1本選んでくれ」

 「はーい」

 サーシャがなんか戸惑っている。

 「長すぎませんか?」

 「背負ったら大丈夫だろう」

 「ああ、そうですね」

 2人とも真剣に選び始めた。

 ラクエルはレイピアに食いついている。

 サーシャはショートソード中心のようだ。


 2人が選んでいる間にオレも箱を一通り見て周り、使えそうなアイテムを選んでいく。


 まずオレの持ち物からタンガロイメイス。

 運営が用意したマジックアイテム・ブレーカー3つのうちの1つ。

 魔法こそかかってないが、魔法結界を全て無効化する武器なのだ。

 タンガロイ鋼はダイアモンドに次ぐ硬度を持つ炭化タングステンとコバルトの焼結合金であり、この世界では明らかなオーパーツだ。

 オリハルコン製のマジックアイテムですらも叩き壊す事が可能だ。

 重たいのが難点だが、【アイテムボックス】に入れて持ち運べば問題ないだろう。


 あの厭味な魔術師の男の持ち物から指輪をいくつか。

 彼が使っていた杖は非常に魅力的なのだが、高度な魔法が使えるスペックがないと無意味なのでスルーだ。

 鑑定の鏡と遠見の水晶球、魂の香炉といった所を選んでいく。


 魔水晶や魔結晶もいくつかある。

 上位の体力回復薬の青水晶、青結晶。

 上位のMP回復薬の黄水晶、黄結晶。

 上位の毒消し薬の白水晶、白結晶。

 攻撃力上昇の効果がある赤水晶、赤結晶。

 このあたりの上位アイテムは錬金術の練成素材としての利用価値が高い。

 持ち歩くのは勿体無い。


 錬金術の素材は他にも色々とあるが、すぐに練成できる組み合わせが思いつかない。

 練成陣を形成するための道具はほぼ揃ってるんだが。

 付与魔術用途の素材もあるが、今のオレの実力では大したものが作れないだろう。

 まとめてスルーで。


 「ご主人様、選びました」

 サーシャは得物を決めたようだ。ショートソードか。

 「よし、背中を向けて。鞘を付けてやる」

 肩帯にベルトを装着して固定する。

 「抜けるか試してみて」

 「あ、はい」

 両手を使って抜いて両手で構える。柄がやや長いから両手で持っていても違和感がない。

 「軽すぎないか?」

 「あ、はい。でも長い剣だと抜けるかどうか心配で」

 ショートソードは軽量化の魔法がかかっていて片手剣でもサーシャは十分使えるだろう。

 だが背中に装備したショートソードを片手で肩口から抜くには長さがネックだ。

 片手で抜かせてみたがうまく行かない。

 盾はあきらめるか。防御面はカバーできるだろうし。


 「ねえ、ご主人様ぁ~これって似合ってる?」

 レイピアを物色してた筈がロングソード持ってるじゃねえか。

 まあ軽量化の魔法もかかってるし持ち運びに不便ってこともないだろうが。

 「うむ、いいんじゃないか?」

 「サーシャちゃんばっか贔屓しちゃってるー」

 なにをワザとらしく拗ねた振りするんだ。困った奴め。

 もう笑っちゃってるし。

 だがいい選択だ。そのロングソードにはMP吸収も付与されている。


 2人とも当面はこれでいいだろう。

 選んだアイテムを【アイテムボックス】に放り込み、外した装備は部屋の箱に入れておく。

 「よし、じゃあ行くか」

 部屋を出ようとするサーシャだが扉は開かない。

 「オレがやろう」

 オレが開けるとちゃんと開いた。

 オレ限定扉なのか。

 外に出るとラクエルにも試させた。やはり動かない。

 いつこんな仕掛けを作ったのか。

 あのメッセージを残すためだけにしては大掛かりだ。


 疑問を残しながら塔を出た。

 再度、塔に挑んでいく。

 「新しい装備を試しながら進めるぞ」

 「あ、はい」

 「はいはーい」

 さあ、どうなるか。


 塔1階のウッドはサーシャが新しいダガーで屠った。

 一撃である。

 「えっと、なんか凄いです」

 うむ、まあそうだろうな。

 だが本当の凄さはこんなものではない。


 2階はいきなりグレイピーコックだ。

 ラクエルがロングソード1撃で屠った。

 ・・・

 もうちょい強い相手じゃないと力量が測れそうにない。

 「何これ、凄すぎ!」

 「重くないか?」

 「片手でも平気かな?」

 この感じなら大丈夫だろう。


 3階でマッドエイプ。

 サーシャがダガーを二刀流で相手をする。

 振り下ろされてくる棍棒を左手のダガーで両断して右手のダガーで首を刎ね飛ばす。

 「扱いやすさはどうだ?」

 「なんか手ごたえがなさ過ぎて・・・切れ味がまるで違います」

 そりゃそうだ。切れ味を増すよう魔法で強化してあるのだ。

 1対で使える便利技だってある。


 4階でブラックベア。

 サーシャのダガーを2本とも受け取って日本刀を預けるとオレが相手をすることにした。

 両手のダガーに意識を集中し僅かに魔力を送る。

 距離を詰めて熊の攻撃を見切ってかわしながら熊の腕を1本づつ落としてやる。

 体を回転させながら首と胴に連続で攻撃を当ててやる。

 熊が輪切りになった。

 明らかに刀身が届いていない所まで斬っている。

 手ごたえは殆ど感じない。

 属性魔法と精神魔法を組み合わせて高周波ブレードにしてあるのだから当然だ。


 「・・・これ、どうやって?」

 「僅かでもいい。魔力を込めると刀身が切れ味を増すようになっている」

 「魔力、ですか?でも私は・・・」

 「サーシャは【半獣化】ができているだろう?あれと感覚は似たようなものだ」

 サーシャが首を傾げる。

 か、かわええ。いやそうじゃなくて。

 「大丈夫だ。すぐに慣れる」

 「切れすぎる武器だと同士討ちが怖いです」

 「そこもどうにかなる。自分で自分を傷つけない仕掛けだってある」

 オレもそういった失敗を重ねてきている。

 自分で自分の足を切ったり味方を傷つけちゃったりしちゃうんだよな。

 敵と認識した対象にのみ効果が出るように調整してあるのだ。


 5階でブラウンベア。

 ダガー2本を平行にして熊に向ける。

 両手のダガーに意識を集中し僅かに魔力を送る。

 空気が震えていくのが分かる。

 両手に熊の体を触るような感触が伝わったその時。

 ピアノを鳴らしたような音が部屋に響いた。

 熊の胴体に大穴が開いた。

 対象物との共振を利用して破壊する魔法、俗称で【質量共鳴】だ。

 対象が実体を伴わない幽体や霊体には効果はないが、液体や固体で構成される対象であれば振動を調整して破壊できる。

 使い勝手は非常にいい筈だ。

 サーシャに遠距離で攻撃する選択肢ができるのは大きいだろう。

 「・・・今のは何ですか?」

 「このダガーに込められたもう1つの魔法だ。2本1組で使う」

 「私でも大丈夫なんですか?」

 「多少はサーシャの魔力も要る。だがこれも慣れたら問題ないだろう」

 サーシャには無理だが、使い手が精神魔法を使えるのならば更なる応用が利く。

 【重力共鳴】【重力収束】そして【質量崩壊】だ。

 このダガーがなくともこれらは使えるのだが、このダガー1対があれば魔法式構築が簡略化できる。


 「ねーご主人様、私の剣にはなんかないの?」

 「そう慌てるな」

 サーシャにダガー1対を返して日本刀を受け取る。

 「次で見せてやれるだろう」

 ラクエルのロングソードを受け取り日本刀を預けた。


 6階の相手はお馴染みになったヘルハウンドだ。

 オレの方から真っ直ぐ近づいていく。

 剣を両手に持ち目の前に捧げて祈りのポーズをとる。

 剣に意識を集中し僅かに魔力を送る。

 属性魔術の【フィールドアーマー】が発動する。

 属性魔法だけでなく物理攻撃にも効果のある魔法の壁が球状となって形成された。

 飛び掛かってきた犬は見えない壁に阻まれて地に落ちた。

 そのまま犬に向かって歩いていく。

 再び起き上がった犬が飛び掛かってくるが魔法の壁を突破できない。

 犬を部屋の壁に追い詰めると、剣で犬の頭を真っ直ぐに突いた。

 一撃で犬を絶命させた。

 「この剣は護りに使える。完全に万能とは言い切れないがかなり効果的だろう」

 「・・・他の魔法も使えるの?」

 「もちろんだ。こちら側からの攻撃は剣であれ魔法であれ自由自在だ。護る範囲と時間は込める魔力による」

 「魔力を使いすぎちゃったりしないかなー」

 「その時はこの剣で魔物を斬るといい。魔物の魔力を吸い上げる効果もある」

 「へー」

 「但しアンデッド相手には使うな。効果がない」

 「うん。分かった」

 本当に分かってるかどうかは怪しいものだ。

 まあ使っていくうちに慣れてくれるだろう。


 ラクエルにロングソードを返して日本刀を受け取る。

 「ラクエル、機会があれば次の相手に弓矢を使ってみろ」

 「はーい」

 「サーシャ・・・は好きにしてよし!」

 「あ、はい」

 放流しました。

 オレも久しぶりにショートソード2刀流のリハビリをやっておくとしよう。


 7階の相手はバビルザク。

 2本のショートソードに意識を集中し魔力を送る。

 精神魔法で右の剣に沿うように突撃槍の形状をイメージする。使う魔法は【ウィンド】だ。

 左の剣にも同じ魔法が形成されていく。

 右に、左にとその数が増えていった。

 全部で12本分の魔法が構築されると一斉に魔物に向けて放つ。

 12本の魔槍が殺到していく。

 バビルザクに全てが突き刺さり、風の乱刃を解き放った。

 細切れになって魔物が四散した。

 「・・・矢を射る暇がなかったよー」

 「・・・ご主人様、凄すぎます」

 うん、リハビリにしてはいい感じだ。

 魔法を1つ構築することで、同じ魔法をいくつもコピーして構築させていく。

 魔力源と魔法式を剣と鎧兜に分散して発動させているのだ。

 オリハルコンはその内部に莫大な魔力を含む。

 そこに魔結晶を加えて魔力が循環する魔法式を組んである。

 元々、精神魔法の欠点である魔力の消費効率をカバーする目的で作ったものだ。

 鞘に収まった状態ですら魔法発動にMPボーナスを与える効果もある。


 8階の相手はオーガだ。

 ・・・

 しまった。飛ばしすぎたか。

 調子に乗りすぎた。

 【身体強化】【代謝強化】を念じる。

 精神魔法で右の剣の周りを回るようにリングの形状をイメージする。使う魔法は【ストーン】。

 効果を拡大して特大のリングを4つ構築していく。

 ダッシュしてオーガとの距離を詰めていき、リング2つを放つ。

 オーガの注意が逸れた所でさらに2つを放つ。

 頭と足を狙ったリングはアッサリと受け止められた。さすがに強い。

 残りのリング2つがオーガの頭上に到達すると、1つのリングに再構築された。

 そのまま下へと降りていきオーガの両手と胴体を締め上げた。

 オーガが怒りの声を上げる。

 まだ足が自由だ。

 受け止められていた2つのリングを1つのリングに再構築すると、今度は両足を拘束する。


 オーガの簀巻きが出来上がった。


 身動きの取れなくなったオーガの首元をショートソードで突いて、咆哮できなくしてやる。

 さすがにオレもMPを大幅に削ってしまったようだ。軽い酩酊感が自覚できた。

 精神魔法で【収束】を念じる。ショートソードに赤い紋様の魔法式が浮かび上がる。

 この状態だと体力とMPを吸収する事ができる。

 即席の吸血剣と吸精剣の出来上がりだ。


 「よし。今のうちに切り刻んでいくぞ」

 「あ、はい」

 「えー」

 すまないな、ラクエル。せっかく弓矢を構えていたのに。

 だが状況程には余裕がある訳でもないのだ。

 構築されたリングが有効なうちに止めを刺せないとこっちが危ない。

 オレが喉元を中心に斬撃を見舞っていく。

 うむ。

 切れ味だけなら日本刀の方が断然いいようだ。

 ラクエルもロングソードでオーガの首元を狙って撃ち下ろす。

 しばらく経過するとオーガは動かなくなった。

 結局、オーガの首を落としたのはラクエルになった。


 サーシャはどうしたのか、と見るとオーガの右足が切断されていた。

 どうやらあのダガーを高周波ブレードとして使ってみたようだ。

 「どうだ?」

 「し、信じられません。オーガをこんな簡単に倒すなんて」

 「オーガって弱い魔物じゃないんだけどなー」

 「今回は運が良かった。まあそういう事だ」

 正直、冷や汗ものだ。

 リングも魔法式が物理的な力の前に破綻寸前だったのが知覚できていた。

 「慣れてないうちから無理はいかんな。もう1度1階からやり直すぞ」

 「は、はい」

 「はいはーい」

 新たな装備になって連携も大きく様変わりするだろう。

 【接触同調】で経験則の共有をやるべき時期にきているのかもしれない。

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