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短編小説

ヒーローは安月給

作者: 旱咲

――私の旦那は、ヒーローである。

いつも私を助けてくれる、なんて喩えなんかじゃなくて、正真正銘ヒーローが職業なのである。

ヒーローは顔を隠すのが当たり前。だから旦那はいつも布製の青いヒーロー仮面を被っている。いつ何時に人々のピンチが生まれるかわからないから、四六時中仮面を被る。……故に、もう何年も、旦那の顔を見たことがない。

だから、引退する、と旦那が言った時、不謹慎ながらとても喜んでしまったのだ。






「そろそろヒーロー界では年寄りな年齢になっちまうからな」

「29歳って年寄りじゃないでしょ」

「ヒーローは若くてカッコ良くないと駄目だろうが」

旦那は私に詰め寄って力説している。仮面被ってるからイケメンかどうかわかんないんじゃ、と思ったけど口には出さないでおく。

「明日にでも、退職願出してくるよ」

無表情な青い仮面がこれで見納めかと思うとなんだか名残惜しく……感じるわけもなく。かと言って旦那の仕事が無くなることをあからさまに喜ぶこともできず。

「受理されたら一緒にハローワークに行こうか」

心なしか肩を落としている旦那の背中をさすりながら、ほくそ笑んだ。





――はっきり言って、私は欲求不満だったのだ。旦那の表情が見れない、キスも出来ない、いつも向かい合うのは無表情な仮面。そんな生活が長年続くと、いい加減私も我慢がならなくて、何度寝ている旦那の寝首をかこう……いや、仮面を剥がそうかと思ったか。

そんなときに、旦那の引退発言。これで心ゆくまで堪能できる、と内心小躍りせんばかりにワクワクしていた。

だから。

「昇進したんだ!」

退職願を出してくると言った次の日、喜々としながら家に帰ってきた旦那の顔には……赤い仮面が。

「給料もアップするし、花形だし、もう少しヒーローやろうと思う!」

……私の欲求不満は、まだまだ解消されない。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

続きを気まぐれで書くかもしれません。

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