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12星座別恋愛小説

12星座別恋愛小説 ~みずがめ座~

作者: 黒やま

これはあくまで私の主観で書いたみずがめ座像ですので

この小説を読んで気を悪くしたみずがめ座の方がおられましたらご容赦下さい。


♒1月20日~2月18日生まれ Aquarius♒


*論理的・合理的

*クール・冷静

*独立心旺盛

*頭の回転が速い

*自由な思考と発想の持ち主



目が覚めると見知らぬ天井が目に入った。


「おはよう。」


横からまたもや見知らぬ男の声がした。


「おはよ、ここってあなたの部屋?」


「覚えてないの?」


男は困惑した表情だがどこか笑っていて私の頬をそっと撫でる。


「えぇ、全く。昨日はちょっとハメを外し過ぎたみたい。」


亀山(かめやま) 瑞希(みずき)はそんな男の手を軽く振りほどきベッドから身を起こす。


瑞希は男がいるのもお構いなしで真っ裸で伸びをする。


床に散乱している服の中から携帯電話を探しあて今の時刻を確認する。


「出なくちゃ。ここどこらへん?間に合うかしら。」


「もう行くの?早くない?」


「今日は朝早くからラットの観察の担当任されてるから。」


なんて言ってもこの男には分からないだろう。


まぁそんなことどうでもいいだろう、もう会わないのだから。


手早く着替える瑞希の後ろから男は抱きつき耳元で囁く。


「ねぇ、今度いつ会う?」


「会うって、これっきりよ。」


男に阻まれながらもカーディガンのボタンを留める手を動かし続けしれっと男に告げた。


「どうして。彼氏でもいるの?」


「そうじゃないわ。ただあなたと私は合わないってこと。

 あなたは私を愉しませてくれると思ったのだけれど

 どうやら私の見込み違いだったみたい。」


身だしなみもそこそこに呆然としている男にそれじゃと別れの挨拶を済ませ外に出る。


もう瑞希の頭の中には男のことはなく観察当番に遅れず行くことしかなかった。




朝の冬空はまだ薄暗く街を行き交う人々はいつも以上に足早に会社へ学校へと向かっていた。


瑞希が大学院へ着いたのは想定していた時間よりもだいぶ早かった。


実験室に入るとねっとりとした香水の匂いで満ちていた。


手で扇ぎながら匂いの発生元へ近づいていく。


「お疲れ様です。交代の時間です。」


「あぁ、亀山さん。おはよう。」


夜中ずっとラットの観察をしていた院生はこちらを振り返ると瑞希の姿を


下から上へと眺めにたりと笑う。


「昨日と同じ格好じゃない。もしかして・・・・・」


こういう奴はどこにでも一人はいるものだ、人の詮索や噂が好きな奴。


「そうですけど。」


「あぁ~やっぱり!!まぁ亀山さん変わってるけど美人だからモテるもんね。」


いやらしい笑い方をする女は実験室に似つかわしくない赤いハイヒールに


レースのついた際どい黒いワンピースといった出で立ちで


唇には靴と同じこれまた真っ赤な口紅をさしている。


私から見ればこの女の方が奇抜なファッションと悪臭でしかない香水をつけて


変わっていると感じるのだが。


瑞希は今の女の発言を無視してさっさと白衣を纏い


「どうぞお疲れでしょうから早く帰られたらどうですか。後は私がやりますから。」


といかにも親切を装っている言葉をかけ口元にはほんのり微笑をたたえる。


本心は―――暑苦しい厚化粧がいつまでもいるとこっちは息が詰まりそう、さっさと帰れ―――だ。


「じゃあお言葉に甘えて早めに切り上げさせてもらおうかしら。」


厚化粧の女は白衣を脱ぎグッチの鞄を提げると瑞希の横を高いピンヒールを鳴らし実験室を出た。


その際瑞希の鼻を女のキツイ香水がからめとりあまりの匂いに鼻を押さえてしまった。


「うっ・・・・・・・・」


「あら?どうしたの亀山さん。」


「いえ、くしゃみが出そうになって。」


「まぁ、大変。風邪には気を付けてね。」


表面上は気遣う言葉を瑞希に投げかけるが本当はいろんな男を食いつぶしてる女が風邪でも


引けばいいのにとでも思っているのだろう、そう顔に書いてある。


厚化粧の香水臭い女がやっと退出し瑞希は棚に置いてあった消臭スプレーを


部屋中にばら撒いた。




瑞希が一番落ち着けるのは動物を見ている時だった。


小さい頃から瑞希ちゃんは変わってると周りの人にも家族にも言われきたから


そういうことにはすでに言われ慣れている。


実際客観的に見ても自分は変わっていると自負できる。


人間関係は社会を生きていくのに困らない程度に付き合いをしていて


恋人は三か月単位で替わっている。


恋人といっても大概それは向こうからアプローチされたもので


とりあえず交際を始め結局瑞希が好きになれず終わってしまうというのが常である。


ここ数か月は特定の人と交際することはなく様々な男性と一夜限りの関係が続いている。


さらに瑞希はそういうことを隠さずオープンにしているためさっきのような


意地悪な女に目を付けられたりするのだ。


たまにあることないことを吹聴されるので困りものだ、


今日のことも明日にはもう広まっていることだろう。


人はどうして他人のことを気にするのだろう、好意にしても悪意にしても。


何をやろうと自分の勝手なのに、だから人付き合いは苦手なのだ。


それに対して動物は他者のことなんて露程も考えないだろう。


瑞希がこうやって覗いていてもお構いなしに排泄中だ。


「どうして人間ってこんなにも面倒なのかしら。」


家族ならいざ知らず他人を愛するのはとても難しい。


頑張って好きになる努力はするのだがやはり無駄に終わる。


私に恋愛は無理なのかしら、最近よく思う。


それならそれでいいのかもしれない、一生動物に囲まれて生活する方が私に合っているのかも。


このようなことを考えていた日の夕方それはまさしく運命の出会いといってよいものだった。


いつもの帰り道を歩いていると道路のわきに一台の屋台が停まっていた。


紺色の暖簾にはおでんと書いてある。


こんなところで店を開いているなんて珍しいと感じた瑞希は


ちょっとした好奇心が湧いて今晩の夕餉はここでとることにした。


「いらっしゃい。」


暖簾をめくると目前に愛想のよさそうなおじさんの笑顔が出迎えた。


「とりあえず熱燗とはんぺん三つ下さい。」


ぐつぐつ煮込まれているおでんの前の席に座るとフフッと薄ら笑いが横から聞こえた。


見るとすでにできあがっている男がいた。


年齢は三十代前半くらいだろうか、無精ひげを生やし目の下にはクマができているため


そう見えるだけで実際はもう少し若いのかもしれない。


「いきなりはんぺん三つも食う奴がいるかぁ。普通大根、卵といくだろう。」


いちいち人の好みに口出す男しかもおでんの具の食べ方の順序にケチつけてきた奴は


初めてだった。


なんなんだこいつは。と、少しイラッとしたが相手は酔っ払いなので無視することにする。


「はいお待ち。熱燗とはんぺん三つね。」


おじさんがテーブルに注文した品を置き、瑞希は徳利からお猪口へ焼酎を注ぎ始めた。


瑞希からの返事がないとみると男は再び皿にあった食べかけのこんにゃくに箸を伸ばした。


「親父~、それでよぉ描け描けって言われて逆にこれは描いちゃいけねぇんじゃないかって

 僕は思うわけよぉ。」


口調は乱暴だが一人称は僕であることから普段はもう少し大人しい性格なのかと


一人冷静に分析している瑞希は四度目の熱燗おかわりを頼むところだった。


男の酔いは相変わらずひどく今度はおじさんに愚痴をこぼしていた。


聞く気はないが自然と聞こえてしまうため男の素性が明らかになってきた。


男の名前は御影(ミカゲ)で歳は29歳、若き前衛画家らしい。


瑞希も美術関連に詳しいわけではないがノブヒコ・ミカゲという個性的な作品を制作する


若い有名画家がいることを知っている。


御影という苗字も珍しいしまず間違いないだろう。


まさかこんな男が有名画家とは思ったが人は見かけによらないとはまさにこのことだと実感した。


「なぁお嬢ちゃん、あんただって僕の絵なんて見たことねぇだろ?というか名前すら知らないだろ。」


瑞希はいきなり話を振られたので多少困惑したが今度は臆することなく返答した。


「いえ、名前は以前から聞いたことがあります。作品も一度だけ拝見したことがありますよ。

 正直小学生のラクガキにしか見えませんでしたが、

 何か強いメッセージ性のようなものを感じました。」


プロの絵を小学生レベルと答える瑞希に御影は一瞬目を丸くし、


憤怒するのかと思いきやその逆だった。


「そうかそうか。初めてだ、ラクガキなんてぇ言われたのはよ。

 けどちゃんと僕の絵の中身を見てくれたのもなかなかいねぇ、あんたで三番目だ。

 きっとあんたも僕と一緒で変わり者だから分かったのかもなぁ。最初にはんぺん食うし。

 でも僕は嬉しいよ、お嬢ちゃん。」


御影は初対面の人間を変わり者呼ばわりし実にうれしそうに笑っていた、


彼のクシャッと笑った目尻の皺に瑞希は何故か愛おしさを感じた。


子供のように笑う男の大人の人を初めて見たせいかもしれない。


それか酔いがまわってきたのかも。


「お嬢ちゃんはよしてください。私もう23なんですから。」


「じゃあ名前を教えてくれよ。」


「亀山・・・瑞希です。」


下の名前も言おうかどうか迷った挙句フルネームで答えることにした。


「亀山 瑞希ね。覚えておくよ、じゃあここの勘定は僕が持とうじゃねぇか。」


「結構です。私はただ思ったことを言っただけなので。」


「いや、それが僕には嬉しかったんだぁ。だからここは僕が払う、いやぁ払わせてくれねぇか。」


「そうですか・・・」


まぁこれだけ払うと言ってるのでそうしてもらおうと述べる寸前に


瑞希はあることを思いついた。


「でしたらもう一軒付き合ってくれませんか?」


もっと一緒にいたいと感じ自分から男性を誘うなんて初めてであった。


これがもしかして恋の始まりなのかなと瑞希は初恋気分をじっくり味わった。

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