番外編③ 友達
番外編第3弾です!
今回は愛華と奈央と由美の話を書きました。
友達って大切ですよね。
「今日のお題は…『愛華と和也くんは、どこまで進んでいるのか?』で~す!」
「ちょっ…奈央!」
「まあまあ、落ち着いて」
「由美まで乗らないの!」
ある日の放課後、いつも通り奈央と由美のところに行くと今日のお題が書かれていた。というか…お題なんて決めたことなかったはず…
「由美調査員、報告を」
何故か奈央がリーダーで由美が調査員という設定になっている。
「はい! 噂の人、倉持愛華さんは…」
「噂の人ってどういうことよ!」
いつ、私は噂の人に…?
「今は由美調査員の話を聞きなさい。噂の人」
「噂の人ってやめてよ…」
「由美調査員、報告を続けて」
「はい! 倉持愛華さんは中学3年のクリスマスパーティー会場で竹中和也さんに出会いました。愛華さんは、すぐに和也さんに恋をしました。パーティー中、愛華さんの視線は和也さんに向けられていたからです」
「それは私でもわかった」
「2人とも私を観察してたの…?」
パーティーのことが正しいから何も言えない…
「パーティー終盤には和也さんの方から愛華さんへ番号の交換をお願い。突然のことにビックリした愛華さんは携帯を落としました」
「この調査報告、詳しすぎじゃない?」
「…………」
さっきから奈央も由美も私の疑問に答えてくれない。
「いろいろありましたが…無事、番号の交換に成功。パーティーは終わりました。その後は時々、連絡を取り合う程度で発展はありません。しかし、2人は偶然か運命か、高校で再開するのです!」
だんだん、由美のテンションもわからないものになってきている。今日の2人は…危険だ。
「そして、高校入学から約3ヶ月。和也さんからの告白を受け、ついに愛華さんと和也さんは、お付き合いを始めることに!」
「由美調査員、少し落ち着きなさい」
由美のテンションは今までで1番高い。何かあったのだろうか?
「も~奈央も由美も一体どうしたのよ。何かおかしいよ?」
「…………」
奈央も由美も徹底的に私の話に答えてくれない。私、何かしたっけな…?
「奈央も由美もどうしたのさ…ひどいよ」
気付いたら、私は泣いていた。奈央も由美も冗談でやってることはわかっている。でも…冗談だとしても、2人に無視されるのは私にとって辛かった。
「ちょっ…愛華!?」
私が泣くなんて予想もしていなかっただろう。奈央も由美も慌てている。
「もう無視しない?」
「う…うん。しないから。泣かないで」
「で、私は何をするの?」
これまで私の過去を暴露しているだけで、何もしていない。一体、何をやらされるのだろうか。
「お付き合いを始めてから、何か特別なことはありましたか?」
由美が何か紙とペンを持ちながら、静かな声で尋ねてくる。まるで病院の診察みたいだ。
「特には、ないけど…?」
「じゃあ、次は和也さんとキスはしましたか?」
「…はい」
言ってから、すごく恥ずかしくなった。
「何回ですか?」
「数えてないからわからないよ…」
「数えれないほどたくさんですか~」
あれ? 少し捏造された気が…
「じゃあ、和也さんと×××はしましたか?」
「由美、そこまで」
私は由美を止めた。これ以上、行くと由美が暴走してしまう気がしたからだ。
「え~」
由美は親におもちゃを買ってもらえなかった子供のように言った。
「由美調査員、そろそろ最後の質問を」
奈央が時間を見ながら、そう言った。時計の針は17時を回っていた。そろそろ和也が迎えに来る頃だ。
「そうですね。愛華さん、最後の質問です。あなたは和也さんを愛していますか?」
「へっ?」
突然の事に私は訳がわからなかった。
「愛華、どうなの?」
2人がニコニコしながら、私を見ている。はぁ~何か振り回されっぱなしだな~
「…和也のことは世界一、愛してるよ」
「えっ? 聞こえないな~」
一体、今日の2人はどこまで意地悪なんだか…
「だから、和也のことは世界一、愛してるよ!」
『ガラガラ』
「愛華?」
私は耳を疑った。1番、聞かれてはいけない人に聞かれて…私はゆっくりと振り返る。そこにはポカーンとしている和也がいた。
「うわあ、和也! 何でここにいるの!?」
「いや、何でって…愛華を迎えに来たんだよ」
「あっ…いや、その…」
私の頭の中はパニック状態。そんな私を見て、2人は大笑いしている。
「予想はしてたけど…まさか本当に和也くんが来るとは…」
「和也くんはタイミングが良いのか、悪いのか、わからないですね」
混乱しているのは私だけじゃない。和也も何が起こっているのかわからない、といった顔をしている。奈央と由美が事情を話しに和也の元へと向かう。
「そ…そっか。何かゴメン」
事情を聞いた和也が私のところに来て、謝った。
「ほんとに…奈央も由美も和也も~絶対に許さないんだから!!」
そう言って周りを見渡す。あれ? 和也しかいない…
「あ~奈央と由美なら先に帰ったよ。『この後は2人でごゆっくり』って」
「…………」
私は内心、ここから逃げ出したかった。まともに和也の顔が見れない。
「愛華…ありがとう」
「えっ?」
「さっきの言葉、嬉しかったよ」
そう言いながら、和也は窓の外を見ている。
「どういたしまして」
私は和也の横に座って、そう言った。教室に射し込む夕日が私たちを包みこんでいた。
「ただいまー」
家に帰ってきた私は自分の部屋に入った。
『お帰りなさい。愛華さん。今日は何かありましたか?』
「えーと、恋の神さんには内緒です」
『え~何でですか?』
「内緒のものは内緒です」
恋の神は何度も『教えてください』と言ったが、私は言わなかった。というより、恥ずかしくて言えない。
『じゃあ、いいです。今日の愛華さんを覗いちゃいますから』
「ええーそんなことできるんですか!?」
『はい。できますよ』
「わかりました。言いますから。何も見ないでください…」
直接、見られたくない。それなら自分から言う方がましだ。私は今日の事を恋の神に全て話した。
『そうですか。いいお友達ですね。和也さんもすごいですが…』
「ほんと恥ずかしかった…」
『でも、楽しそうで何よりです』
「まあ、そうだけど…」
『私もその場にいたかったです』
「恋の神さんは毎日が楽しくないんですか?」
『楽しくないというか…基本的には1人ですから』
「他に仕事とかは?」
『今は愛華さんと和也さんを見守ることだけです』
恋の神の声がだんだん小さくなる。姿は見えないけど、悲しそうにしているのが手に取るように伝わってくる。
「恋の神さん。昼間は無理ですけど、私で良かったら…話、いつまでも付き合いますよ」
『えっ?』
「だって、恋の神さんが寂しいって言うから…」
『愛華さん…ありがとうございます』
その日、私と恋の神は何時間も話をした。
「じゃあ、行ってきまーす」
翌日、私はいつも通りの時間に家を出て、学校へと向かう。学校に到着して、私が真っ先に向かったのは…
「奈央! 由美!」
奈央と由美はポカーンとして私を見ている。『えっ? 何?』みたいな顔。
「あ…愛華、おはよう」
「おはよー」
2人とも何事も無かったようにしている。
「奈央も由美も悪ふざけし過ぎだよ…」
「ごめんごめん。まさか和也くんがピッタリのタイミングで来るとは思わなかった」
「あの後、どうだった?」
「特に何かあった訳じゃないよ。いつも通り、2人で帰ったよ」
「そうかそうか」
そう言って、奈央は私の肩を叩く。
「奈央、由美、何かゴメンね」
「ん? どうして愛華が謝ってるの?」
「ううん。何でも無いよ。ほら、そろそろ授業始まるよ」
「あ…うん。まあ…愛華が元気になったからいいっか。ね、由美?」
「そうですね。元気になってくれてよかった」
「じゃあ、今日も頑張りますか」
自分の席についた私は奈央と由美を見た。2人はニコニコしながら、私を見ている。あの顔は絶対に何かを企んでる顔だ。
「はぁ~今日も恥ずかしいな…」
でも、何か嬉しかった。由美と奈央は、ちゃんと私のことを考えてくれている。私は改めて最高の友達に出会えて良かったと思った。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
最近、恋の神をあまり出してないな…何か、すいません。恋の神が主役の話、考えます。
まだまだ番外編を書きたいと思ってます。書いてほしい話とかあれば感想にでも書いてくれれば考えて書きます。第4弾も頑張って書きますのでよろしくお願いします!