第10話(本編・最終話) 大切なヒトと恋の神
気を失った愛華…目覚めた先で言われたことは…?
本編の最終話となります。第10話です。
ぜひ読んでください!
目が覚めると私は病院のベットの上にいた。
「あ…あれ? 何で、私は病院に…?」
由美が警察に捕まった後からの記憶が全然、思い出せない。あの後、一体どうなったのだろう?
「う~ん、和也もいないなあ…」
和也がいれば何か聞けるかもしれなかったんだけどな…そんなことを私が考えていると、
『愛華さん、大丈夫ですか?』
「あっ、恋の神さん。私は大丈夫です。でも…」
私は自分のことなど、どうでもよかった。由美にしてしまったこと、それに巻き込んで私たちをかばって奈央が刺されてしまったこと…それらを振り返りながら、私は罪悪感に支配されていた。
「恋の神さん、私は大変なことをしてしまいました。多くの人を傷つけて…私…」
涙が止まらなかった。何度、悔やんでも由美や奈央が元に戻ってくれることはない。だからこそ、余計に辛かった。
『私は、まだ短い間ですけど、愛華さんをたくさん見てきました。喜ぶ愛華さんも悲しむ愛華さんも辛そうな愛華さんも…愛華さんは、ここまで戦ってきた。いろんな経験をしたはずです。今回の事件は愛華さんが1人で悩むことなんて何も無いんじゃないですか? 私はそう思います』
「恋の神さん…」
私は、この言葉を聞いて幸せだな~と思った。最初は恋の神なんて信じられなかった。正直、迷惑だった。でも今は…
「ありがとう」
心からそう言える。
『愛華さん、まだ恋の悪魔は邪魔しに来るでしょう。でも…愛華さんと和也さんなら何でも乗り越えられる。私は確信しました』
「そんなことないですよ。恋の神さんがいてくれたからです」
『実はですね…愛華さん、落ち着いて聞いてくださいね。私は今日でいなくなります』
「えっ?」
私は、その言葉を信じたくなかった。
『愛華さん、短い間でしたけど…こんな私を信じてくれてありがとうございました。私もたくさん勉強できてよかったです』
勝手に話を進めようとする恋の神。
「ちょっと待ってよ! どうして私から離れるの!?」
『愛華さん、恋のことで悩んでいるのは愛華さんだけじゃないんですよ? 愛華さんと和也さんは強い。何があっても絶対に大丈夫』
「…………」
私は何も言えなくなった。いったん止まっていた涙が再び流れ出す。
『愛華さん、泣かないでください』
「絶対…絶対にまた会えるよね?」
『はい。必ずまた会いましょう。では、私はそろそろ行かなくてはいけないので』
「『さよなら』は言わないからね。恋の神さんも言ったらダメだよ」
『わかってます。しばしのお別れですね』
「うん…」
何があっても『さよなら』とは言いたくない。もう会えなくなる気がするから。
『愛華さん、本当にありがとうございました。また会った時は、よろしくお願いします』
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そうして恋の神は、いなくなった。私は笑顔で送ろうと思っていたのに…溢れ出す涙を止めることができなかった。
<1週間後>
恋の神がいなくなってから、ちょうど1週間。ここ数日は警察通いの生活を送っていた私は、ふと恋の神のことを思い出した。今、改めて思えば『何だったんだろう?』って思う。でも確実に言えることは…たくさん助けてもらったということ。
「愛華、おはよう」
おかげで和也との仲も順調だし。
「和也、おはよー」
私は恋の神に感謝している。
『恋の神さん、お元気ですか? 私と和也は順調です。あの事件で私は大切な友人を2人、失いました。でも…だからこそ、私は2人の分もしっかり生きていこうと思ってます。恋の神さん、短い間だったけど…私と和也の面倒を見てくれてありがとうございました。私は、またあなたに会えると信じて頑張ります。恋の神さんは私のように他の人も幸せに導いてあげてくださいね』
私は、そう心の中で恋の神にメッセージを送った。
「愛華、どうかした?」
気がつけば和也が不思議そうに私の方を見てる。
「ううん、何でもないよ」
「そっか。じゃあいいや。それよりもそろそろ行こうぜ。早くしないと並ぶことになるかもしれないぞ。あそこの水族館は混むからな~」
「じゃあ、早く行かないとね」
「手、つなごう」
「うん!」
私は改めて思った。最高の友達、最高の彼、最高の神に見守られて過ごせてる私は…本当に幸せなんだって。
読んでくださってありがとうございます!
一応、本編は完結という形になりました。でも愛華や和也というか、この作品自体が僕自身、好きなのでこれから番外編や短編も書きたいな、なんて思ってます。なので完結設定においては完結にはしません。ただ、本編は完結です。
ここまで第10話まで読んでくださったみなさんも、途中まででも読んでくださったみなさんも本当にありがとうございました!
では、今度は番外編や短編でお会いしましょう!