Round 6 お座り1発現象①(魔女=パチンカス)
――――パチンカス。
パチンコに熱中・熱狂している人間を揶揄、あるいは自身で自虐する時に使用するインターネットスラング。『パチンコ+カス』の言葉を合わせたものだ。派生語としてはスロッカスがある(日本パチンコオカルト学会より)。
大体はパチンコにのめり込んだ人間の末路とも言える。
俺も昔、従弟の兄ちゃんにパチンコへ行って、そこからハマったのである。今にして思えば、あれが全ての始まりと言っても過言ではない。まぁ従弟にせがんで連れて行ってもらったんだけど…………
『享楽ぅ、パチンコなんて打つもんじゃねぇぞ』
なんて言われた最初のパチンコで約8万円も出してしまえば、後はもう…………ハマるのは自明の理である。ちなみに従弟はその時点でかなり負けていたらしい。
『トータルで勝ってるからいいんだよ』とは彼の言葉である。
なぜか楽しそうに語っていたのは妙に記憶に残っている。俺は、あのパチンカスな従弟に憧れたんだ…………! は冗談だが。
ま、過去話は置いといて。
この場合『パチンカス』の称号はルナに使うより俺に使った方が正しいけど…………その片鱗をこの魔女から感じているのだ。屈託のない笑みで金を無心する姿には、才能が見えてならない。
「お前なぁ、居候の上に金貸せって……」
「大事な調査の必要経費だよぉ⁉︎ ねぇ〜ねぇ〜!」
いや(パート2)、オスイチ現象が正しいならこいつに金を貸すのはアリか……?
「よかろう! とりあえず1万貸してやる」
「おぉ、私が持ってたのより0が1個多い」
「ちゃんと返せよ」
頼むぜオスイチ現象…………!
台左の投入口に2人で1万円を投入する。貸玉ボタンを押せば銀玉が流れてくるわけで。あとは台下にあるハンドルをちょうどいい具合に捻れば玉が出る。準備は完了だ。
仮にどちらかにオスイチが起きても単なる偶然だ。
だがそれが2人同時ともなれば話は別。
相変わらず「らすべがす」の始動口までの道のりは渋い…………が、最初の10玉くらいで1玉が穴へ吸い込まれた。
直後、台の液晶には金色の演出が映る。
「おぉ~綺麗だぁ~」
「…………マジ?」
2人同時である。一発目から画面の役物が慌ただしく仕事をしている。こんなことはなかなかない。ひしひしと肌で感じる魔力は、順調にリーチを発展させていく。
「うぉ~いいぞ、やれやれぇ!」
「これマジで当たるのか…………」
久々の『ソレ』の到来に、思わず胸は高鳴る。金色のデカい台詞を叫んで…………大当たり!
「あは、当たったね享楽ぅ!」
「お、お、お…………」
0.3%、1発目で引けるなんて早々ない。だが目の前に揃う『444』という3つの数字が事実を教えてくれる。
「オスイチだぁっ~!」
見事に1/319の確率を1回で通してしまった。人生で数えるほどのオスイチと、今日再び相まみえた。それも、隣の異世界人と一緒に。
「おぉ~確かに魔力を感じるよぉ!」
「んなこたぁ後だ! 何とか確変引け!」
「え、え? どゆこと?」
「パチンコの大当たりにも2種類あってだな、奇数は確変、偶数は通常当たりと分かてる。確変ってのは1/319より確率が上がって当たりやすくなってハッピーな状態、通常は台によって違うが玉もらって終わりか、規定回数抽選できるチャンスがもらえんだ! 今の俺達は通常当たり、このままだと規定分回転させて何もなかったら400発ちょいもらってジ・エンドだ!」
オスイチといえど、それでハッピーエンドではない。ハッピーエンドにすべく、俺達はさらに引かなければならないのだッ!