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現代パチンコ奇譚 パチ屋の謎は、ニートの俺と異世界の魔女が解き明かす  作者: ムタムッタ
CASE.2 世界は回る、パチンコは回る、しかし当たりは回らない

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Round 29 1万円で1回転! アンチ魔法『天往邁進』


「じゃあよろしくね享楽ぅ」


 扉に張られていた結界的なものを突破して、ひとり隣にあるコンビニのATMへ向かった。


 空には相変わらず異世界が見える。数分前よりも少し大きく見えるのは気のせいか……?

 

「いや、近づいてんなアレ」


 パチ屋が飛ぶのか、異世界がこちらに衝突するのか、はたして。


 慣れた動きでATMを起動し、残金をおろす。ニートの俺に残された最後の砦、18万円である。なけなしとはまさにこのこと。


「パチ屋の命運が18万円か…………」


 なんとも馬鹿げた話……だが事実でもある。さっさと戻ろう。気付にコーヒーを3本買って、らすべがすへとんぼ返り。


 例の嵐往邁進ヘル・ロードとやらを一体どう攻略するのやら。


「遅いよ享楽ぅ!」

「一刻の猶予もないのだぞ」

「人をパシっといてなんて奴らだ……ほれ、コーヒー」


 魔女ルナ魔王ミィにそれぞれコーヒーと6万ずつ手渡す。一瞬、ほんの一瞬明らかにお年玉をもらったガキのような顔をしたのは見なかったことにしておこう。


「6万円で12000回よ? それでどうするつもり? 悪あがきはほどほどにしてね」

「ふっふっふ、追放された時の私と思わないでよぉ! 謎を解いたこの魔力を使って、嵐往邁進ヘル・ロードをひっくり返すっ!」


 コーヒー一気飲み、そして息つく暇もなくまずはミィが両手を振るう。


「嵐など我が魔法の前には無力──いや、我らが前に、か!」

「そうとも! 私たちパチンコパーティーに敵はなし! そぉーれぇっ」


 ルナの手にあった光の雫が砕かれる。そして2人の周りを渦巻き、俺たちの打っていたパチンコ台へ光が放たれる。


 魔女と魔王による合体魔法……多分。


嵐往邁進ヘル・ロードに対する私の、私たちの回答さ。名付けて、天往邁進ヘヴンズ・ロード!」

「なんも変わってねぇぞ」

「お楽しみはこれからこれから〜。ささ、早く打って当てよ? 時間はないよ〜」

「はっ、何するのかと思ったら……結局打つだけ?」


 予想内だったのか、リリカは右打ち中にも関わらず席を立った。


「おいまだ途中だぞ」

「もういいわ〜、あんまり面白くないもの」

「可哀想に。パチンコで脳が焼ける体験をしてないんだ…………」

「ほら、リリカって真面目だから」

「哀れな奴よ」

「ぬぁんでギャルブルにのめり込んでるあんたらにそこまで言われないといけないのよっ⁉︎」

「ギャンブルNO! 遊技です」

「どっちでもいいわよ! あたしは空の故郷でも見て待ってるわ。キョーラク、現実が大事ならそのおバカ2人は切ったほうがいわよ」


 謎の親切を見せて、リリカは出入り口へ消えて行った。ここまでの騒動があってなお、島の中の客は動くことはなく無心で打っていた。

 

「さっさと目を覚まさせたいし、なけなしの金を無くすわけにもいかない…………やるぞお前ら!」

「おぉ〜!」


 全員が元の席に着き、1万円を投入。流れるように貸玉ボタンをプッシュ。


 そして、異変はすぐ気づいた。

 本来1万円を投入すると、残金が『100』と表示され、ワンプッシュで『95』となる……はずだった。


 0なのだ。

 さらに、上皿にやってきたのは銀玉1発。


「あれれ〜おかしいぞぉ? ルナちゃ〜ん? ミィちゃ〜ん? 玉は1発だしお金消えたんだけど〜?」

「ふむ、どうやら天往邁進ヘヴンズ・ロードは成功のようだなルナ」

「うん! 享楽、それで問題ないよ」


 問題しかないが?


「だってこれはリリカへのアンチ魔法。すなわち! 超高回転超低確率から一転! 超低回転超高確率だからね!」

「安心しろ、嵐往邁進の風は生きている。1万円分の玉を、時と共に凝縮したと考えれば良い」

「…………つまり?」

「1/31900は、1/3.19になってるよ」

「え…………で、1万円で何回転だって?」

「1回転!」



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