Round 6 その女、勇者につき(☆☆☆)
「いや、結構です」
「どうして? パチンコで勝つならたくさん回せることは良いことでしょ?」
ああいえばこう言う。めんどくさいやつだ。そりゃ打ち手にはいいことなんだけども。
「あたしはリリカ・サミー。あなたは?」
「主義享楽」
「キョーラク? 変わった名前ね」
うるへぇ、キリン柄着てそうな名前しやがって。従兄弟は刹那だぞ。
胸中のツッコミが聞こえないリリカは、さっぱりとした顔でリリカは口角を上げる。
「まぁいいわ。誘いを断るなら────」
瞬間。
ローブの下から現れた刃に反応が遅れた。「え」と呟く暇もなく、切先は眉間へ迫る。
────マジか。
パチンコ打ってて、不思議に首突っ込んだら死ぬのか俺。つーかやばいなこいつ。うわっ、なんか思考もゆっくりだし全然剣が刺さらないんだけどなんなんだこれ? 走馬灯も流れねぇし噂なんてあてになんねぇな!
…………かに、思えた。
ぶにぃっ、と剣先はやわらかく弾かれて、リリカは仰け反った。
「あら? 死んでない?」
「ちょっと⁉︎ 勇者の剣なのだけど⁉︎」
なんかよくわからんが敗北展開は回避したらしい。だがピンチ継続ゥッ。
「って、勇者?」
「そうよ! 魔王を倒すために選ばれた勇者! 帝国一の魔剣士とはあたしのことよ!」
「そっすか」
興味ねぇ〜…………!
祭りのおもちゃみてぇな剣を構えられてもコントにしか見えない。だが厄介なのは確かだ。
「剣が使えないなら魔法を使うまでよ、喰らいなさい────!」
ギャグか現実か、おもちゃの剣(?)の先には炎の玉が現れる。やはりバトル敗北の危機は続いているッ⁉︎
瞬間、パート2。
火球が飛来する直前、目の前に長い黒髪が靡く。そして俺を抱きかかえながら、火の玉をいなした。
「やはりマーキングされていたか」
「いやん、魔王様素敵♡」
ちょっとおどけてみたら草むらに投げ捨てられた。なぜ…………
「へぇ……加速の魔法か。時を操る魔王様って噂、本当だったのね」
「そら、貴様が余計なことを言うからバレたではないか」
「その角でバレるわぃ!」
言わずもがなである。しかし魔王が助けに来てくれたのはグッド。バトル敗北はなくなったわけだ。人生の確変は調子がいい。
「さすがに魔王様をひとりで相手にするほど馬鹿じゃないわ。目的は果たしてるしねっ!」
リリカがおもちゃの剣を振るうと、強風が吹き荒ぶ。圧倒的な風圧に思わず転んだ。
「じゃあねキョーラク! 気が変わったらいつでも協力してあげる」
「いや、そんなこといいから────」
ハウスルールで魔法は禁止だぞ……そう伝える前に、いつのまにかリリカは消えてしまっていた。
「逃げたか」
「ったくぅ、異世界の奴ってのは碌な奴がいねぇな」
「まったくだ、我を見習って欲しい」
それはない。
焼けた雑草と風で吹き飛ばされた影響で、周囲はめちゃくちゃだった。
「おーい、2人とも無事ー?」
「遅いぞ孤光の魔女(笑)」
「ミィが速すぎるんだよぉ」
空から降ってきたルナに事情を説明すると、特に驚く様子もなく淡々と事実を受け入れた。
「へぇーリリカも来てるんだ」
「あいつ勇者なの?」
「うん。ついでに言うと私を追放した張本人」
衝撃の事実──ってほどでもないか。勇者と一緒にいたんだから追放した側にいたんだろうし。
「魔王に勇者に、こちらも騒がしい世界だ」
「魔王のお前が言うの、それ…………?」




