Round 5 あなたも魔法を使わない?
聞き取りだけで終わらせれば良かったのに、さらにそこから当たりを求めて追った結果、計2万円が財布から消えてしまった。グッバイ。
今も目の前で高回転現象は起きているものの、魔力が漂っていると魔王が侵入を止めた。
「はぁ〜超高回転の謎はなんとなく知れたけど、ぶっちゃけこれ解けるのか?」
「今のとこは難しいね。取っ掛かりが少ないもん」
「打っていた客を追えば良いのではないか?」
「そっか、大事なこと忘れてた。今回は巻き込まれた人が明確にいたね」
どっか抜けてんだよなぁ……ま、手がかりがないなら足で稼ぐしかないわな。
「よし、がんばってくれ」
「何を言っている。享楽も分担するのだぞ」
「えー、俺なんも能力ないし」
「労働を避けるためなら虫でも使うぞ我は。そら、3人立ったぞ」
見れば、1人はらすべがすで電話をしていた青年だった。虚な目のまま離席し、店の外へ。他の2人の客は別の出口から消えて行った。
「んじゃ、俺あの人追うわ」
「合流は宿にしよう。忌々しくも夜の労働がある故な」
「その言い方いかがわしくない?」
「あんまりにも好評だから知られちゃったもんね、魔王様」
「我を褒めることは良いが、労働は悪! 今度のバイト代を軍資金に、パチンコで荒稼ぎして客として旅館に泊まってくれるわ!」
…………多分無理なんじゃない?
ツッコミは胸の中にしまって、退店した客をそれぞれで追うことに。単なる客だし、妙なことにならないとな思うけど。
…………そういや魔力に侵されてるってなんだったんだろ?
「ぅ…………ぁ…………あぁ」
てっきり車か原付で移動かと思ったが、まさかの徒歩。腕も振らない歩き方で、青年はひたすらに歩き続ける。
…………近所なのかな?
あ、やべ。ルナとミィ、スマホないから連絡できねーじゃーねーか。さっき同じこと考えてたのにやらかした。
「ぁ…………ぁあ」
スマホ事情を公開していると、青年が足を止める。市内の緑地公園だった。遊具そこそこ、広い芝生もそこそこそして木々もそこそこ…………うん、特にパチンコとは関係ない。
「……負けたから腹いせに遊具で暴れるとか?」
平日の昼間にやることではない。もっと言うと、平日の昼間にパチンコで負けた客を尾行するのも、普通やることではない。ニートの戯れと言えよう。
公園の奥に進んでいくと、茂みの多いエリアに入り込んだ。木々で日差しが覆われて薄暗い中を、青年はよろよろと進んでいく。なんかヤバそうだなぁ。
引き返そうか迷った瞬間、茂みの奥から誰かがぬるっと現れた。黒いローブで姿は見えないが、身長はルナと同じくらいの…………160センチくらいか?
「…………ご苦労様、はい回収」
女の……ガキの声だ。青年の手を取ると、手と手が光り、女の方へ光が移動していく。なんか吸収してる…………?
まずいな、これ俺だけじゃなんにもわからん。帰るか…………
「────隠れてないで出てきたら? バレてるわよ」
ローブが陰になって見えないが、顔の向きがこちらに変わった。と同時に、光を吸収された青年は来た道を戻っていく。
「さすがにおかしいって思う人間もいるのね」
「そりゃあんだけの人数が虚無顔でパチンコしてれば変だろ」
「あたしがやらなくたってみんな最初から虚無顔してたわよ」
それはきっと当たってなかったんだろうよ。
ずいぶん明るい声だ。ハキハキしててルナやミィともタイプが違う。ゆっくりと近づいて来るローブ女は、まだ顔が見えない。
「あなたからあたしが仕込んだ魔力を感じるわね。あなたも打ったの?」
「お前がやったのかアレ…………」
「えぇ、ちょっとね」
種明かしはナシか。ま、そんなかんたんにひけらかすほど馬鹿じゃねぇよな。
「…………なんともないの?」
「なんにも」
「ふぅ~ん………………」
いきなり何を聞くのかと思えば、なにやら値踏みするように俺をじろじろ見てくる。数秒の後、女は頭に被っていたローブを外した。
「あなた面白いわね!」
淡い赤色のショートカットにキラキラと輝く目が、薄暗い木々の中で光る。声色と同じ明るく自身に満ちた顔で、少女はこちらを見据えていた。
「どう、あなたも魔法を使ってみない?」
唐突な誘いと、やはりというか『魔法』というワードが現れた。




