表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代パチンコ奇譚 パチ屋の謎は、ニートの俺と異世界の魔女が解き明かす  作者: ムタムッタ
CASE.2 世界は回る、パチンコは回る、しかし当たりは回らない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/63

Round 3 圧倒的超高回転現象②


「どこか座れないかな?」

「ぜーんぶ埋まってらぁ」


 黙々と回転されるパチンコはすぐに数十回転を記録した。打ってる客は幸せそうじゃないけどな。


「埒が開かん、手分けをしよう。我は向こうを探る」

「…………打ちたいだけでは?」

「調査だ」


 魔王が行ってしまった。


「ま、危険な感じはないしミィの言う通りかも。私もあっち行ってみるね」

「あんまり金突っ込むなよ」


 まったく……どいつもこいつもパチンコしか頭にねぇのか。パチ屋の謎を解いて魔力回収って目的はどこへ行ったのやら……


「あ、ぁ、あ…………」

「あ?」

 

 ちょうど島を出る直前の角の席、虚空を仰いで打っていた男が立ち上がりどこかへ行ってしまう。休憩札もなければ、下皿に玉もない。


 ※パチンコを中断してどこかへ行く時は台にある『休憩中』の札か下皿に玉を置いとくもんだ。携帯や財布を置くやつもいるらしいけどな。


「空いた……?」


 まるで座れと言わんばかりに、空いている。パチンコのスペックは1/319、データカウンターは1100回転。約3倍以上回している状況である。


「まぁ、体験しないとな」


 ぬるりと着席し、流れるように1万円を投入。早速打ち始めると、面白いくらいに玉が始動口へなだれ込んだ。


「は⁉︎」


 釘が釘としての機能を成していない。まるで見えない()が、始動口まで敷かれているように玉が吸い寄せられていく。そのほとんどが、台の下……いわゆるアウト口へ行かない。


「やっべぇなこれ…………」


 パチンコの救世主メシアはここにあったらしい。500円125玉がほとんど減らない。


 通常、パチンコは始動口に玉が入ると『賞球』というものがある。要は入った分のお返しだ。

 見返りが多い台が増えた昨今、1玉入ると1玉返ってくることが普通になっている。


 現状、それが循環しているのだ。


「な、なんて素敵魔法なんだ…………いくらでも打てるぞおい!」


 もちろん、偶然アウト口に落ちてしまう玉もあるが、それでも1000円で150回以上回っている。これを魔法と言わずしてなんという?


 しぐれやスタナムの店長には悪いけど、ここは負けた分を取り返してから調査にさせてもらうぜぃ!



 意気揚々────そんな言葉が正しかったかもしれない。



「うーむ…………」


 カウンターは2000と表示されている。周りに至っては3000回転を超える。手持ち無沙汰(ハンドルは握っているが)が続くだけの暇、暇、暇……


「当たんねぇ」


 これといって当たりそうなリーチすら来ない。なんなら嘘のリーチすらない。まさしく虚無。


 ルナとミィに連絡しようにもあいつらスマホ持ってないしなぁ。こんなとこで異世界人のハンデが出るとは…………

 え、俺? 動くわけないだろ、こんなに回る台に座ってんのに。


「………………」


 これだけの異常事態に、店員の誰も来ない。既に何時間かは回しているはず。まぁ、それはいい。よくないが置いておこう。問題なのは客だ。


 さっき俺の席にいた客以外、トイレにすら行かない。今時は当たるまで……当たってもスマホを弄る奴もいるが、それもしない。誰も彼もが虚空を見ながらただ玉を飛ばしている。一心不乱、というより何か操られているような…………


「おい」

「うわっ……って、ミィかよ」


 肩を掴まれたかと思えば、魔王様が背後に立っていた。美人顔が近いと少し緊張する。


「財布から金が消えた」

「素直に負けたと言いなさい」

「店に預けているだけだ。下ろすから貸すがよい」


 うーん、このパチンカス…………


「それより澱んだ魔力に侵されているぞ。ここは一旦退け」

「マジ?」

「マジだ」


 別に虚無ってはないけどなぁ。

 割と強引に立たせるもんだから離席すると、遠くから来たおっさん客がすぐに座って打ち始めた……と思えば、他の客と同じく虚空を見つめて固まってしまう。


 無理に遊技を止める権限もない。つまり、


「とりあえず今は打つ手なしってか」

「ルナが情報収集中だ。そろそろ落ち合うぞ」

「うわ〜ん! 享楽ぅ、ミィ、財布がすっからかんだよぉ!!」


 …………まともに調査できたの、俺だけじゃね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ