Round 1 回転こそ正義
――――パチンコとは、回転こそ正義である。
大当たり後のヒキとか、継続率とか、そういうことではない。
もっとこう、根本的なお話である。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
銀玉が金色に塗られた釘を殴りながら、重力に従って落ちていく。盤面に打ち付けられた杭どもは、大当たりを阻むがごとく玉を蹴散らし始動口から弾く。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
三者三様――――とはならず、同じ台に向き合う三人の謎を解く打ち手が新たな1万円札を投入。ウィーンとゆっくり吸い込まれていく渋沢栄一には、別れの言葉もない。
そして再び、『貸玉』を押して銀玉を召喚する。
当たりを手中にする、その時まで………………
「いや、入らないんだが?」
「うぅ…………」
「なぜここまで打ち手に不利で魔法がダメなのだ…………?」
「ルールだからだよっ!」
右にいる孤光の魔女、ルミナス・アークライトは目を潤ませる。
左にいる時の魔王、ミルドレッド・ユニバーサルは歯がみする。
俺はただ、白目を剥いてハンドルを捻る。
久々に3人揃って調査に出たものの、噂の謎には会えずじまい。新台を聞きつけて打ってみれば導入して1週間ほどにもかかわらずほとんど回らない。1000円14回。いわゆる『ボーダー』を考えるとかなり…………というか非常に厳しい。
――――ボーダー。
数学的根拠に基づいたパチンコ攻略法における、ボーダー理論のこと。細かいことを省けば『いっぱい玉が入って抽選されれば大当たりしやすいよね』、である。期待出玉とか、交換率とか色々あるが……それは省略。
一言で表すなら、まさに『回転こそ正義』。
台ごとに『1000円あたりでこのくらい抽選できないときびすぃ~』って回転数はあるわけで…………それって大体20回くらい。それより少ないってことは、つまるところ、俺達は戦う前から傷を負わされているのだッ!
「俺は巷の悪質魔法使いより店を倒すべきだと思うんだが、どう思う?」
「賛成~!」
「異論なしッ!」
「こらぁっ、調査はどうした調査は⁉」
パシ、パシ、バシィ! っと3連発。店長かつ雇い主の三京しぐれによるハリセンは、相変わらず元気です。今日もパーラー『らすべがす』を中心に、謎を調査中な俺たちである。




