Round 27 異世界パチンカスは他にいる
時間は戻り、魔王ミルドレッド(めんどいから以下、ミィ)としぐれが和解した直後のこと。
なんでも現在進行形で怪奇現象が発生しているという。
「ほ、他にもいるぅ?」
「さっき店長さん達と話してたんだけどね? オスイチ現象の前から色々起きてるんだって」
「謎の予感! 例えば例えば⁉︎」
事件が解決してホッとしている俺たちと違って、ルナだけが元気であった。
「詳しくは聞いてないけど、異常にハマる台とか…………」
「それは遠隔じゃん」
「スルーしていい?」
「せめて相手して♡」
ハリセン頂きました。というか、俺もさっき1000回転ハマったぞ。
「あんただけならたまにあるわよ。でも島ひとつ2000ハマりよ?」
「よく暴動起きなかったな……」
「それが1万円で2000回回ったらしいのよ」
「は?」
単純計算1000円200回転なんですが…………???
「謎だね!」
「ミルド……えぇぃ、面倒だわ。魔王様は何か知らないの?」
「魔法の使い手がいる、ということは知っている。そこの魔女ではなく別のだがな。だが我が縄張りにしたことで鳴りを潜めたのだろうよ」
「まぁ……時の魔法に比べたらなぁ」
スケールが小さくなったと言うか。ルナの目的も魔王討伐だったし。
「匂う、匂う魔力のニオイ! ぜひ協力させてよ!」
「我は協力など……」
「出禁」
「くっ……なんと卑劣な…………ッ」
「要するにパチンコ屋の悪質魔法使いをなんとかしろってことだろ?」
「犯人がホントに魔法使いならね」
信じるほかない。だって目の前に魔女と魔王がいるのだから。
「他にも報告はあるのよ! 考えてみればウチでも変なことはまだ起きてたんだからっ!」
「なんで気づかねぇんだよ」
「だって変なお客さんなんて日常茶飯事じゃない?」
店長がそれ言っちゃう?
まぁ俺も暇だし付き合うか。面白そうだし。
「仕方ない……遊技の楽しみ方を教えてもらった恩もある。だがこちらも条件がある」
「なにかしら?」
「3食寝床付きの場所を提供してもらいたい」
「享楽、頼んだわよ」
「ウチかよ」
「魔王も引っ張るならバイト代出すわ」
「なんなりとお申し付けください、しぐれ様」
「返事はやっ」
「貴様に矜持はないのか……」
「ぬぁいっ!」
矜持などパチ屋のトイレに流してしまえ。俺に必要なのは、1000ハマりした分の補填なのだ。
そうして、次なる謎を解き明かすべく魔王を我が家に引き入れたのである。金と暇つぶしと刺激を求めた男の決意と言えよう。
「じゃあ早速バイト代ちょーだい♡」
「働け」
魔王討伐で得たもの。
1000ハマりの苦い経験と、魔王本人である。
◇ ◇ ◇
そして今、夜に至る。ルナの部屋にもう1人、魔王ミィが加わった。
空間が崩壊していく様を見せられても、正直現実味が無さすぎたな。目の前でオセロに興じる魔女と魔王がそれをしていたとは思えん。
「つーかルナはいいのか? ミィを倒すのが目的だったろ?」
「無理やり駆り出されただけだし別にいいや。もっと時空魔法教えてほしいし」
「飯の種をそう簡単に教えるものか。そら、チェックメイトだ」
あら見事に真っ黒な盤面。
不満そうに頬を膨らませるルナに、ミィは満足げに高笑いをキメた。
「ハッハッハッハッハ! 追放されたもの同士、日銭を稼ごうではないか」
「お前も呑気だなぁ」
「労働せずに遊技に興じるだけで生活できる素敵環境! 手放してなるものか!」
それは今日たまたまツイてただけでは…………? さてはこいつ、まだパチンコで負けたことないな?
「まぁ故郷への復讐のため、魔力集めは貴様等に協力してやる。大人気なくこの世界を壊しかけてしまった詫びも兼ねてな!」
無事にいられたからこそ分かったことがある。魔王はヤベぇ。だが利用価値はある……なにより、時空魔法とやらがバレることはないのだ。
つまり…………利用しない手はない。
「ねぇねぇ魔王様〜?」
「なんだ気持ちの悪い声で」
「次に打つ時にさぁ…………ん?」
不意に、机に置いていた俺のスマホが震える。画面を見るな、と全身が警告しているものの、出ないとそれはそれで危険だと鐘を鳴らしてもいる。
『三京しぐれ』である。
「…………もしもし?」
「言い忘れてたけど、ルナちゃんと魔王様の魔法でパチンコ打ったらシバくわよ?」
「ひょっとしてお前も魔法使い?」
一方的に電話は切れて、ルナとミィがこちらを見ている。
「抜け駆けは無理だぞ」
「いや…………パチンコで魔法はダメだよ! 正々堂々ッバンザーイッ!!」
「しぐれには前もって言われてたからねぇ〜。享楽ならやりかねないって」
「信頼してくれてありがとよぉっ!」
せっかく異世界パチンカスどもを利用しようと思ったのに、俺の野望は潰えたのである。
まぁいいさ、オスイチ魔法がなくたって。俺は自力で魔王に一撃浴びせたんだからな。
「よしお前ら、明日からまた謎探しすっぞ!」
「おぉ〜!」
「任された」
時は進む、いつも通りに。
1人で暇だった時とは違い、異世界の者たちと共に。
「あ、枕投げするなよ。うるさいから」
「えぇ〜」
「宿の醍醐味を知らぬ愚か者か」
「異世界に枕投げあんのかよ…………⁉︎」
ホントに大丈夫かねこいつら…………
CASE.1 お座り1発現象の謎を追え!
Case Closed
◇ ◇ ◇
次話final round、ここまでの締めとなります。




