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現代パチンコ奇譚 パチ屋の謎は、ニートの俺と異世界の魔女が解き明かす  作者: ムタムッタ
CASE.1 お座り1発現象の謎を追え!

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25/63

Round 25 出禁じゃないけど魔法はダメよ


 小1時間ほど経過して、魔王の画面にはリザルトが表示された。都合2万発、オスイチ魔法なく魔王の自力によるものである。


「ハーハッハッハ! ようやく魔王たる我に屈したようだな」

「大勝利ぃ〜今日はお菓子交換しよーっと」


 ホクホクで喜ぶ両隣と違い、自分の台の上には1000回転を超える数字が表示されていた。


 あぁ無情。あぁ、オスイチ、君にもう一度会いたい。だいたい1/319が1000回転ハマるなんておかしいだろ。誰かの陰謀に違いない。きっと魔法だ、ハマる魔法が掛けられているんだ。


「おいルナ、このパチンコ台の『当たらない魔法』を解いてくれ」

「うぇ? そんな魔法掛けられて…………」

「あるっ! 絶対あるっ! じゃなきゃ遠隔だッ!! きっと当たり停止ボタンが────」

「やめんかぃ!」


 バシィッ、と景気よくハリセンでシバかれる。良い音。


「うわ出た、遠隔の犯人」

「してないっつーの。で、その子が魔王様?」

「誰だこの女は」

「バッカ、おめぇここの店長! この場における王だよ王!」

「しぐれ王様だって〜」

「しぐれ様とお呼び! オーホッホッホ!」


 ずいぶんノリがいいな。客付きが良いからだろうか。


「満員御礼、今月の予算に大きく近づいたんだもの。そりゃテンション上がるわ」

「ハッハッハッハッハ、それはなによりである」


 上機嫌の魔王、その白い肩に『らすべがす』の王が手を伸ばした。


「なによりだけどぉー? ちょぉっっっといいかしら、お客様?」

「う、うむ…………?」



 ◇ ◇ ◇



 結果から言うと、魔王────ミルドレッドは無事である。現在『らすべがす』の事務所で拘束されているが。


「不敬な輩だ」

「不敬なのはそっちでしょーが」


 足を組んでタバコをふかすしぐれの前でも、ミルドレッドは冷静そのもの。まったく動じる様子はない。そりゃ魔王なんだから人間に怯えるわけもないか。


「おいおい、あんまり手荒なことすんなよ。人身売買とか内臓抜き取るとか」

「あんたわたしのこと何だと思ってるの…………」

「しぐれ、私からもお願い。魔王、少なくとも敵意はないよ」


 端玉でもらった菓子パンを頬張りながら、ルナは言った。


「あのねぇルナちゃん。この魔王様にどれだけ苦しめられたと思ってるの」

「でも魔王がその気ならこの町くらい簡単に吹き飛ばせたと思うよ?」


 この魔女は平然と恐ろしいことを言ってのける。


「特定位置の時間の流れを変えるってことはさ、つまりその場にいる人間なんて簡単に()()できちゃうんだよね」

「始末ってお前なぁ」

「だって魔王は人間と敵対してるんだよぉ?」


 それもそうかと、しぐれと顔を見合わせる。急に血の気が引いて簡単な拘束はすぐ解かれ、『らすべがす』の王は平伏する。


「戯れだったと理解したか?」

「ははっー!」

「切り替え早っ」

「────でも、それをしなかった。魔王はひとり時の中で遊ぶことを選んだんだ」

「勝手の異なる世界で面倒ごとを避けたまでのこと。大した理由はない」

「1ヶ月もやってたってことはハマってたろ」

「うぐ…………ま、まぁ人間の作るモノの割にはな」


 何もないのに手を捻るな。十分脳を焼かれてるぞお前。


「なーんか拍子抜けだよぉ。超凶悪な魔王って聞いてたのに」

「勝手な想像が広がったのだろう。我はできることなら働きたくない。ちょっと他人より労働耐性のない魔族でしかないのだ」

「クソニートじゃねぇか」

「我が働かぬことで皆が働き国が栄える……最高ではないか」

「それで追放されたんだけどなお前」


 キラーワードだったのか、ミルドレッドは吐血して倒れた。いや、吐血のフリか。案外ノリいいなこいつ。


「貴様らの言う()()()()で食い繋いでさえいれば我に文句はない」

「それが困るのよ色々と。先日付けで店内の魔法使用は禁止にしたし」

「なぬ…………⁉︎」


 パチンコ屋には店舗ごとに独自のルール(ハウスルール)が存在する。確変中の当たりを多くする技術である『捻り打ち』禁止、とか、簡単なものなら『店内撮影禁止』とかな。

 この前の会議で市内全店が『遊技中の魔法の使用禁止』となったわけで。


「次見つけたら出玉没収&出入り禁止よ」

「そ、それは困る!!」


 ようやく焦り始めたミルドレッドが狼狽える。


「本来なら、今までの分も没収したいところだけど…………この三京しぐれ、異世界のお客様には優しくしましょう。魔法を使って当たりを出さないなら、今回のことは私の権限で不問とするわ」


 まるで仏の如く、しぐれに後光がさしている…………って、ルナが魔法で照らしてるだけかよ。


 笑顔で手を差し伸べるしぐれに、ミルドレッドは涙をこぼした。


「め、女神…………ッ!」

「チョロ過ぎんだろ⁉︎」


 こうして、オスイチを発生させていた犯人……魔王、ミルドレッド・ユニバーサルは遊技中の魔法禁止と引き換えにお咎めなしとなった。


「で、お願いがあるんだけど〜!」

「む?」

 

 もちろん、やられっぱなしだった店長が簡単に水に流すわけもなく。後光のさす笑顔は、悪魔の微笑みだったと理解するのはこの後であった。


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