Round 22 打ち直し。台のスペックは確認しましょう
「え?」
「なに、どうしたのよ享楽」
スマホで時間を見る。午前9時前、間違いなく戻っている。
魔法で戻ったんだろう…………まさか人生でタイムスリップを経験するとは思わなかった。
「扉開け────」
「待った!」
セリフも違う…………いや、ルナも戻ってきたから当然か。困惑するスタッフを前に、ルナが杖を取り出した。
「パチンコ・アクセラレーションッ!」
突然のダサい魔法名と同時に、世界は加速する。もちろん開店はしていない。一度見てきた状況と違うのは、しぐれも加速していること。
「ちょ、なにこれ⁉︎」
「2回目はしぐれにも手伝ってもらわなきゃね」
◇ ◇ ◇
しぐれにしてもらったのは……釘のメンテナンスだった。対魔王用に設定していた状態を、元に戻すよう頼んだのである。
「なーんか魔法って割に地味ねぇ」
「時間が止まってんだぞ」
「だって時が止まってやることがメンテよ? しかも未来から来たって?」
ルナの口から簡単に説明はしてもらった。自分たちは店の外で待つ魔王と戦ったこと、そして確変を引いて魔王を揺さぶり魔法を打ち消したものの、暴走した魔王により世界が崩壊しかけたこと。
…………全部パチンコが原因というのが笑えない。
「でさぁルナちゃん、魔王用に調整したのを戻していいの? 好き放題打たれちゃうけど」
「そのままにしてたらまた世界壊れちゃうもん。それに、私も確変引きたいし。教えてくれるんだよね享楽、確変の引き方!」
どうしてそこでキラキラした眼差しを送ってくるのか…………反対からとんでもない眼光が刺さってくるが気にしないでおこう。
「教えるっつうか、確変に必ず入る台にすりゃいいんだよ」
「そんなのあるの⁉︎」
「あるよ。つーかおま…………」
いや、知らなくて当然か。だって異世界から流れてきてまだ数日なんだから。
じゃあ1ヶ月も事件を起こしてる魔王はなんなんだよって話だが…………それは置いておこう。
「はい、終わったわよ」
「ありがとしぐれ〜」
「おい、アレとアレだけ釘広げてくんない?」
「出禁にするわよ」
おー怖。対魔王用の決戦兵器を解体されればこうもなるか。
そしてほんのわずかな時間、世界の流れは元に戻り、扉が開くと同時に再び…………世界はまた加速する。
釘の対策など必要なかった。結局必要だったのは…………
「────なぜ、加速世界に我を招いた」
開店まもなく、魔王が目の前に現れた。
「とんだ醜態を晒してしまった…………そのうえでなぜ、我に何もしない?」
「やっぱり覚えてるんだ、あの暴走」
「当然だ。貴様、我の時空魔法を奪ったな?」
「解析しちゃえば魔王の魔法でも取れちゃうからね私は〜」
さらっとすごいことを言ったねルナさん。
魔女への興味は薄れたのか、視線はこちらに移る。
「凡人の貴様が、どうしてここまでする」
「どうしてって言われても…………俺は嫌な思いしてないし」
「…………なんだと?」
「ま、とにかく打とうぜ」
せっかく釘を開けたスマパチコーナーは素通りして、普通の1/319パチンコのコーナーへ向かう。
「だってよぉ、オスイチさせてくれるなんて神様だぜぇ?」
「何が神だ、我は魔王だぞ」
「いやいや、1回転目当たり確定なんてしてくれるならみんな崇めると思うぜ?」
座って1発、大当たり。こんな素敵な事象が毎日起きてくれるならハッピーである。ぜひともサービスとして導入して頂きたい。
だけど、そうはいかない。
というかそれで俺がまったり打てなくなるのはごめんだね。
「お前の知らない世界は、意外と簡単に見えるんだよ」
「…………これは」
「享楽、なにこれ?」
「100%確変に突入する台」
大当たり後に右打ちする台は確かにあるが、必ずしも確変というわけではない。一定の回転数を補助してくれるだけの『時短』というものもある。ならば、本当に確変だけの台を魔王に打たせれば良い。それが、確変突入率100%! 台のスペックはちゃんと確認しないと痛い目見るぞ(35敗)。
「オスイチだけ楽しんで確変楽しまないなんて、もったいないぞ」
たまたま打っていなかっただけかもしれない。たまたまヒキ弱で当たっていないだけかもしれない。
なら、当たりへ導くのもパチンカスの務め。
「第2ラウンドだっ!!」
「いぇ〜い!」




