第21話 実験の具体的手法暴露
研究所の下級職員
俺は、この研究所の地獄の深さを、日々思い知らされていた。俺が「人道的な研究」だと信じていたものは、その実態を知れば知るほど、人間の尊厳を踏みにじる冒涜的な行為だった。
ある日、俺は上司から、ある「成功例」のデータ整理を命じられた。それは、一人の被験者の能力が、実験によって飛躍的に向上したことを示す記録だった。
「素晴らしいだろう、ヤマモト君。我々の研究は、ついに人間の新たな可能性の扉を開いたのだ」
上司は誇らしげに語るが、俺は血の気が引くのを感じていた。データには、その「成功」に至るまでの、おぞましい過程が記されていたからだ。
記録によれば、被験者たちは「何らかの処置」によって、その精神状態を大きく変えられていた。そして、彼らが持つ特定の感覚は、信じがたいほどの精度まで高められていた。それは、もはや人間が持ちうる限界を超えた領域だった。
それは、能力向上などという、綺麗な言葉で飾れるものではない。持ち主の意思を無視し、心を壊し、その上に新たな能力を無理やり咲かせる行為だ。
そして、最も恐ろしいのは、その過程で生まれるおびただしい数の「失敗作」の存在だった。データには、「調整失敗」や「精神崩壊」、「機能停止」といった記録が、まるで消耗品のリストのように無機質に並んでいた。成功例は、文字通り、数えきれないほどの魂の屍の上に築かれた、たった一つの奇跡に過ぎなかった。
「この技術の最終目的は何なんだ?」
俺は、モニターに映る「成功例」の笑顔の写真を見ながら、戦慄した。その笑顔は、あまりにも純粋で、無垢で、自分が何をされたのかを全く理解していない、ただの子供の笑顔だった。
俺たちの手で、この子の人生は、もう二度と元には戻らない場所に歪められてしまったのだ。




