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第19話 内部告発者たちの密会

医師サワダ


その夜、私の診療所に、四人の男たちが、人目を忍んで集まっていた。

一人は、教師のタチバナ先生。子供たちの未来を憂い、洗脳教育の証拠を掴んだ男だ。

一人は、農民のゴンゾウさん。土と作物の異変から、食料操作の事実に気づいた男だ。

一人は、商人のイトウ君。歪んだ経済システムから、村の欺瞞を暴いた男だ。

そして、私。医療という名の人体実験に加担してしまった、罪深き医師。

私たちは、それぞれの立場で、この村の「嘘」に気づいてしまった、孤独な告発者たちだった。

これまで、お互いに腹の底を探り合っていた。誰が管理者たちの間者か、誰が裏切り者か、疑心暗鬼に陥りながら。

だが、今夜、私たちは、全てのカードをテーブルの上に晒した。

タチバナ先生が、子供たちの思考力が奪われている現状を語る。

ゴンゾウさんが、栄養のない作物と、不自然な土壌について報告する。

イトウ君が、外界との不自然な交易の実態を暴露する。

そして私が、夢見病が薬物によって引き起こされているという、動かぬ証拠を突きつける。

バラバラだったピースが、一つに繋がった。

医療、教育、食料、経済――この村の全てが、住民を支配し、管理するための巨大なシステムの一部だったのだ。

「……やはり、そうだったのか」

全員が、息を呑んだ。恐ろしい真実の全体像を前に、私たちは、言葉を失った。

沈黙を破ったのは、タチバナ先生だった。

「私たちは、子供たちを救わなければなりません。あの子たちの魂が、完全に奪われる前に」

その言葉に、全員が顔を上げた。そうだ。絶望している場合ではない。

「わしらの食い物は、わしらの手で取り戻す」とゴンゾウさん。

「これ以上、村の富を奴らに吸い上げさせるわけにはいかん」とイトウ君。

「私は、医師として、患者たちを救う方法を探す」と私。

目的は、一つになった。

立場も、考え方も違う。だが、この村を、そして未来を救いたいという想いは、同じだった。

「俺たちにも、できることがあるはずだ」

孤独だった魂が、初めて一つに繋がった。

それは、暗闇の中で灯った、小さく、しかし確かな希望の炎だった。


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