第17話 農民が知った土壌と食料操作
村の農民
わしら農民にとって、土は神様だ。管理者たちの指導のもと、わしらは毎年、驚くほどの豊作に恵まれてきた。村に飢える者はおらん。それは、ありがたいことじゃった。
だが、ここ何年か、奇妙なことが続いていた。
作物の味だ。見た目は立派なのに、年々、味が薄くなっている気がするのだ。昔はもっと、野菜本来の、力強い味がしたもんじゃが……。
そして、土そのものもおかしい。管理者たちから支給される「特殊な肥料」を撒くと、確かに作物は驚くほどよく育つ。だが、その肥料を撒かなかった畑では、ペンペン草一本生えなくなってしまった。まるで、土そのものが、あの肥料なしでは生きられない体になってしもうたかのようじゃ。
わしの疑念を決定的にしたのは、数年前、村に迷い込んできた一羽の渡り鳥だった。その鳥が、外界のどこかから運んできたらしい、一粒の種。わしは、それを畑の隅にこっそり植えてみた。
やがて芽を出したのは、見たこともない種類の豆だった。収穫して、茹でて食ってみて、わしは腰を抜かした。
美味い。とんでもなく、美味い。
豆の味が、信じられないほど濃いのだ。わしらが育てている、味のしない作物とは、まるで別物じゃった。
その時、わしは悟った。
わしらは、腹は膨れるが、栄養のない、中身が空っぽの作物を、ずっと食わされてきたということか。
「俺たちは、毒を食わされているのか?」
豊作という名の、巧妙な罠。
わしら村民は、食料によって、その命の根幹から支配されていたのだ。
わしは、手にした鍬を、怒りで固く、固く握りしめた。