4.神と凡人
二人はその場所から逃げ、教室の方向へと走り出した。
二人は自分たちの教室ではなく、その奥にある教室に隠れた。
「ねぇ、なんで私達の教室に戻らなかったの?」
「少しでも生存率を上げるためだ。狼達は、一日に一人だけしか殺せないはずだからな。」
「でもそれって私達以外の誰かは必ず死んじゃうんでしょ?」
「…ああ、そうなるな。」
葵は悲しそうな顔をした。
「なぁ、葵、靴貸せ。」
「は?…なんで?」
「一応…な。もし狼の鼻が効くんなら匂いがついているやつを置いといた方がいいと思うんだ。」
慎太郎は、葵から靴を受け取り、自分の靴と一緒に自分たちの教室に投げた。
そのとき、廊下の奥からぺた、ぺた、という音が聞こえてきた。
「ちょ、ちょっと?もう追いつかれちゃったよ?」
「落ち着け葵、まだ逃げ切れる。」
「ど、どうするの?」
「葵、ここは何階だ?」
「えぇと、二階だよ。…まさか、嘘でしょ?」
慎太郎は窓を開けた。
「そのまさかだ。それにこれ以外に生きる道はないだろう?」
慎太郎は窓に登った。
そして、葵の手を引っ張って、窓から飛び降りた。
なんとか着地できた二人は放送室を目指した。
「行くなら今だろう、もしこのゲームに勝ち筋があるならやはり放送室だろ。」
「一体放送室になにがあるんだろう。」
二人は放送室の窓を割り、中に入った。
「…っ!?なんだ?このきつい匂いは。」
「ね、ねぇ。あれって…。」
葵が指を指したのは、無数に積み上げられている死体だった。
二人が嗚咽をもらす中、部屋の奥から男性が歩いてきた。
「やぁ、君達。よくたどり着いたね。僕こそがゲームマスターのピットだ。」
その男性は、身長160cmほどで、細身の中学生くらいの体型だった。
「今回のゲームの生存者は二人かぁ。よかったよ、前のゲームは全員ゲームオーバーだったからさぁ。」
「?なに言ってんだあんた。まだゲームは終わってないんじゃ?」
「いや、もう終わりだよ。なにせ、これ以上やったって意味がないからね。」
「本当になに言ってんだ。まだ生存者は十人はいるはずだ。」
「それじゃあ今教室でなにが起こっているか見るかい?」
そう言いながらピットはモニターを指差した。
そのモニターには、全滅している教室が映し出されていた。
「な、なんで?なんでこんなことになってんだ?」
「君達がいない間に仲間割れをしていたよ。あれはすごく醜かった。あの中に人狼はいないのにね。」
ピットはモニターの電源を切った。
「人間には二種類いる。それは凡人と奴隷だ。奴隷はこのゲームに気付けずに死んでいった奴ら。そして凡人が気付けた君達だ。奴隷と凡人の明確な差は、考えることをするかどうかだ。おめでとう、凡人たち。」
「じゃあ、あんたはなんなんだ?」
「最初から言っているだろう?私は神だと。」
まぁいいと言い、ピットは指を弾いた。
「景品だ。受け取るがいい。」
二人の前にアタッシュケースが現れた。
アタッシュケースを開けるとそこには札束が大量に入っていた。
「これが、景品?」
「そうだよ。今回のゲームでの死者が二十八人だから二十八かける十万で二百八十万入っているはずだよ。死んでいった人たちに感謝しないとね。」




