11.train train4
そこで五右衛門はあることに気がついた。
「おい、鼠小僧、もう片方はどうした?」
土方の姿が見えなかったのだ。
「え?…いや、わからないな、いつのまにかいなくなった。」
「…ん?鼠小僧、その右手、どうしたんだ?」
「右手?」
鼠小僧の右手がまるで風船のように膨れ上がっていたのだ。
「なんだ?…これ、いったいどうなっているんだ?」
鼠小僧の右手は、どんどん膨れ上がり、顔くらいの大きさになった。
「こ、これは、能力、なのか?」
「だが、いったい誰の?」
そのとき、窓から誰かが入ってきた。
「なんとか…間に合ったぞ。」
土方だった。
「俺の能力は、元素の一つを十分の間だけ、操ることができる。今、俺は酸素をお前の右手に集め、膨らませた。風船みたいにな。」
「鼠小僧!能力でそいつを窓の外に押し出せ!」
「もう無駄だ。もうすぐ破裂する。それに、もうそいつにはなにも聞こえちゃいないさ、なにせ、体中の酸素をめいっぱい使ったんだからなぁ。」
鼠小僧の右手は破裂し、あたりに血が飛び散った。
「鼠小僧!」
「無駄だと言っているのがまだわからぬか、そいつはもう死んだのだよ。次はお前だ。」
「簡単に死ぬわけにはいかないんだよなぁ。まだ、時間も稼がなきゃならんしね。」
「時間を稼ぐ?もう無理だぜ。もうそろそろ症状が出る頃だろう。」
「…!?な、なんだ?急にめまいが。」
「お前の周りから酸素を消した。酸素欠乏ってのは知ってるかい?酸素が12%でめまいを起こし、10%で意識不明、8%で昏睡、6%で死に至るらしい。今のお前は、12%ほどってところか。」
五右衛門は、めまいが起きている中、なんとかして能力の射程外に出ようと天井に穴を開けた。
「まだ、めまいだけのあいだに逃げるしかない。…射程外に逃げて後ろにいるあいつらを連れてくれば、なんとかなるはずだ。」
だが、そのときにはもう、歩く力すら残っていなかった。
そのときだった。
「…あ、『役者』!」
鼠小僧が起きて、能力を発動したのだ。
「ご、五右衛門、それを使え…それを使って、後ろの奴らを呼ぶんだ。…お、俺が死んで、能力が消える前に。」
五右衛門の手には拡声器が握られていた。
『き、きてくれ!後ろの五人!』
五右衛門は拡声器を使って後ろに叫んだ。
「ま、まだそんな余力があったのか、く、クソ!この二人を倒してから後ろの奴らを一人づつ殺すつもりだったが、予定が狂っちまった。…仕方ない、こいつにトドメを刺してさっさと逃げなければ!」
土方は、五右衛門に近づき、銃を構えた。
そして、三発、脳天に撃った。
「よし…は、早く逃げなければ。」
そのとき、土方の足を五右衛門が掴んだ。
「き、きさま、なぜ生きている!?しっかりと脳天に撃ち込んだはずだ!」
「鼠小僧が、助けてくれたんだ。…お前の銃にある弾を全て能力で作った人形に変えてくれたんだ。」
「な、なに!」
「近づければこっちのものだ!…バラバラにして、逃げられなくしてやる。」
その後、駆けつけた五人が、バラバラにされている土方を外に捨て、鼠小僧の止血をしたのち、五右衛門が回復してから、先に進んだ三人を追った。




