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9. ステータス・オーっぱい

「ぐへへ、てめえのステータスを見せやがれ!」


 困ったことに、クラスでステータス・オープンが流行ってしまっている。

 授業の休み時間、案の定俺のところにちょっかいをかけるやつが来た。


「はあ? やだよ」

「さては、レベルが低いから見せたくなんだろう?」

「そういうおまえはどうなんだよ」

「俺様は総合レベル16だ!」


 目の前のいかつい男子生徒がドヤ顔する。

 新入生でレベル16はかなりすごい。


「ハッハッハ!

 たかがレベル16で何を偉そうに」

「この声は!?」

「きゃー! ハナマール様よ! 素敵!」


 褐色肌で金髪のイケメンが颯爽と登場すると、周囲の女子たちが沸き立つ。


「このボクのレベルは20なのだよ。

 もちろん、学年トップさ」

「ぐへえ! いけすかねえ野郎だぜ!」


 不本意だが、ノーキンに同意だ。いけすかない……!


「容姿端麗、文武両道、ハナマール財閥の御曹司で、トップの成績で入学し、翌日には学園の生徒会長、早食い大会優勝!

 なんてすごいんだ、ボクは!」

「きゃー! 素敵!」


 ぐぬぬ、こいつには欠点ないのか!


「ぐへへ、だがよお、腕力のステータスはどうかな?

 俺様の腕力レベルは学年一位だぜ!」


 なにい!?


「ほう、キミやるねえ。

 だが、腕力がそんなに高いのに総合レベル16ということは、他のステータスがよっぽど低いんだろうね」

「いいんだよ!

 てめえに勝っている項目が一つでもあればな!」

「だがボクは、平均で勝てなくては意味がないと思うのだよ」

「ぐへへ、どうせてめえも『イケメン度』とか『財力』とかのステータスが高いだけで、中央値をとったら俺様たちと大差ないんだろ?」


 平均の話をしているのに、なんで中央? が出てくるんだ?

 やっぱノーキンは頭が悪いな。


「まあいいさ。

 で、そこで無関係を装っているキミはどうなんだい?

 もしかしてボクよりレベルが高かったりするのかな?」


 こいつ! 俺に話題を振るか?

 そもそも、おまえが学年トップなんだから、俺がおまえより高いわけないだろ!


「ぐへへ、黙っていないで見せやがれ!

 てめえのステータス・オープン!」

「あっ他人のステータスを勝手にオープンするな!」


 ノーキンが俺に向かって手のひらをかざすと、目の前の空中に文字盤が現れる。

 俺の能力などが数値化された、ステータスウインドウだ。


「がっはっは! こいつ、レベル3かよ!」

「これは驚きだ!

 まさかボクと同じクラスに、こんな低い人間がいるなんて!」

「ようちえんレベルじゃねえか!」

「キミはいったい、どうやって入学したんだい?」


 くそう!

 だから見られたくなかったのに!


「ちょっと男子、やめなよー!」


 金髪ギャルが割って入ってくる。

 レ、レモン?


「ハニー、どうしてこんな底辺を庇うんだい?」

「こんなのどう見てもイジメっしょ!」


 他の生徒は俺から離れて見ているだけなのに、レモンだけは違った。

 他の女子……エレインはいない。トイレか?


「ぐへへ、なら俺様と付き合うか?」

「なんでそうなるんだよ!」


 あ、思わずツッコミを入れてしまった。


「彼の言う通りだ。

 付き合うならまずボクとだよね、ハニー」

「それもないっしょ!」

「な、なんだと!

 このボクのプライドが……ガクガクガク」


 え、こいつメンタルよわっ!


「ぬおお!

 このボクと付き合わないとは、どんな高嶺の花なんだ!?

 ハニーのステータスを見たいのだよ!

 ハニーのステータス・オープン!」

「ちょっと!

 あーしの——女子のステータスを勝手にオープンすんなし!」

「ふはは、恥ずかしがることはないのだよハニー!

 本当はボクに興味を持ってもらえて嬉しいのだろう?」

「嫌だけど……」

「やめろよ!」


 思わず、俺はハナマールの腕を掴んでいた。

 空中投影されているレモンのステータスウインドウ。

 それを俺の背中で隠すように、席から立ち上がる。


「ハッ! キミ、まさかこのボクに楯突くのかい?

 さっきは言いそびれたけど、ボクはAランクスキルの保持者で、理事長の孫で、裏生徒会の生徒会長で、御曹司で、全国鼻ちょうちん大会のファイナリストでもあるのだよ!」

「関係ないね。

 おまえはレモンのステータスを勝手に開いて、辱めようとした!

 それだけが、『断罪の理由』だッ!!」


 拳を握り込み、踏み込む!


「くらえ! 人間パンチ!」


——ペショッ!


 クリーンヒット! やったか?


「ふっははは!

 さすがレベル3のパンチ。

 痛くもかゆくも……いや、少しはかゆかったのだよ!」


 なにい!?

 このイケメンは表情を崩さず、涼しい顔をしている、だと?


「一発で倒せないなら、倒せるまで攻撃を続けるのみ!

 人間パンチ! 人間パンチ! 人間パンチ!」


——ペショペショペショペショペショペショ……!


 無数の拳をハナマールの全身に叩き込む!


「ふはは、だからボクには効かないと……う、そのパンチかゆい!

 くそうざいのだよ! 人間パンチ!」


——バキィッ!


「きゃああ!」


 な、なんだ? 目の前がチカチカする。

 頬が痛い。

 殴られたのか? まったく見えなかった。


「ちょっと! やりすぎっしょ!」

「先に暴力を振ってきたのは、こいつの方なのだよ?」

「それはそう、だけど……もう、わかった!

 あーしのステータス、見ていいから!

 スリーサイズと体重以外、なら」


 レモンの目がくやしさで潤んでいる。

 あいつめ……!


「待て! 俺はまだやれる!」


 足がふらつくが、なんとか立ち上がる。

 そして再び、レモン自身とレモンのステータスを隠すようにハナマールの前に立ち塞がった。


「ふはは、根性のステータスは多少ありそうだな」

「俺は、女の子を辱めるような奴は絶対に許さない!」


 だが、さっきのパンチでほとんどの体力を奪われてしまったのか、足がガクガクと震えて立っていることがやっとだ。


「ね、ねえちょっと」


 レモンが俺にそっと耳打ちする。

 ——な、な、なんだと!?


「いいのか、レモン?」

「う、うん……」


 震えている俺の足を見て、レモンの考えた方法。それは——


「おい、何をイチャついているのさ?

 きみは何発ボクを殴った?

 まだ一発しかやりかえしていないのだよ。

 くらうがいいさ、ボクの必殺技『人間パンチ』を!」

「くそ、それは俺が考えた技だ!

 人間にしかできない『人間パンチ』を簡単にパクりやがって!」


 まあ俺も『スライムパンチ』をパクって考えた技だけど。

 それはともかく、レモンの考えた作戦を実行だ。

 ハナマールに見えないように背中で隠しながら、レモンのおっぱいを後ろ手で揉み始める。


——ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ


《ぴー! 6回モミモミを確認しました。体力を6レベルアップします》


 足の震えが止まった。

 体力がレベルアップしたためだろう。

 よし、これなら行ける!


「俺のことはいくら殴っても構わない! だから——」

「じゃあ、お望み通りにしてやるのだよ! 人間パンチ!」


——バキィッ!


 痛い!

 が、体力のレベルアップしている俺なら耐えられる。


「ボクの人間パンチで倒れない、だと?」

「フッ、おまえの人間パンチはこんなものか?」

「ふざけるな! レベル3ごときが!」


 追加でレモンのおっぱいを揉む。


——ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ


「くらえ! 人間パンチ!」


《ぴー! 6回モミモミを確認しました。体力を6レベルアップします》


——バキィッ!


「人間パンチってのは、この程度か?

 俺には効かないしょぼい技だな。考えたやつの顔がみたいよ」


——ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ


「いきがるなよ! 人間パンチ!」


《ぴー! 6回モミモミを確認しました。体力を6レベルアップします》


——バキィッ!


——ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ《体力6アップ》


「人間パンチ!」——バキィッ!


——ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ《体力6アップ》


「人間パンチ!」——バキィッ!


——ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ、ぽよ《体力6アップ》


「はあ、はあ、はあ……な、なぜ倒れんのだ?

 ボクの、レベル20のボクのパンチを何度も喰らっているのに!」

「当然だ。

 女の子を辱めるようなデリカシーのないやつに、俺は負けない!」


 本当は殴られている間ずっと後ろ手でレモンのおっぱいを揉んで体力レベルアップし続けていたからだけど。


「く、くそっ!

 きみの顔と名前とレベルと出席番号、覚えたからな!

 ボクに逆らったこと、必ず後悔させてやるのだよ!」

「ぐへへ、ざまあみろ!」

「あとノーキンくん! きみも覚えたからな!

 必ず後悔させてやるのだよ!」

「俺様は関係ないだろ!」


 ハナマールは捨て台詞を吐くと、教室から出ていった。


——キーンコーンカーンコーンコーン


 ハナマールは教室から一歩出たところですぐ戻ってきた。

 授業が始まっちまうからな。


「うぅ、ぐすっ、ひぐっ……」


 レモンは泣きながら自分の席に向かっていった。かわいそうに。

 教室に戻ってきたエレインたちが驚いてレモンを慰めている。

 そして次の授業が始まる——。


「さて、生徒のみなさん。

 今日の授業では、ステータスについて学びます。

 それでは、隣の席の人のステータスをオープンさせてみましょう」



 ◆ ◆ ◆



 ん? 待てよ?

 レモンが泣いていたのって、もしかして俺のせいか?

 そもそもレモンは、俺の足の震えを見て体力が足りていないことを察し、そのために揉むことを許可してくれたいたのかもしれない。


 それなのに俺は、その後ハナマールに殴られ続けている間、揉み続けていた。

 元々はレモンの提案とはいえ、俺はレモンのおっぱいを体力レベルアップのための道具のように扱ってしまっていたのか?


「俺はなんて未熟なんだ……!」


 後で平謝りすることを心に誓う。

 クラスにできた大切な友人——レモン。

 彼女との関係が、こじれませんように。


 そして俺は、もっと人として成長してやることをここに誓う!

次回、悪魔(褐色美少女)再臨!

お楽しもみに!

————

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