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7. おっぱいプールスライム

 プールサイド。

 泳ぐ生徒たちを眺めながら、首を傾げた。


「しかし、妙だな」


 プールの授業中に、二人も溺れる者が現れた。

 こんなに頻繁にあることなのか?

 ただの偶然だとは思えない。


「二人は、どうして溺れたんだ?」


 溺れていた女の子たちに話しかける。

 他のみんなは水泳の授業に戻ったが、この二人はプールサイドで休んでいた。

 ハブられていた俺と一緒に。


「あたいは、普通に泳いでいただけっす。

 そしたら、何者かに水中からおっぱいを触られた気がしたっす」


 茶髪の女子は、そこまで言いかけてハッとして俺を見る。


「なんで俺を見るんだよ!

 そのとき俺は監視台の上で見学していただろ!」

「ごめん、おっぱいだったから、つい……」

「あの、わらわもです。

 わらわも、誰もいないのに水中でおっぱいを触られた気がして」

「あたいは、そのあと泳いで逃げようとしたんだけど。

 水中に何もいないのに『おっぱいを触られている感触だけ』が、ずっと付いてきて逃げ切れなかったっす」


 なんだそのホラー?


「見えなかった?

 まさか、『透明人間』とか?」

「ぐへへ……話は聞かせてもらった!」

「おまえは!

 ノーキン? ノーキンで名前あっていたっけ?」


 いかつい男子生徒が話に割り込んできた。

 おまえの登場には誰も期待していなかったのだが?


「ぐへへ、透明人間はありえねえな。

 もしそうなら、プールの水に『人間の形』をした空間ができるはずだ」

「なに? どういうことだ?」

「そりゃ、てめえが透明『人間』と言ったからだぜ!

 透明ブタならブタの形をした空間、透明ネコならネコの形の空間になるニャン」


 なるほどだニャン。

 ではいったい何が彼女たちのおっぱいを触ったのか?


「そしてなんとだな、俺様もなんだ!

 俺様も、泳いでいる最中に何者かにおっぱいを触られたんだぜ!」

「怖っ!」

「そこで俺様は考えた。

 透明ではないが見えない。

 つまり、光の屈折率が水と同じ性質の何者かが、水中に潜んでいるとしたら?」

「何を言っているのかわからないぞ」


 ノーキンは説明が下手だな。


「水と同じ屈折率のものを水中に入れると、どうなると思う?」

「水で冷えて、冷たくなる?」

「そうだ。見えなくなる。そして俺様たちは知っているはずだ。

 水のような体を持つモンスターを!」

「水のような体……まさか、悪いスライムのことかッ!?」


 俺の大声に反応したのか、プールの水面にニヤけた笑い顔が現れた!


「ケーケッケッケ! バレたか!

 よくぞ気がついたねえ!」

「みんな! 今すぐプールから出るんだ!」


 言われるまでもなく、みんなはプールから出て逃げ惑う。

 突如、水面が隆起し、ニヤけた顔はその部分に収まった。

 でかい! 以前戦ったスライムより遥かに大きい!

 おっきなスライムだ!


「ケッケッケ! ぼくは悪くないおっきなスライム!

 プールに潜んで女の子のおっぱいを触るだけの無害な畜生だよ」

「悪いスライムじゃん!」

「バレたか! ぼくは悪いおっきなスライム!」

「おうおうおうスライム!

 なぜ俺様のおっぱいを触った!」

「ケッケッケ!

 ……いや、女の子のおっぱいを触っていたらさ。

 その、体の一部分が膨張しちゃって……。

 その上をたまたま君が泳いで触れたのさ」


 『おっきな』スライムというより、『おっき』なスライムというわけか。


「なんだと! ふざけやがって!

 よくも俺様のおっぱいを穢してくれたな!

 許せねえぜ!」

「ケッケッケ! ぼくだってショックだよ!

 ぼくのおっきが男に触れるなんて!」

「オパール! こいつは俺様がやる!

 おまえはそこの女子たちを逃してやってくれ!」

「わかった!」


 俺はプールサイドの女子二人を守るように移動する。


「ぐぇへへっ!

 我が筋肉よ、筋肉せよ! マッスル&マッスル!」


 ノーキンの体が一瞬光り、筋肉が倍くらいに膨れ上がる。

 これがノーキンのAランクスキルか!

 弾ける筋肉、弾ける若さ、弾けとぶ水着!


 ノーキンはプールサイドの淵に立ち——


「俺様の奥義を喰らえ! 悪いスライムパンチ!」


 そのまま、プールの水面に向かってパンチを繰り出す!


 ——バッシャーン!


 弾ける水しぶき!


「ケッケッケ! どこを狙っている?

 そこはぼくの一部じゃなくて、ただの水面だよ」

「ぐへえ!?

 どこからがスライム部分だ!?

 水面部分とまったく区別がつかないぜ!」


 ノーキンって頭が悪いんだな。

 あの水上に隆起している顔を狙えばいいのに。


「ケッケッケ! 俺様の本体はこの顔がある部分!

 だがプールに入らなければ届かないが、どうする?」


 どうやって攻撃すればいい?

 いや、今はやつの挑発に乗っている場合じゃない!

 女の子二人を逃す方が先決だ!


「おっと逃さないよ!

 悪いおっきなスライムパンチ!」


 しまった!


 ——ばちんっ!


 背中が痛い。

 あばらを30本ほどやられたか!?

 だが、間に合った!

 女の子たちに覆いかぶさり、庇うことができた。


「オパールくん! ありがとうっす!」

「ありがとう、でも手、どけてほしいのう……」


 なにい! この感触は!?

 さ、左右の手で感触が違うだと?


 冷静に見ると、俺の右手は茶髪の子のおっぱいの上にあり、左手は水色髪の子のおっぱいの上に乗っていた。


「うおお!?」


 手をどかそうと、もがく!

 が、どちらに体重をかけていいのかわからず交互に揉んでしまう。


——ぱふっむにっ、ぱふっむにっ、ぱふっむにっ


「あんっ……」

「んふっ……」


 焦れば焦るほど、おっぱいを揉みしだいてしまう。


——ぱふっむにっ、ぱふっむにっ、ぱふっむにっ


 ふう。

 やっと、手をどかすことができた。


《6回ずつ、ダブルモミモミを確認しました。

 すばやさを6レベルアップと、防御力を6レベルアップします》


 俺の体が光り、レベルアップが適用される。


 二つのステータスがレベルアップしただと!?

 だが、これで!


「二人とも悪いが自分達で逃げてくれ!

 俺はスライムを倒してくる!」


 今ならできる!


「悪いスライム! 今日が貴様の命日だ!」

「なにをおおおう!?」

「すばやさレベルアップ奥義、スーパー足!」


 すばやく水面を走る!


「ケッケッケ!

 この悪くな……悪いおっきなスライムパンチで叩き潰してやる!」


——ばきいっ!


 スライムが鞭状に伸ばした体で俺を叩くが、効かないさ!


「防御力レベルアップ中だ!

 お前の悪いおっきなスライムパンチは効かない!」


 よし! ここまで接近すれば俺のパンチはヤツの顔に届く!


「喰らえ!

 これが俺の——おっきなスライムパンチ!」


——ボコォッ!!


 俺のパンチでスライムの顔面がへこむ。


「こ、この悪いおっきなスライム様がッ!?

 たかが人間のスライムパンチごときに……バカなぁっ!!」


——ドバーン!


 次の瞬間、悪いおっきなスライムは脳みそ以外が粉々に弾け飛んで死んだ。



 ◆ ◆ ◆



「ぐへへ、Fランクのくせにやるじゃねえか」


 スライムがいなくなり、脳みそが浮かぶプールで水泳の授業は再開された。


「オパールくん、またしてもありがとうっす!」

「ありがとう」

「二人とも無事で良かった」

「あたい、クラスのみんなに言うっす!

 オパールくんは悪くないオパールくんだって伝えるっす!」

「わらわも」

「ふたりとも、同じクラスだったのか! 偶然だな!」

「偶然じゃないっすよ!

 クラス単位で授業しているんだから、このプールにいる全員同じクラスっすよ!」

「なにい!?

 全員ということは!?

 まさかあの悪いおっきなスライムも同じクラス……?」


 いや自分で言っておいて何だが、さすがにあのスライムは違うだろう。


「はあ、オパールくん全然クラスのみんなのこと覚えていないんすか……」

「えっと、こいつの名前だけわかるぞ。ノーキンだ」


 悲しいことに、エレインたちが見当たらない。

 近くにいる男のこいつしか名前がわからない。


「あたいの名前は、アキっす」


 茶髪で快活そうな、スレンダーの割に結構な物の持ち主。

 アキっていうのか。


「わらわはアイス」


 水色髪で全体的にもっちりしている子はアイス。

 この子は重量感すごかったな。

 あと『わらわ』って癖が強すぎだろ。


「俺様はノーキン」


 いかつい体型でいかにも脳筋そうな、男子生徒。

 弾ける若さと弾けた水着のノーキン。

 って、おまえは知っているわ!


「あたしはエレイン」


 このピンク髪の子はエレイン。幼馴染だ。

 いや、自然に会話に混ざるな!

 いつの間に戻ってきたんだ!?


「あーしはレモン」


 金髪の子はレモン。スタイルがいいギャルだ。


「わたしはルーコ……」


 このエメラルド色の長い髪の毛で、ちょっと背の低い子は、オカルト部のルーコ。

 実はこのプールの授業中、泳ぎもせずにずっとプールサイドをうろうろしていた。

 まったく存在感がなかったけどな。


「俺はオパール。悪いオパールじゃないよ」


 この流れで俺も自分の名前を名乗った。

 ちょっとウケ狙いでモンスターたちの真似をしてみる。


「…………」


 ノーリアクション、か。今のギャグ、そんなに寒かったか?

 プールサイドは滑って危険だな。


「寒っ」


 なんだかんだで、俺の周りに人が集まり、クラスメイトに知り合いも増えてきたな。

 これから始まるみんなとの、俺の楽しい学園生活が始まる予感がしてきたぜ!


「エレインお姉様、寒いから向こうに行くっす!」

「レモンお姉様も、行きましょう?」

「わたしも行くわ……」


 女の子たちは俺のそばから去っていった。

 あれ? これから始まるみんなとの、楽しい学園生活は……?


——ぽんっ


 肩を叩かれ振り向く。


「なあ、Fランク!」


 ノーキン?


「女のおっぱい揉んでいるてめえは許せねえ。

 だが……」


 おまえだけは、残ってくれていたのか。


「俺様も行くぜ! あばよ!」


 あれれ?

 俺の、みんなとの楽しい学園生活は……?

次回、体育用具の倉庫で……?

お楽しもみに!

————

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