52. 元凶おっぱいとの闘い
異空間と化した体育館。
校長の撮影した盗撮コレクションが、空間に投影されている異様な光景。
メガ・おっぱいに弾かれた俺は、体育館の床に倒れていた。
「そろそろ、諦めたらどうかね?」
メガ・おっぱいの谷間に挟まれた校長が、ニヤニヤと俺に降参を迫ってくる。
このまま俺が負けて学園を去ったら、校長の盗撮を止める術がなくなってしまうだろう。
みんなの笑顔が思い浮かぶ。
エレイン、レモン、ルーコ、スミレ……。
俺、退学になりたくないよ。みんなと毎日会いたい。
みんなの声が思い出される。
またみんなとくだらない会話をしたいよ。
みんなのおっぱいの感触が思い出される。
またみんなのおっぱいを——って、それはないだろ!
…………いや、あるのか?
またみんなのおっぱいを触りたい?
「どうしたんじゃ、黙り込んで?
やっと諦めたのか?」
そうか。
俺はおっぱいが苦手だ。
でも、それ以上に、あの子たちのことが好きだ。
これが恋愛感情なのかはわからないけど、みんなのことは大切に思う。
あの子たちのことが大好きだから、だから……あの子たちのおっぱいも好きだ!
足に力を入れ、なんとか立ち上がる。
「校長、あんたの言うとおりだよ」
「おお、やっとわかってくれたか!」
「ポジティブに勝つのはネガティブではなく、さらなるポジティブだってことがな!!」
『おっぱい大好き』と言うポジティブな思いを力に変えていた校長。
それに対し『それならば、俺はおっぱいが苦手というネガティブな想いでおまえを倒す』と、宣言した俺。
だが、俺はその宣言を撤回する!
「ほう?」
「校長、あんたが挟まれている巨大なおっぱいでは、手で揉むこともままないんだろ?」
「たしかに大きすぎて、抱きつくことはできても手で揉むことはできん。
だがそれがどうしたというのじゃ?」
「だが、これならどうだ?」
俺はタテロルから預かっていた小瓶の中身をひと舐めした。
「これが俺の、本気で真剣なマジモードだ! ……ですわ!」
「な、なにい!?
オパールくんが、おっぱいの大きな令嬢になったじゃと!」
「さあ、わたくしのおっぱいを揉みたければ、その巨大メガおっぱいの谷間から出てくるのですわよ!」
「ぐぬぬ、おのれ……ワシの手が、おっぱいを求めている……」
「パンがないなら、自分がおっぱいになればいいじゃない」
「ぐわあー!」
そうだ、諦めるな俺!
あのノーキンだって、俺の機転を認めてくれていたじゃないか!
これはオークと戦った時の応用。
相手が女の子を狙うなら、自分が女の子になればいいじゃない!
これが、レベルの数値に現れない、俺のおっぱいの戦いの経験値だ!
「ワシゃぁ……ワシゃぁもう、辛抱たまらん!」
「いまだ!」
「ひゃおうっ!? 背中におっぱいが!?」
ついに、校長はメガ・おっぱいの谷間から飛び出してきた。
震える手で俺のおっぱいをわしづかみにしようとしたところを華麗に回避!
そのまま回り込み、校長の背中に俺のおっぱいを押し当てる。
以前、ルーコにこれをやられたことがある。
ルーコは無意識だったが。
そのとき、俺は背中の感触に意識が集中して一瞬動くことができなかった。
そう、揉むだけがおっぱいの経験じゃないんだ!
——ぺろり。
「おひょっ!? なにこれ? なにこれ?」
タテロルの液体を舐めた舌で、そのまま校長の首筋を舐める。
「あんたも令嬢になるんだよ!」
「なに!? ワシが令嬢に!? ワシが……ワシくしが、令嬢になるんじゃわ〜!」
さすが校長。
ひときわゴージャスな感じの令嬢に変化した。
あとは、俺のターンだ!
——もみょす!
なるほど、校長はもっちり系おっぱいか。
って、いろんなおっぱいを揉みすぎてジャンル分けできるようになってしまった。
これも数値に表れない戦いの経験値か!?
——もみょすもみょす!
「ひい、やめてくださいまし、オパールお嬢様……」
「わたくしは、オパールじゃなくてオパーイちゃんですわ」
エレインに名付けてもらった、俺の女体化時の名前を名乗る。
「オパーイちゃん、やめてくださいましですじゃわ〜!」
だがやめぬ!
——もみょすもみょす!
「わかりまして、校長? これが揉まれる側ですわ!」
「素敵ですじゃわぁ」
あれ?
そうだ、俺のモミモミには癒し効果があるんだった。
懲らしめることにならないんじゃないか、これ?
「ワシくし、もっと欲しいですじゃわ!
もっと、もっとですじゃわぁ」
——もみょすもみょす!
なにっ!?
俺の手の上から自分の手を添えて、強制的に揉ませているだと!?
背筋に悪寒が走る。な、何を考えているんだ!?
「ちょ、もうやめるんですわ!」
「これって、ワシくしが自分でも揉んでいることになるのでじゃわ?」
——もみょすもみょす!
ひいっ!?
校長がおっぱいから手を離させてくれない!
「オパーイちゃんはおっぱいが苦手なんじゃわ?
このままワシくしのおっぱいから手が離せないとしたら……
どうなってしまうじゃわ?」
校長令嬢がニヤリと不敵な笑みを向ける。
くそがあああ!
『じゃわ』って語尾なんだよ! 令嬢でもなんでもねえ!
「は……は、な、せぇ……で、す、わぁ!」
「離しませんじゃわ!」
——もみょすもみょす! もみょすもみょす! もみょすもみょす!
くっ……おっぱいを揉まされすぎて、意識が朦朧としてきた。
そうだ、以前にも俺は強制的におっぱいを揉まされたことがあった。
雪山でスミレが俺の手を使って自らのおっぱいを揉んだんだ。
今回は2回目だから、前より少しは冷静に対処できる。
揉まないように反発するのではなく、指の力を抜けばいいんだ。
——もみょすもみょす!
指の力を抜いたところで、根本的な解決にはならない。
俺の手を使った校長のモミモミは続く。
以前の俺だったら、すでに気を失っていたかもしれない。
だが、今の俺は違う。
パーティのみんなで防具屋に行った経験。
あのときは、6人くらいのおっぱいを順番に揉まされ続けたんだっけ。
それに比べれば、このくらい我慢できる!
みんな、ありがとう!
「ま……負けませんわ!」
「ぐっ……オパーイちゃんのどこに、まだこんな力が……!?」
俺も校長も、すでに腰がガクガクだった。
——もみょすもみょす! もみょすもみょす! もみょすもみょす!
俺の握力はすでに限界を越え、無くなっていた。
しかし校長の握力は続いており、俺の指を強制的に動かす。
そうだ、タテロルが言っていた。
令嬢化は、見た目は令嬢となるがステータスは元のままだ。
レベル8の俺が、レベル40の校長に勝てるわけがなかったのだ。
冷静に考えると、それ以前に今までがおかしかった。
おっぱい揉んだら解決するなんて、都合が良すぎたんだ……!
——もみょすもみょす! もみょすもみょす!
・
・
・
——もみょすもみょす! もみょすもみょす! もみょすもみょす!
・
・
・
——もみょすもみょす! もみょすもみょす! もみょすもみょす!
・
・
もう、どれだけ揉み続けただろうか。
延々と揉み続け、時間の感覚もわからなくなる。
「オパーイちゃん? ふふ、とうとう喋らなくなりましたじゃわ」
苦手なおっぱいを揉み続けて、意識が、遠のいていく。
みんなに、おっぱいが苦手だって伝えていなかったな……。
レモンが気づかせてくれたのに、ずっと先送りにしていた。
このまま退学になったら、伝える機会がなくなってしまうかもしれない。
——もみょすもみょす!
ごめん、エレイン。
あいつがきみを迎えにくるまでに強くなりたくて、この学園に入ったけど、もう無理かもしれない。
ごめん、みんな。
残念、俺の学園生活は、ここで終わってしまっ——
「オパール!」
「オパっち!」
「オパール……!」
「オパールくん!」
みんなの声が聞こえる。
エレイン、レモン、ルーコ、スミレ。
「はっ!? 幻聴じゃない!」
重たくなっていた瞼を無理やり見開くと、体育館の入り口にみんなの姿が見えた!
「みんな、どうしてここに!?」
「オパールこそ、な、な、何しているの!?」
——ごわす、ごわす!
えっ!? なんだこの触感!?
俺は髭の男性のおっぱいを揉んでいた。
こ、校長!?
元に戻っているだと!?
そうだった、タテロルの令嬢化は30分で元に戻るんだった!
「オパっち、やっぱり相手が男でも、おっぱいならなんでもよかったんだ……」
「ち、ちがう! これは校長が無理やりに揉ませたんだ!」
「意味がわからないわ……」
「校長! なんとか言ってくれよ!」
「揉み揉み……ふひゅ〜」
揉まされ続けた俺もだが、30分間おっぱいを揉まれ続けた校長もすでに意識が朦朧としていたのだ。
《ぴー! 108回、もみもみを確認しました。
人心掌握力を108レベルアップします》
「やっぱり揉んでるじゃん! しかも108って、めっちゃたくさん!」
「ず、ずるい!」
「ええーっ!?」
「ハッ!? ワシはいったい……?」
「校長! 気がついたか?」
「おおっ!?
ワシの空間におっぱいちゃんがたくさんいる!? おっぱい揉ませろ〜い!」
「させるかっ!」
——ドンッ
寝ぼけていた校長は、俺ごときのタックルでいとも簡単に倒れた。
「校長、今の言動は録画しました。
女子生徒に向かって『おっぱい揉ませろ』というシーンをね」
ハスリア先生は片手で録画用クリスタルを掲げて見せる。
「ハッ!? ワシはいったい……?
ハスリア先生ッ!? なぜここに!」
「ここへの道は彼が——オパールが切り開いてくれました」
「俺が??」
「具体的には、校長室のドアが開いていたので、気づいたあの子たちが不審に思い部屋に入ったのです」
エレインたちが頷いている。
道を切り開いたというより、ただのドア閉め忘れだった。
「生徒へのセクハラ発言、およびセクハラ行為の未遂。
さらには、数々の盗撮の証拠。
言い逃れはできませんよマガサス校長先生」
「校長、あんたの唯一の失敗は……俺が校長室のドアを閉め忘れたことだ!」
「ドア閉め忘れって、それ、ワシの失態じゃなくない!?」
「それはともかく、盗撮やセクハラはもはや関係ないとは言わせない!」
「ぐぬぬ……だが、ここでワシが倒れようとも、この世に学園がある限り、すぐに次の校長が現れるじゃろう」
「そりゃそうだろ!」
「ワシの夢も……ここまでか」
◆ ◆ ◆
こうして、校長は連行されていった。
あとは法に裁かれることだろう。
そして俺たちは日常に戻る。
そうそう、校長、俺は一つだけあんたに感謝しているんだぜ?
エレイン、レモン、ルーコ、スミレ、ハスリア先生やアホメットたち……。
あんたの生み出した『ハズレスキル』のおかげで、俺は最高の仲間たちと出会うことができた。
そう、そのハズレスキルの名は——
『おっぱい揉んだらレベルアップ』だ!
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次回、最終回! おっぱい!
お楽しもみに!
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