27. おっぱいナレーション
薄暗い資料室にて、俺、ハスリア先生、スミレの3人で秘密の会議を進めている。
「さて、次にわたしがここの資料で記録を調べたところ、
ハズレスキルの歴史がわかった」
先生は資料室の後ろの棚をちらりと見る。
「オパールくんの『おっぱい揉んだらレベルアップ』は、
24年前からハズレスキル枠として登場した。
それ以前の16年間は、別のハズレスキルだ」
「別の……ってどんな?」
「本筋には関係ないと思うが、『自分の衣類を一瞬で脱衣できる』スキルだ。
これが4年おきに付与されていた」
つ、使えねえ! そんなん笑うわ!
俺のスキルよりハズレじゃね?
「風呂に入るときにちょっと便利なくらいしか、使い道ないですね」
「ただ、このスキルは自分に対する効果なので、
周囲から敬遠されることもなく無事に全員卒業しているな」
あ、そっか。
スキル『おっぱい揉んだらレベルアップ』は、『揉まれる相手』という嫌な気分になる被害者が存在して成立するスキルだからな……。
俺に限って言えば、揉む方も嫌なのだけど。
「さらにその前の10年間も、別のハズレスキルだった。
このあたりは資料が古すぎてはっきりしないのだが、
『飴玉がおいしくなる』みたいなことが書いてあったな」
「どういう意味があるんでしょう」
「それは、もっと調査を進めないとわからない」
うーん、なんだか集中力が切れてきたような?
気がつけば、先生のおっぱいの感触がもうほとんど手に残っていない。
「他のハズレスキルとの共通点などが分かれば調査が進みそうですね」
「スミレの言う通りだな。
そのためには、わたしたちがもっと協力する必要が出てくるだろう。
それから——」
スミレのもでかいが先生にはやっぱり敵わないな。
おっと、目の前で話す二人を見ているうちに、話が難しくなって来て関係ないことを考え始めてしまった。
でもスミレだけじゃないな。
クラスの女の子の誰を連れて来ても、先生には敵わないだろう。
先生がもっと自重してくれれば、俺的には助かるんだけど。
「——ということなんだけど、ってオパール?
きみ、話を聞いていたか?」
「あ」
やっべ、ふたりのおっぱい見ていました。
「で、きみの方はどうなんだ?
あれから新たに何かわかったことはあるのか?」
「あー、えっとなんだっけ」
慌ててスミレに助けを求めて視線を送る。
が、スミレには伝わらない。
「オパールくん、ビキニアーマー消えている」
スミレに指摘され、いつの間にかいつもの服装に戻っていることに気がつく。
「どうした、また知力が足りなくなったのか?」
知力……スミレ——そうだ!
「先生、他人のレベルを上げる方法がありました」
「なんだって?
そんなことまでできたら、もはやFランクスキルではないな。
どうやるんだ?」
俺は、林間学校でのことを思い出す。
「おっぱいで顔を挟んで、そのまま両手をクロスさせておっぱいを揉みます」
「ちょっと何を言っているのかわからない」
「こう、こんな感じ」
俺は空中でそれっぽく実践してみせた。
「ま、ますますわからない……」
先生はわかってくれなかったが、スミレはあのときのことを思い出したのか、顔を赤くしている。
「スミレ、先生に伝えたい。協力してくれ」
「協力っておっぱい揉ませろってこと?
い、嫌だけど……」
そ、そりゃそうだ。
最近はおっぱい揉むことへの抵抗が薄れすぎていた。
思い出せ、揉まれる相手は『被害者』だということを。
「生徒のためだからな。
仕方がない、わたしでよければ協力しよう。
仕方なく、な!」
「えっ」
スミレが小さく驚きの声を上げる。
驚くのも無理はないが、実は毎回資料室では先生に協力してもらっているんだ。
「もちろん、ここでのことは3人の秘密だからな。
で、どうすればいい?」
「じゃあ、先生は俺の顔をおっぱいで挟んでください」
「こ、こうか?」
——ぱふっ
ぐぬぬ、顔にやわらかい圧力がかかりやがる。
「ぷはっ、で、俺が腕をクロスさせます」
俺は先生に抱きつくように腕を背中に回し、腕をクロスさせた。
「ま、待て、お前の顔を挟んだままでは背中の方見えないのだが?」
「モゴモゴ!」
しまった、先生のおっぱいが大きすぎて顔を挟まれたままでは説明ができない!
「ぷはっ! アナウン子!
状況を説明できるか?」
《ぴー! それでしたら……!
今まで出番がありませんでしたけど、ナレーション担当がいます!
交代しますね》
《ピンポンパンポーン!
現在の状況は、わたくしのナレーションでお送りさせていただきます》
今までのアナウン子とは別の女性の声が聞こえてきた。
「ちょっとまて、オパール!
きみ、このスキルの音声と会話できるの!?」
「モゴモゴ」
《オパールは、何かを言いかけたが声にならなかった。
それは先生のおっぱいに顔を挟まれていたからである》
さっそくナレーションが入った。これは助かるかも?
「きゃっ!?
ちょ、きみ、急に顔をすりすりするな!」
《オパールはおっぱいに顔を挟まれたまま、こくこくと頷いた。
それは『会話ができるのか』という問いに対する、肯定だろう》
「あ、ああ、顔をこすり付けたんじゃなくて、頷いたのか」
こ、これはまじで助かる!
下手な誤解を受けなくて済む!
「で、ここからどうするんだ?」
ナレーター、説明してくれ!
「…………」
《…………そして長い、沈黙が訪れた》
違う違う!
俺の代わりにやり方の説明を……ってそうか!
ナレーターだから現在の状況をナレーションをするだけで、俺の代わりにしゃべってくれるわけじゃないのか!
「わ、わ、わたしもやっぱり協力する」
——もにゅ
俺の視界からは見えないが、手のひらに、スミレのおっぱいの感触が!?
《スミレはハスリアの背後に立つと、オパールのクロスさせている腕を誘導した。
右手を自身の右おっぱいへ、左手を自身の左おっぱいへと》
「なるほど、このナレーションがあれば、見えない後ろの様子も伝わってくるな」
俺の手にはおっぱいの感触が伝わっているけどな。
「ハスリア先生、そのままオパールくんの顔をリズミカルに挟んでください」
「こ、こうか?」
——たぷん、たぷん、たぷん
先生が俺の顔に対して左右からおっぱいを押し付けたり、緩めたりし始める。
よし、うまくタイミングを合わせて……
——もにゅ、もにゅ、もにゅ
《ハスリアがオパールの顔をおっぱいで締め付けると同時に、
スミレのおっぱいが揉みしだかれていく》
「はぁっ、ど、どうだ?
もう少し続けてみるか?」
——たぷん、たぷん、たぷん
《ハスリアの吐息が艶を帯びていく。
もう少し続けるかと訊きつつも、その顔は続けて欲しい欲求を隠せずにいた》
「ちょ、なにこのナレーション!?
余計なこと言い始めたぞ!?」
——もにゅ、もにゅ、もにゅ
「くっ、ふぅ、あっ」
《それはスミレも同様だった。
異性であるオパールにおっぱいを触れられる悦びに身を任せる》
「えっ!? これは、その!?
ナレーション、止められないの?」
「モゴモゴ」
止め方なんて知らんわ!
《そんなふたりの想いを余所に、
オパールはスキル説明のために淡々とおっぱいを揉んでいるのだった》
「そ、そろそろ終わりにしようか? なあスミレ?」
「で……ですね。先生」
「オパール、やめていいぞ?」
やっとおっぱいから解放される。
「ぷはっ」
《ぴー! 12回、かおぱふモード、クロスモードでモミモミを確認しました。
対象の知力を18レベルアップします》
「ふぅ、ナレーションありがとう。もういいぞ」
《ご利用ありがとうございました。ピンポンパンポーン》
なるほど、普通に止めるように話しかければいいだけか。
おっぱいに顔を挟まれていたら話しかけられないけど。
「な、なんだ、どうなったんだ? オパール、説明を頼む」
「今ので、スミレの知力が18レベル上がった。
先生のおっぱいを揉んで俺がレベルアップする前に、
スミレのおっぱいを伝ってそれを流し込んだみたいな感じかな?」
「たしかに、今のわたしは妙に頭がスッキリしている。
この資料室に入ってからの会話が、クリアに整理できている感じだ」
「そ、そんなことができるのか……だが」
先生は少し困った顔をする。
「いくら文献に書かれていたとしても、使えないな。
こんなこと戦闘中にやっている時間はない。
それに、日常でも起こり得ないシチュエーションだし、
普通に協力者が現れるとは思えない」
俺も自分が体験していなければ、あり得ないと言っていた側だろう。
付け加えれば、文献に書かれていたんじゃなくて俺が考えた技なんだよな……アナウン子も驚いていたし。
「使えないなら効果が高くても、やっぱりこれはFランクスキルか」
そうなりますよねえ。とほほ。
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次回、トラップダンジョンで罠にはまる!?
お楽しもみに!
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