2. おっぱいギャル
学園生活の初日が始まる。
「おはよう!」
次々に教室に入ってくるモブキャラども。
俺のSランクスキルで驚くがよい!
……となるはずだったのに。
「ちょっと、ありえないんだけどー」
俺の席の机に、ギャルが腰掛けた。
金髪に染めているのか、髪の根本が自毛と思われるちょっと濃い色になっている。
「ありえないのは、おまえだ。人の机に座るな!」
スカートは短く、制服のシャツを外しているのか胸の谷間が見える。
そんなものを見せるな!
「ね、きみのスキルってさ、『おっぱい揉んだらレベルアップ』って本当?」
「お、『おっぱい揉んだらレベルアップ』で悪いか!?」
少しイラついて声を荒げてしまった。
「な、なんだそのスキル!」
「聞いたことねえでやんす!」
「やだ、おっぱいって……」
ざわつく教室。
しまった。周囲に聞かれてしまったか?
「ぐへへ……オレ様は見たぞ!
昨日そいつが道端でカワイコちゃんのおっぱいを揉んでいた!」
昨日の脳筋男子! 同じクラスだったのか!
「うわ、ドン引き……やっぱスキルにかこつけて、そんなことする気なんだ」
「違う、俺だって好きでこのスキルにしたわけじゃない!」
「きみさ、あーしらのこと、なんだと思ってんの?
もしかして女の子をモノ扱いしてるとか?
きみには近寄らないでおこっと」
ギャルは机から降りると他の場所へ移動していった。
「私も近寄るのやめるわ」
「ぼくたちも変質者の仲間だと思われたくないから……」
「しかも、Fランクスキルなんだって」
「最悪! 付き合うメリットないじゃん」
一気に俺のまわりから人がいなくなる。
学園生活、ぼっち確定か?
エレイン、早く登校してきてくれ! そして誤解を解いてくれー!
◆ ◆ ◆
「ゴブリンの森で課外授業とか、楽しみだね」
たくさんの木々の中、エレインは無邪気に笑っている。
「エレインはいいかもしれないけど、俺は課外授業とか面倒臭いぞ」
「聞いた話だと、この森ってモンスターが出るらしいよ」
「どうせザコモンスターだろ?」
「それが、ゴブリンらしいよ」
「なんだと!?
まさかゴブリンの森にゴブリンが出るっていうのか?」
ゴブリンか。やつはスライム以上の強敵だ。
出くわさないように気をつけないと。
「かったるい〜。
あーし、ちょっと向こうでサボるっしょ!」
今朝のギャルが、友達にそう告げると、ひとりで木々の奥へ向かっていった。
まずいぞあの子!
ここにはゴブリンが出るかもしれないのに危険だ!
「エレイン、ちょっと様子を見てくる。ここにいてくれ」
「えっ? 危ないよ!」
「ここにいてくれ」
エレインまで危険に合わせるわけにいかないからな。
◆ ◆ ◆
「おーい、机に座る人間は、どこだー?
ここはゴブリンの森ー?」
俺はギャルの名前を知らなかったので、今朝見かけた特徴で呼んだ。
ついでにゴブリンの森にはゴブリンが出ることも伝えないとな。
ちょっと言葉としておかしくなった気がしないこともないが、今はあの子を探す方が先だ。
む? あの草むらに揺れる金髪は……
「机に座る人間! こんなところにいたのか」
「きゃ!?
ちょ、あーしは『机に座る人間』なんて名前じゃないっての!」
「あーし! こんなところにいたか」
「あーしの名前は『あーし』じゃないっての!」
「じゃあなんだよ」
「あーしの名前はレモン!」
「わかった、レモン。
何をしにみんなから離れた?
こんな茂みにかがみ込んでいたから、見つけるのに苦労したぞ」
「な、なんでもいいでしょ!
まさかきみストーカー?」
「ゴ、ゴブリンだ!!」
「え?
きみストーカーじゃなくてゴブリンなの?」
「おまえの後ろにゴブリンがいる!」
俺はレモンの後ろを指差した。
そこには緑色の体をして短い棍棒を持ったゴブリンがいる。
「ほーほっほ! わたしは悪いゴブリン!」
俺たちでは勝てない!
「走って逃げるぞ!」
「待って、ちゃんと履いてからじゃないと走れな……きゃあ!」
俺の方に倒れ込んできたレモンの体を支えてやる。
む、なんだこの左手に伝わる柔らかくて重量感のある物体は?
——ぽよ、ぽよ
程よい弾力だな?
——ぽよ、ぽよ、ぽよ
まさか、これは!
「そこ、あーしのおっぱい!」
「す、すまん! わざとじゃないんだ!」
次の瞬間、謎の女性アナウンスが聞こえ、俺の体が発光する。
《ぴー! 5回モミモミを確認しました。体力を5レベルアップします》
ゴブリンは俺たちに近づくと、手にしていた棍棒を地面に置いた。
「ほっほっほ! あなたたち、覚悟はいいですか?
わたしのスライムパンチを喰らいなさい!」
——バキイッ!!
「ぐわああ!」
む?
俺はゴブリンのスライムパンチを喰らったはずだが、体力に余裕があるぞ!?
「きゃああ! だ、大丈夫?」
「ああ、肋骨が20本ほどやられただけだ。問題ない」
今のは体力がレベルアップしていなければ、危なかったかもしれない。
「わ、私のスライムパンチが効かないですって?」
ゴブリンは自分の拳と俺を交互に見つめて目を白黒させている。
いまだ!
「スライムパンチってのは、こうやるんだよ!」
俺は地面に置いてあったゴブリンの棍棒を拾うと——
——ボゴオッ!
それをゴブリンの頭に叩きつけた!
ゴブリンの顔面がぐにゃりとへこむ!
「この悪いゴブリン様が、たかが人間ごときに……ぎゃああっ!!」
——ボガーン!
ゴブリンは脳みそ以外が粉々に弾け飛んで死んだ。
「す、すごい……ゴブリンを倒しちゃうなんて……!
なんなの? この、あーしの気持ちは……?」
◆ ◆ ◆
「あ、オパールやっと戻ってきた!」
「エレイン待たせたか?」
「なにしてたの?」
「べ、べつに」
うーん、レモンのおっぱいを揉んできたとは言いにくいな。
レモン、か。
あのギャルには今後も注意が必要かもな。
それにしても、このハズレスキル……まだまだ使い道がありそうだが。
やっぱり、俺は女の子に悲しまれないようにしたい。
その方法を模索しなくては。
次回、オカルト部で何かが起きる!
お楽しもみに!
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