第479話 寂しい
あ、アトガキアリデス……楽しんできてください……
「うぅ……」
地面に突っ伏して悔しそうな表情をしている颯太を僕はぼうっと眺める。
……ゲームで颯太が一喜一憂してるの何気に僕初めて見たかもしれないな。そんなにがちゃ……?って楽しいのかな。でもそれでテスト頑張らないのは困るなぁ……
僕はしばらく考え込んだ後にふといいことを思いついて口を開く。
「……颯太、それ100点とったら切るの控えるよ。」
ほとんど思いつきで言った言葉に颯太は急に起き上がって僕の肩を揺さぶってくる。
「お前コノヤロウ何切るつもりでいるんだよ……!」
怒ったようにそう言う颯太の言葉に涼君もはぁとため息をついて僕を非難するような目で見つめてくる。いい考えだと思っていたものによって怒られてしまった僕はムッとしてだんまりを貫いているとすず君が口を開く。
「……涼も颯太もユウの事馬鹿を見るみたいな目で見つめてるけどここにいる中だと私以外誰も言えないと思うよ。」
あまりに図星すぎるワードに僕らは顔を見合わせ黙り込む。十数秒経っても誰も話し始めないことにすず君は痺れを切らしたのか何故か声に出して僕を非難することのなかった涼君の方を見て
「……涼、返事は?」
ととんでもなく理不尽な返事を求める。
……可哀想だなぁ。涼君は颯太みたいに僕に何か言ったわけじゃないのに。まぁ、僕が怒られなかっただけマシだけどね。
「……俺だったのか……颯太が言い始めたのに……颯太じゃなくて俺……」
「付き合ってるし圧倒的に涼の方がやってる期間長いから仕方ないも思う。」
「それは……まぁそうなんだが……」
複雑そうな顔をしつつも付き合っているという言葉が出たことに喜んでいるようで涼君は少し微笑んでいる。
……仲良いなぁ。2人は………会ってすぐの頃は、3人だったのにな……なんて思っちゃう僕は最低なのかな……
ぐるぐるとまた嫌な考えが回り始めた頃また肩に違和感を感じ心做しか肉が裂けるような感覚を覚える。
「……あ。」
これ……また肩傷開いたかな……
僕のふと漏れてしまった声になんだかんだ僕の手を握ってくれていた涼君が不思議そうに
「……?ユウどうかしたのか?」
と聞いてくる。
……口で言いたくない……な……
何となく気が進まなかった僕は理由を口に出すことなく涼君から離れる。
「……ちょっと離れるね。」
「それは別にいいが……」
戸惑う涼君を横目に僕はシャツのボタンを外してみるとやっぱり前の時と同じように傷が深く開いていてかなりの血が出ている。
「……やっぱり…………」
そう口には出しつつも特に気にならなかった僕がもう一度服を着直そうとボタンに手をかけると颯太にガシッと掴まれて
「涼し気な顔で言ってるけどお前それ結構やばいからな???」
と何故か圧をかけられる。
……なんで怒られてるんだろう。まぁ、そんなに気にするほどのものじゃないか……
特に返事もせず僕がぼうっとしていると瞬間移動で飛んできたのか怜斗君が急に現れて僕を見るなり
「うわぁ酷い傷ぅ……」
と声を漏らす。
「……!?びっくりした。いっつも急に出てくるよね、怜斗って。」
すず君は少し驚いたようで反射なのか涼君の手を握っている。そんなすず君の手元をみて怜斗君はニヤニヤしながらも
「あっはは!今日はすぐ帰るけどねぇ!ねー涼クミのお手伝い行ってきていーい?」
とどうやら許可を取りに来たようで涼君にお願いする。
……そういえばクミさん、今日は夜仕事あるって言ってたな。結局ほとんど体調も見てもらってないし……悪いことしたねぇ……
ぼんやりとしている間にも涼君と怜斗君は会話を続ける。
「駄目だ。」
「なんでぇ?もしかしてぇ……俺が居なくて寂しいとかぁ〜?」
「…………死ね。」
2人の仲睦まじい会話に颯太は目をハートにさせながら
「……誤魔化した。さすがツンデレ。尊い。」
と絶好調な今らしい発言をする。その言葉で余計に怜斗君のテンションが上がってしまったようで怜斗君はぐしゃぐしゃと涼君の頭を撫でて
「んふ、そんなに俺のこと大好きなんだぁ!可愛い〜!なでなで嬉しい?」
とニヤニヤする。涼君は意地になってきたのかムッとした顔で
「嬉しくない。はっ倒すぞ?」
と言い返す。
「やれるもんならしてみればぁ?」
怜斗君に挑発された涼君は戸惑ったような顔をした後に絶対に痛くないであろうデコピンをすると目を逸らし黙り込む。
「…………」
……そういえば涼君力弱いんだったな。懐かしい……
僕は会ってすぐの頃の涼君を思い出しながら
「……相変わらず涼君は親しい人相手だとよわよわだねぇ……」
と微笑む。そこで何を思ったのかすず君は首を傾げて
「……ね。涼、それ私にもできるの?」
と聞く。
「彼女にしたくない。」
「即答……大事にされてるって分かったからいいけど。」
……本当に仲良いなぁ2人とも。寂しいなぁ。
「……何見せられてんだろ俺。帰ろっかな……」
「颯太も僕の気持ちわかってくれたみたいだね。ねぇ怜斗君、クミさん怒ってなかったかい?」
何となく怜斗君に話題を振ると怜斗君は苦笑いをしながら
「ん〜……呆れてはいたよぉ?まぁ俺ずっといた訳じゃないからわかんないけどぉ……」
と答えてくれる。
……また迷惑かけちゃったなぁ。はぁ……あ、僕も颯太がしてたのやったら楽しくなるかな……?うーん……でも……クミさんに心配かけちゃった僕がスマホゲームなんてしていいのかなぁ……未だに学校も休んでるのに……
頭の中にやりたい気持ちと他の人の目が気になる気持ちがぐるぐるぐるぐる回り始めた僕はしばらくの間悩み込むのだった。
……あのー……今日添い寝のはずじゃ……なんで怜斗と涼……
「……添い寝役は仕方ないから俺が引き受ける。怜斗が話あるみたいだぞ。」
「……雪ぃ、心当たりあるよねぇ?昨日颯太とちゃんと寝たぁ?」
……ネタ……
「おかしいなぁ?俺が颯太に聞いた話だといつの間にか居なくなってたって聞いたんだけどぉ?で、何時?」
………………3時……?
「本当はぁ???」
6時半……
「……涼、俺も今日付き添いしてもいーい?」
「……間違いなく狭いなそれ……まぁいいが……」
クソぉぉお……涼なら遅寝でもいけると思ってたのに……!
「……んふふふふふ。」
ひぇっ……
「……怜斗の怒りゲージがまずいな。雪も逃げたし締めとくか……」
「……そーだね!鬼ごっこしなきゃだし締めよ!みんなまたねぇ!」
「また明日に。」




