第476話 笑いもの
後書きありです!楽しんできてください!
「っ!ユウ……!」
ようやく帰ってきてくれたユウに俺は勢い余ってつい抱きしめてしまう。ユウはよろよろと俺を抱きとめながら
「うぅ……そうた……といれ……といれいかせて……ほんとにげんかい……ヴっ……」
と本当に限界を迎えているようで顔を真っ青にしている。
……これは誰かがなんか食わせたな。あ、あの顔絶対怜斗だ。後で怒っとこ……
「ご、ごめん。背中さすろっか?」
「…………………うん…」
俺の言葉にユウはかなり迷ったあと結局寂しさに負けたのかこくんと頷いてまた涙目になり始める。そんなユウを俺は手を引いてトイレに連れていく。
……母親だとでも思ってるのかなこいつ。でも……涼達の雰囲気だとめちゃくちゃ言い争った訳じゃなさそう……ってことは根本的な解決は出来てない……?んだよな。きっと。あ、そういえば……
俺はふと昔ユウにしてもらったことを思い出してトイレの扉を閉めて吐こうとするユウの顔を掴む。
「……ユウ。」
「……?な、に……?」
不思議そうな顔をしているユウの口に俺は初めて小屋に連れていかれた時と同じようにキスをしてみる。
「……これぐらい心配してた。心配かけた分病院ついてくるのとかご飯作るの手伝うとかやれよな。」
「……う、ん……ごめんね……ごめん……」
甘えん坊なユウにとってかなり効果てきめんだったようで緊張の糸が切れたのかガバッと俺に抱きついて泣き始める。
……気持ち悪くなくなった、のかな。本音を言わなさすぎてストレスなってたの……かも?ちょいちょい言ってたけどそれでもユウ的には抑えてたんだろうなぁ……すずや涼と話せるタイミングあったのに……それでも俺に泣きつくとか……
「……ほんっと可愛いやつ……」
俺のつい出てしまった独り言にユウは不思議そうな顔で首を傾げたあとお腹をさすり
「……?……あれ……気持ち悪いの無くなった……」
と呟く。
……気持ち悪いのやっぱなくなったか。て事はストレスだよなぁ……間違いなく。これを機に問いつめるか。
「よかったじゃん。で?お前俺に隠してることあるよな?」
「…………」
俺の問いかけにユウはバツが悪そうに目をそらす。
……怒られると思ってんのかな?ほんっと手間のかかる……ん、人の気配。すずか涼?それとも両方かも。バレないように開けてやろっと。
俺は左手でドアノブにゆっくりと手をかけながら空いた右手でユウの頭を撫でる。
「ユウ、怒んないから話して。」
俺の手に安心したのかユウは俺に抱きついてきて
「……僕……颯太達のこと友達って思えないんだ。信頼もしてない。だから……その……僕のことはもう気にとめなくても……」
と悲しそうに呟く。もちろん気にとめないなんてこと約束できるはずもなく俺が
「それは無理。」
と即答で断る。俺に抱きついたままではあるもののユウはまた苦しくなっているようで俺に抱きつく腕の力を強める。
「……っなん、で……」
「……気にとめたい……から?」
「……物好きだね。」
自嘲気味にそう笑うユウにおれは腹が立ってグイッと自分の方を向かせる。
「なんか悪い?お前が俺らをどう思おうが俺らがお前をどう扱うかは個人の勝手じゃん?優しくできないとかならともかく俺らの行動に疑問持つなよ……」
ユウは俺の言葉を聞いてぐしゃっと顔を歪める。そして苦しそうに笑いながら
「……だって、大丈夫だって、優しい人だって思って懐いたら毎回あとから虐められたんだ。笑いものにされて。お遊びだって言われて。そんな中でやっと心の底から大好きだって思えたのがサチだったのに戦争のせいで結局すぐに死んじゃって……知ってるよ、みんなはそんな事しないって。出来ないって。そんな簡単にまたみんなが消えることはないって。でも……でも、怖いんだ。生きていた時のように冗談と称して痛いことされるのが……裏切られてしまうのが。また1人……取り残されるのが……」
そう苦しげに話すユウの目には本当にそれが怖いようで涙を零し少し戻り始めていた顔色がまた悪くなり始めている。
……多分外にいる2人にも聞こえてるよな?ちょっとだけ開けてたし。よし。
ちょうどいいタイミングだと思った俺はガチャっと扉を開いて外にいた2人に聞くことにする。
「……そっか……らしいけど2人はどうすんの?」
「……強制お泊まり会開催だな。」
「そうだね。」
やっぱりいた2人はどこか怒ったようにユウを見ていてそれに気がついたユウは隠れるように俺を盾にする。
「……颯太、僕今日颯太と一緒がいい。」
弱々しくそう言ってくるユウを可哀想に思いつつも俺は何とか
「……ごめん、多分ホントの意味で救えるの俺じゃないから行ってきて。」
と返事をして行かせようとする。するとユウは急にマジの目になり
「……カップルの間に挟まる僕の気持ち、考えたことあるかい?」
と少し低めの声で言い出す。
……なるほど、確かにそれは気を使いまくるユウにとってはキツイかも。精神的に。
「…………ごめん、確かにそれはちょっと不憫かも。チューでもしとく?」
可哀想になった俺がそう言ってみるとどうやらユウの欲しい言葉じゃなかったようで恨みの籠った声で
「……舌入れてもいいかな?」
とアホなことを言い出す。
「恨み込めてやるつもりじゃん。絶対ダメ。」
流石に許容範囲を超えているお願いに俺が断ると涼は首を傾げて
「……颯太もこればいいんじゃないか?」
と提案してくる。
……あ、これなんで俺が言い出さなかったのか不思議に思ってるやつだ。言えるわけねーじゃん……俺唯一行ったの切った時だし……
涼の視線に俺はほんの少しだけ気まずく思いつつも
「……いーの?」
と聞き返す。すると涼ははははと乾いた笑い声をした後に
「別にいいと思うぞ。母さんに連絡した時4人って言ってたし。どうせいつもみたいにエスパーしたんだろ。」
とどこか諦めたように言ってくる。
んーどうしよ……桜や琴葉さんは料理できないわけじゃないし別に出前取るなり2人で外食行くなりで何とかなるとは思うけど……
俺が行くかどうか悩んでいるとユウが
「……颯太、怖い。行くのやだ……」
と行きたくないアピールをする。
……でもこいつのこと考えたら行った方がいい……よな。よし。
「……風呂一緒に入るって言ったら行く?」
俺が苦渋の決断でそう提案してみるとユウはめちゃくちゃ悩んだ後に
「………………ん。」
と返事をする。
「……みたいだからお邪魔させてもらうわ。後から行っていい?夜ご飯のこととか聞いとかなきゃだし準備もあるから。」
「……それなら私も荷物用意しないと。明日学校なのに何やってるんだろうな……」
「それに関しては考えるのやめないか?じゃあ先に俺達は帰る。準備が終わったら好きなタイミングで家に来てくれ。」
涼は淡々とそう言うとすずの手を引いて玄関から帰っていく。
……ま、とりあえず俺らも準備しないと。
心做しかまだゴネ気味のユウを連れて俺は準備と桜の説得に急ぐのだった。
「…………」
すっごい添い寝に不満のある顔だ……桜、恨むなら涼を恨んでね?
「……お菓子こっそり食べる作戦が……」
それで不機嫌だったんかい……あ、でも私ちょうど最近お菓子買い足したところだから寝る前お菓子食べれるよ?アイスもあるし。
「ならいいや。颯太にも怒られないし。」
よし、寝る前はお菓子パーティーだぁ!
「……よく怜斗に昨日散々怒られたのにそれ提案できるね。私がきっかけではあるけど。」
ははは、バレなきゃセーフよ!初日に来た自分を恨んで欲しいね!
「……まぁ、雪がいいならいっか。私はお菓子食べられるし。」
そーそー!細かいことは気にしない!それじゃあまた次回に!
「……また明日に。」




