スーパーな人に転生したけど、地球かと思ったらファンタジーな異世界に転移させられた
最期の記憶は思い出せない。
転生したと思ったら、カプセルに入れられていた。
保育器かな、と思っていたら小型の宇宙船だった、保育機能付きの。
これは例のパターンかなぁ?
そして射出。
さらば故郷の星よ!
さらば父母よ!
さらばその他諸々よ!
しばらく(4年くらい)すると青い惑星が見えてきた。
教育コンピュータいわく、僕はその星の人間よりずっと強いらしい。
やっぱりスーパーな人だったか。
陸地の形は既存もの。
目指せ日本! ……は無理かな?
着陸の衝撃に備えていたら、ちょうどその地点に穴が開いた。
「え?」
僕の乗る宇宙船は、その真っ黒な穴に吸い込まれるように落ちていった。
一拍遅れて、衝撃が宇宙船を襲う。
どうやら無事(?)、到着したようだ。
□
明らかに地球の植物相とは異なる森の中に宇宙船は不時着した。
教育コンピュータいわく、この森(大陸? 星?)には未知の素粒子が充満しているそうだ。
人体に悪影響がないか、いま調査中。
暇を持て余した僕は、心優しい老夫婦が迎えに来ないかな、などと考えていた。
ふと、宇宙船ののぞき窓に影が差す。
見上げるとそれは、ふたつの首を持つ巨大な……なんだ?
なんだか分からないが巨大な生物だった。
全長10メートルはありそうだ。
ギリギリ猿に似てるかもしれない。
「…………」
「…………」
僕とそいつは見つめ合った。
お互いに『なんだこいつは』と思った(たぶん)。
ツン。
猿が指で宇宙船を小突いた。
コロコロ。
球状の宇宙船はよく転がった。
コツン(指2本)。
コロコロコロ。
ゴツン(拳)。
コロコロコロコロ。
ドカン(蹴り)!
コロコロコロコロコロー!
猿、大喜び。
僕、大混乱。
「やめろぉー!」
猿は大はしゃぎで、やめてくれそうにない。
僕はコンピュータに宇宙船の扉を開けるよう頼んだ。
まだ分析が終わっていないのにと文句を言いつつも、コンピュータは素直に従ってくれた。
□
転がる宇宙船から這い出る。
猿の興味は宇宙船から僕に移ったようだ。
美味しそうな匂いでもしてるのかな?
猿のふたつの口から涎が垂れ始める。
僕は地面に落ちていた石ころを拾った。
硬そうな石だったが、握りしめると簡単に砕けた。
イケる。
僕は大地に立った。
猿が大口をあけて襲ってくる。
僕は全身全霊で迎え撃った。
襲ってきた右の頭は、僕のパンチで消し飛んだ。
残った左の頭は、混乱しているようだ。
僕は飛び蹴りを放った。
□
コンピュータ曰く、猿を斃した時、例の素粒子が大量に放出されたらしい。
そして、その素粒子を僕はかなりの量、吸収してしまったようだ。
それが良かったのか良くなかったのか。
僕は熱を出した。
一瞬だけ。
そしてなぜか体の中に、活力とでもいうべきものが漲ってくる。
もしかして:レベルアップ
みたいな?
なるほどなるほど、そっちのパターンでしたか。
つまり、タイトルを付けるなら。
『スーパーな人に転生したけど、地球かと思ったらファンタジーな異世界に転移させられた』
ってところか。
統一感ないな。
□
打ち上げたドローンが撮影したデータを参照したところ、この場所はどこまでも広がるジャングルの中心付近らしい。
ジャングルを抜け出すには、どの方向にも1000km以上進まなくてはならない。
僕はしばし、途方に暮れた。
まあ、宇宙船があるので衣食住に困ることはないだろうが、いつまでも人っ子一人いない場所で生活していたら、精神を病みそうだ。
人里があれば向かいたいとコンピュータに相談したら、ドローンを増産して飛ばすから、しばらく待つように言われた。
ドローンの部品になる石ころや、食べ物の材料になる葉っぱや木の実なんかを集めながら、襲いかかってくる魔物をついでに斃す。
魔物は肉が食べ物に、それ以外はドローンの素材になるのでお得だ。
ついでに僕のレベルも上がる。
齢よっつのスーパーな子供の、異世界サバイバル(難易度:低)が始まった。
タイトルを付けるならそう。
『スーパーな人に転生したけど、地球かと思ったらファンタジーな異世界に転移させられた。だけど僕はジャングルの王者になる!』
……混ぜすぎじゃね?