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短編集

無口のアイツ、気になったボク

作者: 桜橋あかね

……あれは、田舎の高校へ転入したあの日から始まった。


▪▪▪


「さて、今日から新しい生徒が入るぞ」

担任の天田先生に案内され、ボクは教室へ入る。


春川駿(はるかわ しゅん)と言います。よろしくお願いします」


市の進学高校から、父の転勤で地方高校へ転校になった。

……まぁ、あの高校は入ってみた割には合わなかったし、別に問題はないと思って転校した。ちょっと語弊はあるかも知れないけどね。


自分自身、特にコレ……みたいな特技とか無いけれど、直ぐにみんなと打ち解けた。


……そう、アイツは違った。


▪▪▪


その日の昼間。


「……あのさあ、角に座ってるあの子。誰とも話さないのかな」


男子群に、気になっていた女の子の事を聞いてみた。


「あー、松葉さんの事か。アイツも、1ヶ月前に転校してきたんだ」

一人が言った。


「でもな、あんまり話をしないんだ」


「へぇ……」


彼女の名前は『松葉枝織(まつばしおり)』と言うらしい。

同じ転校組だったんだ。


その後は話せなかったが、放課後……彼女を探ってみた。

……何でか知らないけど、彼女の事が気になるのだ。


歩いて15分程度にある、小さなゲームセンターに入っていく。


そのまま、『パネルダンサー』と言う、足元にあるパネルをリズムよく踏むゲームを始めた。


……上手い、上手すぎる。

あれ、難しいのをやると結構ヘトヘトになるんだよな。


「あ……」

ゲームを終えた彼女と目が合った。

顔を赤らめて、その場を離れようとする。


「ちょっと待って。ボクは松葉さんと話がしたい」


▪▪▪


彼女……松葉さんと一緒に、近くの喫茶店に入った。


「ごめんね、尾行して。お詫びと思ってくれるかな」

ジュースとケーキを奢る。


「………あ、あの。確か、転校生、だよね」

松葉さんは、小声でそう聞いた。


「うん、そうだよ」


「………あのね、私………人と話すの、苦手、なの……」


彼女は、自分の事を話してくれた。


前の学校の同級生の嫌がらせが原因で、転校を決めたこと。

人と話すのが、それから出来なくなってしまったこと。

唯一の楽しみが、ゲームセンターのゲームをすること。


「……そっか、よく話してくれたね」


また、顔を赤らめた。


「あのさ、一つ……提案なんだけどね」


▪▪▪


翌日。


「……う、緊張、する」

教室前、松葉さんは縮こまってしまう。


「大丈夫、大丈夫」


前日提案したのは、『一言、挨拶を自分からすること』。

他の同級生達も、松葉さんと話がしたいと感じて、そう提案をしてみた。

嫌がらせはしないだろうし、彼女が勇気を出して言ってみれば、良い方向へ向くんじゃないのかな。


「みんな、おはよう」

ボクが先に入って、挨拶をする。


「あのさ、みんな……」

みんなを引き付けてから、松葉さんを手で呼んだ。


「……お、おは、よう……」


ちょっと小声だが……挨拶をした。


みんなは笑顔をみせる。


「「おはよう!」」


▪▪▪


それからは、徐々にみんなと打ち解けた。

彼女の笑顔、見れて嬉しい……


あれ、もしかしてボク……彼女の事、好きなのかな。


そう思って間もなく、彼女から告白された。

答えは、勿論……


YES、そうだろ。


▪▪▪


「……あのね、私……駿君のおかげで、今があるの。本当にありがとうね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 松葉さん、ミステリアスな雰囲気の美少女を想像しながら読んでいたので、ダンスゲームを華麗にプレイするシーンでは、ギャップにキュンとなりました。意外と活発なところもあって、いわゆる『根暗』とは…
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