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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生者に生まれるという事

愛を認められなかった母親の話

『転生したら、泣きながら罵倒されました』に載せなかった番外編的なストーリー。母親の視点です。少し読みづらいかもしれませんが、お許し下さい。


先に『転生したら、泣きながら罵倒されました』を読んでからこちらを読まれる事を推奨します。

 あの日の事は……今でもよく覚えている。


 あの人が居なくなった日。

 私の目の前で殺された日。

『私』の人生が終わった日。


 そして私が……それでも生きよう(愛そう)と思った日。







 ◇

 あの時、私は幸せだった。


 大好きな幼馴染と結婚して。

 二人で町外れの古い小さな家を買って。

 売れ残りの小さなケーキでお祝いをして。



 幸せだった。

 今日まで生きてきて良かったと思った。

 これから二人で生きていくんだと、そんなたわいも無い約束をした。



 裕福では無かったけれど。

 明日の事も分からなかったけど。


 とても、とても幸せだった。





 私は知らなかったのだ。

 幸福は、簡単に消えてしまうという事を。

 あぁ……なんて滑稽!



 終わりは唐突だった。



 あの人が通りすがりの転生者(クズ)に殺されて。私はその男に連れ去られて。


『今日から俺の女になれ』なんて、気持ちの悪い事を告げられて……。


 気付けば私はベッドの上で………ナイフをその男の胸に刺していた。何度も何度も突き刺していた。




 ―――死んでしまおうと思った。


 もうあの人は居ないから。

 私は汚されてしまったから。


 ―――消えてしまおうと思った。


 この、血塗れの手と一緒に。





 あの人と一緒に死のうと思って、ふらふらと夜道を歩いた。私の家へ、私達の場所(幸福)へ……早く帰りたいと思って。


 けれど、あの人はきっと天国にいるけれど……人殺しの私はそこに行けないのだと。そんな当たり前の事に気がついて……目の前が真っ暗になった。―――もう二度と、会えないのだから。



 ………そして、気付けば暗い檻にいた。



 私が殺した転生者(ゴミ)は、一応英雄だったらしい。

 素行が悪すぎて逮捕される寸前ではあったけど……まだ殺して良い人では無かったらしい。

 だから私は、悪人の犯罪者なんだそうだ。


 顔を歪めながら、私に会いにきた役人さんが言っていた。『すまない』と何度も何度も謝りながら言っていた。



 別にどうでも良かった。


 だって、あの人はもういないんだから。

 私は、もう汚れきっちゃってるんだから。


 いっそ消えたら綺麗になるかなって、そう思っていた。






 ◇

 ―――私のお腹に、あの人の子供がいると分かるまでは。



 生きなきゃと思った。

 たっぷり愛するんだと誓った。

 あの人の分まで、頑張ろうと思った。


 あのゴミと同じ転生者だとも分かったけれど……そんな事は関係無い。

 どんな子供かなんて関係ない。


 あの人の子供なのだ。

 私とあの人の子供なのだ。


 だから私は、愛してみせる。あの人の分も……絶対に。





 けれど、そんな夢は叶わなかった。




 あの子は、『勇者』として生まれたらしい。


 そして私は……『転生者を恨む殺人犯』なのだそうだ。



「貴方と会わせるわけにはいかない」と、そう言われた。


「貴方に殺させるわけにはいかない」と、そう言われた。




 違う。

 違う!

 違う!!!


 私はそんな事しない!

 その子を愛しているの!!

 あの人と同じように!


 奪わないで!!


 返して!!


 その子を返して!!



 大切な子供なの!!

 あの人が遺してくれた子供なの!!



 返して!!―――私の子供を返して!!







 ―――そして私の子供は、いなくなった。







 ……………。


 諦めない。


 諦めてたまるものか!



 その子は、私の子だ。

 私と、あの人の子だ!!



 信用が無いなら、作ればいい。

 証拠が無いなら、探せばいい。



 私はあの子を愛していると、死ぬまで愛し続けていると……証明してみせる。




 牢獄から出る為に模範囚になり、あの子に会う為に教会に行った。

 教会で大司祭様や賢者様なんて大物が出てきた事には驚いたけど……関係ない。


 私はあの子を愛している。

 それを証明するだけの事。


 証明出来ないのなら……もう死んだって構わない。





 ◇

 そして私は……王宮の侍女になっていた。

 平民の犯罪者がなれる職業の中では、最高の職なのだそうだ。



 王宮にはあの子がいた。

 私の子供が、生きていた。



 近付いてはならない。

 話しかけてはならない。

 抱きしめるなんて許されない。


 それが私に定めされたもの。

 私が此処にいれる理由。



 でも、それで十分だった。


 もう十年以上経っているのだ。今更会いに行ったところで、彼を怖がらせるだけだろう。


 あの子は立派な勇者で、私はただの犯罪者。あの子の母親になってしてあげられるいい事なんて、一つもありはしないのだ。




 だから、諦めていた。

 自分を捨てた親と憎まれているのだろうと、そう思っていた。



 ―――あの日、あの子の部屋に、呼び出されるまでは……。

蛇足なので供養だけして検索から外すつもりだったのですが……改めて読み返して消すのが勿体ないと思ってしまったので残します。本当にすいません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 夫が強姦魔に殺されたのか それでも息子のために 強い人だなあ
[気になる点] なんで、恨みの対象が殺人レイパーじゃなくて転生者と判断されたのかが解からん。 英雄が個人認定されてない?
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