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ヴォーカロイドパニック  作者: たかさん
7/44

オーディション終了

いらっしゃいませ

まず一週間連続、と目標をたてていたので、

短めですがアップします


 俺は頭を下げて挨拶すると、ゆっくり部屋の戸を閉めた。

 カチャリ、と音をたてて戸が閉まったのを確認すると、一度大きく息を吐く。

 やっと終わった……

 ほんとに悪夢のような時間だった。一気に10キロくらい痩せた気がする。

 これ以上体重が軽くなったら大変だけど。

 そんなげっそりとした表情で室外にでた俺の手には、一つの紙袋が握られていた。外側はソフトメーカーのロゴが遠慮がちに描かれており、一見すると普通の白い紙袋だ。外側から見ればね。

 俺はその紙袋の中身をそっと覗き込む。

 外から見た地味さと反対に、中身はとてもカラフルだった。これでもかというほど詰め込まれているのはヴォーカロイドグッズ。文具やポスター、タオルらしきものや小さいフィギュアまで。そしてどうやらそのほとんどが非売品のレアものであるらしい。このグッズはサンプリング音声とやらのオーディションを受けた全員がもらえるものだということだ。

 そう、春一の目的はこのグッズ詰め合わせにあった。

 実際問いただしたわけではないけど、おそらく間違いないだろう。

あいつはこのグッズが欲しかった。 

でも非売品であるうえに、オーディションを受けた人間しかもらえない。そこで俺を利用した。


「ゆるせん……」


 一番許せないのは、俺を女性として参加させたことだ。

 部屋にいた人たちの「彼女」とかの二人称でそれは察せられた。

 俺のコンプレックスである容姿や声を利用したこともそう。あんな針のむしろのようなオーディションを受けさせたのもそう。

 文句の一つや二つじゃすまない!

 俺は肩をいからせながらエスカレーターに乗り、下の階へと向かう。

 と、すぐに足を止める。

 そういやあいつどこに行ったんだ?

 動き出す前に、まずは春一の居場所を確認しないと。

 ポケットからスマホを取り出し、春一のケータイにコールをいれる。

 スピーカーの向こうから響くコール音。

 一回……2回……3―――


『もしもし?』


 あ、でた。


「もしもし? 春一?」


『電話できるってことは、終わったのか?』


 終ったのか、じゃねぇっての!

 つかやっぱりコイツの仕業か!!!

 いや待て。ここで怒鳴ってはだめだ。逃げられる可能性があるうえに、俺のこの声では受話器越しに怒鳴ったとしても効果が期待できない。するなら胸倉を掴んで―――というのでないと……

 俺は怒鳴りたくなる気持ちを抑え、春一との会話を続けた。


「お前、今どこ?」


『西日本国際貿易会議場』


 西日本国際貿易会議場って――


「病院の方の?」


『うむ。おそらく続々と人が向かっているはずだ』


「わかった。人が多く向かっている方へ行けばいいんだな?」


 俺は通話を切り、スマホをポケットへ戻す。

 さて、あいつを懲らしめるために西日本国際貿易会議場へ向かわねばなるまい。

 西日本国際貿易会議場とはいわゆるイベントの箱施設だ。年間多くのイベント開かれている会場で、サブカル方面で言うと声優のコンサートや同人即売会などがよく開かれている。近くにサブカルシティがあるというのも、サブカルのイベントが多く開かれている原因だろう。

 俺は来た時に入ってきた2階の連絡通路に出る出入り口からビルを出ると、そのまま通路を港がわへと向かって歩く。

 春一の言う通り、駅から、そしてサブカルシテイからも、同じ方向へ向かっている人が多くいた。

 どうやらなにかのイベントが西日本国際貿易会議場で開かれているのだろう。

 人の向かっている方向を見ると、第3会議場か第4会議場あたりかな。

 西日本国際貿易会議場とは海岸の埋め立て地に作られたいくつかの施設の総称だ。

 貿易センタービルを中心に、イベントや会議、緊急時には避難場所としても使える施設が第1から第12まで、大小12棟敷地内にある。

 途中まではどの会議場に向かう場合でも同じ方向になるが、途中から向かう会議場によって道が分かれる。

 今、一番多いのは隣接する総合病院へ向かう通路か、貿易センタービルを通り抜けて反対側に位置する第3、第4会議場へと向かう通路だ。

 無論、春一が病院へ向かうはずもない。

 だとすれば――


「行くか」


 さて、どう懲らしめてやろうか。

 俺はそう考えながら移動を開始した。


読んでいただいてありがとうございます。

なにか★をもらえると元気が湧くらしいですよ?

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