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ヴォーカロイドパニック  作者: たかさん
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見知らぬオーディション(前編)

いらっしゃいませ

元の話を改変していたらいろいろぐちゃぐちゃに(TT)

またそのうち修正するかもです

 ココハドコ? ワタシハダレ?

 声にしてこそださないが、まさしくそんな状況。

 俺は一脚のパイプ椅子に座らされ、どこかの企業面接のように数人の大人と対峙している。長テーブルを挟んで向こう側、俺の前に座っているのは5人。向かって右から、ここへつれてきた店員と同じエプロンの中年男性、スーツを着ているサラリーマン風の人、TシャツにGパンという一番ラフな格好の若い男人、俺と同じ歳くらいの女の子、スーツを着たキャリアウーマンってかんじの女の人、という並びで座っている。一見するとエプロンの男の人はなんとなくわかるけど、他の人はまったくどういう人物かわからない。

 そんな5人と相対するように俺が一人で座っているのだ。威圧感がないはずがない。

 これが世に聞く圧迫面接という奴か。


「ええと、42番橘まことさん?」


 一番右端のエプロンの人が、手元の書類を見ながら俺に確認してきた。たぶんこの店の店長さんかな?と推察できる。


「……はい」


 確かに俺は橘まことではありますがね……なんなのでしょう? コノ状況はなんですか? と聞き返したいが、この張り詰めたような空気の中、チキンの俺に言い出せようはずがない。


「さっそくですが、橘さんは高校生だということですが、歌はいつもどこで?」


 へ?歌?


「歌、ですか?」


「ええ。学校の合唱部だとか?」


 歌、歌……


「カラオケ、かな?」


 カラオケボックスは小さいころは家族でよく行ってたし――

 今は行かないけど。


「なるほど。では本格的に声楽を習ったことは―――」


「ないですけど」


 身内から少し習ったことはあるけど、本格的になんてあるわきゃない。

 …………

 うん、いやね、さすがに鈍いと言われる俺でも、ただ限定版を買うのに、こんな面接っぽいことをするわけはないと気がついてはいるんだよ? でも、「なんなんですかこれ?」とか「限定版を買いに来ただけなんですけど」とか、言い出せる雰囲気じゃないんだよ!

 今できるのは、このよくわからない面接みたいなのを、当たり障りなく、かつ早く終わらせること。

 早急に春一を探し出し、このことを追求すること。

 さっき呼ばれた「42番」という数字。

 春一に渡された缶バッジの数字が42。

 まさにこの状態をあいつが仕掛けたという物的証拠だ。


「では他の質問をする前に、先にすこし歌っていただきましょうか? どうですか?」


 店長(勝手にこう呼ぶことにする)は、他の4人に向かって確認するように言った。


「そうですね」


 とスーツの男の人。


「いいんじゃないでしょうか?」


 とキャリアウーマンっぽい女の人。

 Tシャツの人と女の子は口を開かなかった。でも店長の提案に賛同するように、うなずいてはいる。


「では、こちらのリストから一曲、なんでもいいので歌ってもらえますか?」


 店長はこちらに1枚のメモを差し出した。

 受け取ってメモを見ると、おそらく曲名ではあるとおもうが知らない曲がずらり。

 一曲もわからん。


「えっと、この中からですか?」


「そう」


「今からですか?」


「もちろん」


 うわ……マジか……

 俺は基本的に音楽を聴くのは好きだけど、歌うのは好きではない。

 理由は俺の声。

以前、まだこんなにコンプレックスが強くなる前に、友達連中とカラオケに行ったことがある。そこでマイクで拾われ、スピーカーを通して聞こえてきた声は、どう考えても男子学生の声ではなかった。普段からすこし高い声、だという認識はあったんだけど、ああいう機械を通して聞くと、より一層声の違和感に拍車がかかる。そのあと一緒に歌いにいった連中が、こぞって女性歌手の歌を歌わせようとしたのが軽いトラウマになっている。

 あと母親のせいもあるけど―――

 さらにはこの課題曲らしき歌がわからない。

 曲を聴けば「ああ、この曲か」って分かるかもしれないけど……

 

「ああ、新藤さんの提案で音源は用意していないので、アカペラでお願いします」


 店長さんがすこし考え込んでいる俺に向かって言う。

 たぶん歌いだすタイミングがわからなくて困っている、そう思ったのだろう。

 実は何を歌うとか以前の問題なんですけど。

 俺は向かい合って座っている5人の顔を順番に見る。

 どの人も真剣な顔で俺のほうを見ている。

 くっ……すいません、歌えません、なんていえない雰囲気だ。

 なにか適当なものを歌って、なんとかこの場をしのがないと帰れないようだ。春一の野郎……マジで後で覚えてろよ。

 俺は春一への殺意を新たなものにし、何か歌えるものを、リストとにらめっこする。

 どれか分かる曲は!


「橘さん?どうしました?」


「あ、いえ! なんでもありません!」


「では、お願いします」


 困った。困った!

 焦りのため前後不覚になりそうになったその時、うっすらとだけど歌が聴こえてきた。

 さっき聴いたヴォーカロイドの曲だ。


読んでいただいてありがとうございました

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