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ヴォーカロイドパニック  作者: たかさん
28/44

削除された……はず?

ブックマーク、評価等有難うございます。

このあたりの話は最初に書いていた話と大分変えていますので、

あとで再考するかもです。

 そう言って美佐さんは、ストローを使ってアイスコーヒーを一口吸い込む。

 俺のせい、と言われたこちらは、その言葉の意味を思い測って口をつぐむ。

 一瞬訪れる沈黙。

 やがて美佐さんはストローから口を離すと、中断していた会話を再開する。


「新藤さんって覚えているかしら? あのときの審査員をされていた」


「あ、はい。覚えてます」


 責任者だか監督だか、なんかそんな人だった気がする。要は審査する人たちのなかで、一番偉かった人ってことだ。


「その新藤さんがね、君のことを気に入っちゃったのよ」


 気に入った?


「それは?」


「ええ、君の声がね、新藤さんの想像する声とコンセプトにぴったりなのですって」


「コンセプト……」


「そう」


 そう言われて俺は、改めて手元の資料を確認する。

 目立っていたキャラクター原案、その絵の下に、それぞれのキャラについての詳細や性格などが、箇条書きで記載されていた。

 天音ソラ―――身長160センチ、体重48キロ……スリーサイズの設定まであるな……B84、W56、H80って、スタイルいいのか? 数字的にみせられても、よく分からない。でも絵を見る限りでは、スタイルがいいのだろうな。そして性格は聡明、古風、母性的な愛情の持ち主、上品などなど箇条書きにされている。想像するに良家のお嬢様ってとこか。

 もう一方のキャラクターは風音ノア。身長145センチ……ちっこいね。あ、いや、俺も人のことは言えないけど。んで体重39……軽っ! スリーサイズは……あ、これはたぶん残念な―――もとい、発達途上ってかんじの数字かも。性格は活発、元気、明るい、近代的、今風、などなど……こっちも見たとおりの元気なロリっこキャラって感じの設定らしい。

 あのオーディションは前者の方、天音ソラの声を選ぶものだと言っていた。

 ということはこっちのキャラのイメージに、俺の声が合っていたってこと?

 こんなお姉さま的なキャラに?

 というか前提として俺、男だよ?


「ソラは落ち着いた女性のイメージで行きたいらしいの。今までにはなかったハスキーな感じとかも強調できるようにって。そして新藤さんの頭の中に出来上がっていたイメージと、君の声とがぴったり一致したのですって。ああ、もちろん新藤さんは君が男の子だと知っているわ。というか、あの人だけね、あの場で分かったのって。それを踏まえて君で行きたいのですって」


 といわれてもなぁ……

 結局は女声って言われているだけだし、嬉しくともなんともない。


「もし私たちが橘君にサンプリングをお願いしても―――」


「お断りします」


「――でしょうね」


 俺がきっぱりそう言うと、予想通りとばかりに美佐さんは頷く。

 そんなもの当たり前じゃないか。

 俺は手にしていた書類をテーブルに置き、アイスコーヒーを一気に飲み干す。しばらく放置していたせいか、グラスの周りには結露のために水滴が張り付いている。

 アイスコーヒーを飲み干したのは、そろそろこの話が終わると判断したからだ。

 美佐さんはサンプリングをしてみないかと提案する。

 俺はその申し出を断る。 

 交渉決裂。

 終了。

 こんな流れで。

 だけど予想に反し、話はこれで終わらなかった。

 事はそんな単純な話にはなっていなかったらしい。


「でもね、ちょっとそれでは済まなくなってきてるというか」


 美佐さんが眉を下げて苦笑いをする。


「どういうことですか?」


「橘君はウィーチューブなどといった動画投稿サイトをみたりする?」


「はい、見ますけど……」


 ウィーチューブ……なんか嫌な予感が……

 美佐さんは俺の言葉に小さく頷いてから話を続けた。


「そこに先日のイベントを映した動画がアップされているのよね」


 やっぱり!

 でも!


「それって削除されたはずじゃ」


「削除?」


「俺の友達が動画アップしている人を知っていたらしくて、直接削除をお願いしたはずで――」


「どの動画かしら? いくつか上がっていたから」


 へ? いくつか?


読んでいただいてありがとうございます。

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