避けたいけど避けれない「進路」という岐路
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というか誤字がありすぎで落ち込むorz
と身構えたが、それは俺の考えすぎだったらしい。
彼女は机の上から、重ねているアンケート用紙を半分ぐらい、さらには俺が記入している集計用紙の下一枚を抜き取る。そしてそれらを持って俺の隣の席へと座った。松下さんは椅子を前に引き深く腰掛けると、俺の方へ向かって手を差し出す。
「ペン貸して」
「え?」
「手伝うから貸して」
「でも、これは―――」
「土井さんから聞いた。朝の日直の仕事しなかった代わりでしょう?」
むむ、土井さん話したのか……そりゃそうか。俺一人で集計していたら、怪しむのは当然だ。んで、その疑問は相方である土井さんにも向かうだろうし、土井さんは確認されたらきちんと説明するだろう。たぶん「橘君の言葉に甘えてしまったよ」的な、俺をかばってくれる台詞と共に。
「朝のことは別に何も言わないから、はやく終わらせましょう」
彼女はそう言って、さらに手を前に差し出す。
さっさとペンを貸しなさい、ということだろう。でもちょっと不思議だな。松下さんなら、手伝おうという気になったとき、自分の筆記用具を持ってきそうなものだけど……
俺は内心首をひねりつつも自分の筆箱からシャーペンを一本取り出すと、差し出された彼女の手のひらにぽんっと置く。
松下さんは「ありがとう」と言うと、すぐに集計に取り掛かった。
「選択方式の設問を集計して。私は記入式のものを集計するから」
さらにはどうすれば効率よく集計できるかのコツを教えてくれる。さすがは委員長オブ委員長。何度もこういう集計などをやっているからこその豆知識、彼女はいくつも持っていた。
「―――そんなかんじでやれば、時間も短縮できるし間違いも少ないの」
「おお~、さすが委員長」
「ほ、ほら! っさっさと終わらせるわよ! あと委員長って呼ばないで!」
褒めたのに不機嫌になってしまわれた。
率直にすげぇって思っただけなのに、からかってると思ったのかな?そんなつもりはないのに……
まぁ、言い訳してもさらに墓穴を掘るだけか。
俺は委員長――松下さんの言う通り、アンケートの集計に集中する。
彼女の教えてくれたやり方は確かにやりやすく、効率も良い。手伝ってくれていることもあって、これは早く終わりそうだ。
俺と松下さん、二人は無言でアンケートを集計していく。
時折クラスメートが荷物を取りに来たりするが、ほぼ二人きりの教室。外から部活をしている運動部の声が聞こえてくるだけで、室内は静かに、そしてゆったりとした時間が流れていく。
うーむ……作業がはかどるのは良いのだけれど、静かなのは微妙に緊張するというか、居心地が悪いというか……でも話しかけたりしたら、「口じゃなくて手を動かして」とか言われそうだし。
などと考えていると、予想外に彼女の方から声をかけてきた。
「橘君って」
「え? あ、はい」
「進路は決めているの?」
「進路?」
「そう」
何でまた急に……
彼女なりに気を使ってくれているのだろうか?でも進路の話はなぁ……未定だもんな。そのまま答えたら怒られるかもしれないとも考えたけど、嘘を言っても仕方ない。仕方ないってか、すぐにボロがでる。なので俺は書いたそのままを答えることにした。
「いや、未定」
「そう」
お?予想外な反応。
「む、なによ、その顔」
「え?」
「鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているわよ」
鳩が豆鉄砲食らったって……
「いや、進路を決めてないのを怒られるかなぁとか」
「橘君の私に対する印象って……」
彼女は小さくため息をつくと、小さく何かを呟いた。それはとても小さな声だったので、俺の耳までは届かなかったが。
「そういえば」
「うん?」
「委員長は何か決めてる?」
「進路?」
「そう」
松下さんは口元にシャーペンの尻を当てて、しばしの間「うーん」と考える。なんとはなしに見ていると、彼女はよくこういう仕草をしている気がする。ホームルームの話し合いのときや、誰かの相談にのっているときとか……たぶん考え事をするときのクセなのだろう。
考えるってことは、松下さんも進路は決まってないってことなのか?
「もしかして―――」
「あー、未定じゃないわよ」
違ったか。
「今は東京の女子大に進学するつもり。ただ……」
「ただ?」
「ホントにコレでいいのかは悩んでる」
松下さんは集計の作業を再開しながら、話を続けた。
「両親も望んでいる進路だし、嫌ってわけじゃないのよ……ただ、やってみたいこともあるのよ」
「やってみたいことって?」
俺が再度聞きなおすと、松下さんは少し言い淀みながらから、俺の問いに答えてくれた。
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展開を早く進めるために、本日21時にもう一話投稿します。
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