放課後の一幕
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というわけで、放課後デス。
この一行だけで、ホームルームから放課後まで時間が進みました。
ベンリデスネ。
いや普通に授業受けたのだけどね。
古文(春一が現代風に訳しすぎて頭を叩かれていた)や、物理(あてられた問題を松下さんが完璧に答えたので、春一と拍手をしたらにらまれた)とか、ヒアリング(教師の話を聞いてなくて、当てられたところが分からなかったら、春一が教えてくれた。それをそのまま答えたらまったく違う回答で、チョークが眉間に飛んできた)などなどの、普通通りの授業を乗り越えて迎えた放課後なのだ。
うちの学校は昼食後、昼休み→五時限目→六時限目→ホームルーム→掃除と言う流れで放課後に至る。掃除は当番制で、当番でない輩はそのまま帰宅したり部活へ向かったりとする。俺は今週いっぱい裏庭の一角が担当だ。席番号で分けられた班の生徒たちと一緒に裏庭へ向かい、竹箒を両手に意味のないカンフー技などを披露しあいつつ、無事(?)掃除を終え、こうして教室へともどってきた。
ちなみに特別な用事がないときは、掃除場所へ荷物も持って行き、終わったらそのまま帰宅という流れになる。
そうそう土井さんには、ホームルーム後にアンケートのことを申し出た。
彼女は、
「気にすることないのに」
と、笑って歯を光らせてました。
どこまで男前なんだ、土井さん……
まぁ、それじゃ悪いし、松下さんにバレると後が怖いのでっていうことで、アンケートの集計を引き受けさせてもらった。
彼女は、
「そうか。じゃぁ、頼むよ」
と、颯爽と立ち去っていきました。
どこまで爽やかなんだ、土井さん……
とそんなこんなで、現在はアンケートの集計中でございます。
俺はクラスメイトの記入したアンケートを確認しながら、陽子先生より渡された集計用紙へと、項目別に記載していく。
もちろん無記名なので、誰がどのアンケート用紙を提出したのかは分からない。でも書いてある字を見ることによって、男子なのか女子なのかくらいは結構分かる。
こうして集計していて思ったこと―――
女子は先を見据えているなぁ
ってことだ。
例えばアンケート項目の一つ、前の項目で進学を考えている人だけが答える欄。「現在考えている先」というもので、荒っぽい字で書いている用紙には「まだ決めていない」と記載されている。そのほかにも、男子生徒のものかなーと思えるアンケート用紙の同じ設問には、「大学」であったり「公立」であったりと、かなり大まかなかんじで記入されていた。なかには「ウィーチューバー」なんて回答もある。
対して女子が書いたと思われる用紙には、「○○大学××学科」であるとか、「○○専門学校」などなど……具体的な内容が多い。
もちろん男子であるからとか、女子であるからで違うとは限らない。だけれどもうちのクラスでは、その成熟具合の差というものが表れている。
ちなみに俺の回答は「未定」だ。
んなものまだ17歳で決められるか! という建前的な主張をしつつも、こうしてクラスメイトの考えを知ると、「未定」と書く俺は子供かもしれないと反省してしまう。
「んー、進路かぁ」
「進路がどうかしたの?」
返事が来るはずもない独り言に、どこからか言葉が返ってきた。
俺は下に向けていた視線を、その声に反応して上げる。
いつの間に立っていたのだろう?
俺の席から少し離れたところに、不機嫌そうな顔をした松下さんが立っていた。
「あれ? 委員長……なんで?」
「なんでってなによ」
む、より一層不機嫌になった……なぜだ?
「いや、部活なんじゃないの?」
「今日は休みなのよ」
彼女は美術部に所属していて、コンクールなどでも賞をもらうくらいの実力の持ち主だ。前に一度松下さんの描いた絵を見たことがある。普段の彼女とは違って(これ言うとまた怒られそうだけど)とても柔らかい絵だった。
ああ、そういえばあれからかなぁ……本人はその絵が気に入らなかったらしくて、破ろうとしていたのだけど、俺がそれを止めて一言言った。なんて言ったのかもう忘れたけど、あれからだ……今みたいに目を付けられるようになったのは……
やっぱ素人なのに口を出したのが悪かったんだろうなぁ。
たしかに春一のせいで悪目立ちはしているけど、ここまで目を付けられることはしてないと思うんだよなぁ。
「なに?」
「え?」
「じっと……こっち、見てるから……」
そう言って松下さんが、プイっと顔を逸らした。
どうやら考え事をしている間、じっと顔を見つめてしまっていたようだ。
顔を赤くしているのを見ると、また怒らせてしまったか……
とりあえず謝っておいたほうがいいな。
「ごめん……」
「別に、気にしないけど」
言いながら、すたすたと俺の隣まで近寄ってくると、机に広げてある集計用紙を覗き込む。そして作業の進み具合を確認すると、ゆっくりとため息をついた。
どうやら松下さんが考えていたよりも、進行速度が遅いらしい。進路のこととか考えながらやっていたから、客観的に見ると確かに遅いかもしれない。
松下さんの手がすっと動いた。
これは怒られるか?
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