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ヴォーカロイドパニック  作者: たかさん
20/44

今さらながら気がつくこと

ブックマーク、評価、誤字報告、感想、ありがとうございます!

一気にHRを終えたかったのですが、2分割投稿です。

 すぐに思いついたのは、先ほど松下さんから配られたプリントの回収。

 委員長は回収と集計って言ってたな。

 時間のかかりそうな――


「プリントの集計とかっていうのを引き受けるかなぁ」


 春一とちがって帰宅部な俺。たまに春一んとこや他の部に遊びに行くことはあるけども、基本的に放課後はフリーダムだ。

 借りは早めに返しておくほうがいい。

 俺は手元にあるプリントに視線を落とす。先ほど配られたプリントは進路調査の一環で、選択方式でアンケートに答えるもの。例えば「両親どちらかが事業主である」とか、「進学に興味ある」などといった設問が30問ほど続いている。そしてその設問に対して、生徒が無記名でyes/noで答えるのだ。無記名ってことからも分かるように、これは本来の進路調査ではなく、2年生全体の意識調査との位置づけで行われているもの。それは質問の中に、「尊敬できる人物がいる」とか「直したい欠点がある」などといった、進路には関係なさそうなものがあることからも分かるだろう。一学期に一回行われているのだけど、一体何の役に立つのだろうか?


「ああ、それがいいだろうな」


 俺がプリントを見ながらそんなことを考えていると、隣に座っている春一がそう呟いた。

 先の俺の呟きに答えたのだろう。

 ああ、声を聞いて思い出した。

コイツのサークルで用事はなかったかな?

 今まで説明してなかったけれど、こいつは学校で独自のサークル活動をしている。簡単に言えば、新しい部を立ち上げて活動しているわけだ。

 うちの学校は部員が5人集れば部活動として申請できる。しかしその時点では、正式な部ではない。単に集っての活動を許可してもらうだけ。部費や部室はもちろんない。そこで正式な部に昇格するためには、10人以上の部員と顧問、さらには1年間の活動報告を書類にまとめて提出し、学校の審査に合格しなければならない。つまり部員が少なかったり、顧問がついてなければ部にはなれないし、先の条件を満たしていたとしても、一年間はちゃんと活動しましたという実績がないと昇格できないわけだな。でで、正式な部ではない部は、「○○研究会」だとか、「××同好会」なんていう名称になる。うちの学校では部に昇格できない部の総称として、「サークル」と呼んでいるのだ。

 春一が代表を務めるサークルは、「現代総合メディア研究会」。名目は「世に出回るメディア関係の映像や音楽などに対する評価とその効果について研究する」会であるらしい。うん、こう説明すると良く分からないよね。ぶっちゃけていえば、「アニメとか漫画とかゲームとか、とりあえず興味のあるモノを追求していこう」というオタクの集りってわけだな。

一応俺も「現代総合メディア芸術研究会」、略して「総メー研」に所属している一員ではある。先ほどは「帰宅部」って言った通り、本質は「帰宅部」だ。総メー研に所属しているのは、当初人数合わせのために名前を貸した名残みたいなもの。今は結構な人数がいるから俺はいらないと思うのだけど、わざわざ「退部」って形をとるのもアレなんで、そのままになっている。

 それで所属する部員とも知らない仲ではないので、時々遊びに行っており、そのついでに活動を手伝ったりしたりしていた。手伝うといってもたかが知れているのだけれど、漫画とか読ませてもらってるからそのお礼って感じ。

その手伝いが放課後にあったのなら、一言言っておかないといけないだろう。


「放課後は特になにもないよな?」


「そうだなぁ」


 春一は天井に顔を上げて、記憶を探るように考え込む。


「カズが担当している会誌は?」


会誌とは総メー研のサークル誌のことである。これはメインとなる活動の一つであり、年に4回、定期的に発行して配布している。サークル誌は各部員が一つのテーマごとに原稿をまとめ、それを一冊にまとめたもの。話題になっているものを取り上げたり、独自に小説を連載したり、はては学校の勉強関係の記事も載せたりすることがある。総合的な方向性や編集は春一がしているのだが、基本責任者は持ちまわりだ。そして今回は俺たちと同じ二年の三島和也―――通称カズ―――の番ってわけ。

 カズにはゲームをよく借りるから製作を手伝ったけど……


「全部終わってる。後は印刷所に持っていくだけ」


 やることはないはずだ。


「では、みずほっちのコスプレ衣装」


みずほっちとは一年の岡江瑞穂のこと。コスプレ衣装っていうのは、今度行われるイベントで着る予定の、彼女のコスプレ衣装のことだ。

学校のサークル活動でコスプレ?って思うかも知れない。うん、俺も同意見だ。

先に話したとおり、総メー研は正式な「部」にはなっていない。だから「部」に昇格するために必要な活動を積極的にやっているってわけ。まぁ、何をどう報告するのかわからないけど、みずほっちのコスプレも必要なんだとさ。

昔と違って現在は、コスプレ用の衣装を売っているところが、結構多くあるらしい。ただそれでもそれなりの金額がする上に、人気キャラクターの商品しかないために、マニアックな衣装は置いてないことがほとんどだ。そしてみずほっちがコスプレしたいと希望しているのが、ドマイナーな格闘ゲームの女性キャラ。イベント関係の行事もサークルの活動として報告できるので、できれば成功しておきたい。そこで似ているコスプレの衣装をアレンジし、希望のキャラクターの衣装へと作り変えたのだ。

 みずほっちに頼まれて、その手伝いをしていたけども……


「ほとんど終わったはずー」


 あとは小物だけっていってたもんな。

 もう俺の出番はない。


「寛二先輩の論文」


 「寛二先輩の論文」というのは、三年の水本寛二先輩の卒業に必要な論文のこと。大学ではよく聞く印象だけど、高校で「卒業論文」は珍しいだろう。これは自主性を重んじる校風の表れで、卒論をしっかり提出さえすれば多少成績が悪くても卒業証書をくれるのだ。それだけに「危ない」人は卒論をがんばったりする。

 一見するとサークルの活動には関係ないように見えるけど、同部内で留年者を出すと、学校側に対して印象が悪い。だからサークル内でもできるだけ協力しているのだけれど……

資料と定型文章は揃えているから、もう大丈夫―――

…………………………あれ?


読んでいただいてありがとうございます!

ブックマーク、評価は書き手にとっての五大栄養素です!

先が気になった方はぜひ!

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