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ヴォーカロイドパニック  作者: たかさん
19/44

29歳はまだまだ若いと思う

本日2話目です。

読んでない方は一つ前へ。

ブックマーク、評価、誤字報告有難うございます!

 キーンコーンカーンコーン

 スピーカーから、もう何百回聞いたか分からないチャイムの音が鳴り響く。私立ではちがう学校もあるだろうけど、公立ではほとんどの学校がこのチャイムの音を、時間割を告げる合図として使っているだろう。そう考えると、学生に一番聞かれている音楽である、とも言えなくもないな。

 今聞こえたチャイムは、ホームルームの始まりを報せるもの。通常であれば、担任が壇上に立ち、連絡事項や集配物を集めさせたり配ったりということをする。うん、これが一般的なホームルームの光景であるはずだ。

 だがしかし、我が二年一組のホームルームは違った。

 壇上に担任がいるのはいい。だがその担任は、教壇の上に突っ伏して倒れていた。そして「んー、んー」という苦しそうな声。これだけだったら生徒も心配しただろう。だが時折混じって聞こえてくる「飲みすぎたぁ」という言葉を聞けば、心配する気持ちもすぐさま四散してしまう。

 担任の名前は田内陽子。29歳、独身、彼氏なし。三十路を直前にして結婚相手を探すべく、週末には合コン三昧という女傑である。俺たち男子生徒から見れば、美人だしスタイルもいいからモテそうなのに―――と思うのだけど、できていないということは中身に問題あるのだろうか? あるんだろうな……

 春一の情報によると、前は金、土だけだったのに、今は日曜日にも出撃しているらしい。本気で焦っているようだ。

俺の考えるに飲みに行く回数増やすんじゃなくて、一回に飲む量を調節して、ちゃんと会話なんかに力を入れれば、もっと効果がでるんじゃないかと思う。生徒には好かれているし、仕事もちゃんとしているし(月曜日の午前中を除く)、恋人もできそうなものなのに。翌日にもお酒が残るほどに飲んでいては、なかなか男も引っかからないだろう。

 そしてそんなダウン状態の陽子先生の側で、彼女の代わりにテキパキとホームルームを仕切る生徒がいた。

 優等生のトレードマーク(?)である三つ編みと眼鏡を完備した女子生徒、クラス委員長であらせられる松下法子様です。なんでこんな紹介になるかっていうとですな、いつもつるんでいる悪友春一のせいで、優等生である彼女に「問題児」として目を付けられている次第でありまして……まぁ、苦手なのですよ。嫌いってわけじゃないんだけど。

 とういうか、これでいいのか陽子ちゃん。

 


「先生!このプリントを配りますよ!」


「耳元でさけばないでぇ、頭にひびくぅ」


「翌日につらい思いするのなら、飲む量は考えてください!」


「謝るから、叫ばないでぇ」


 松下さんは担任にも説教をしながら、配布物を配って行く。さらには陽子先生が持ってきた出席簿で点呼をとり、それに挟まっていたメモ(生徒への連絡事項らしい)を読み上げたりと、縦横無尽の大活躍。まるで副担任のようだ。相対的に担任のダメっぷりが強調される結果となるのだけれど。


「連絡事項はこれだけですね。配布したプリントは帰宅前に集めるので、それまでに記入しておいてください。あとは……今日の日直はそのプリントの回収と集計を―――」


 と、彼女は黒板を振り向いた。黒板の隅に書かれてる日直の名前を見て、瞬時に眉をひそめる。そこにあったのは土井という女子の名前と、橘という男子の名前だった。

 あ……俺、日直じゃん。

 全然気がつかなかった。始業ぎりぎりに来たし、朝の日誌とか取りにいってないな……

 てことは朝の仕事を、全部土井さんにやらせていたのか……悪いことをしたな。

 俺は廊下側のちょうど半ば当たりに座っている女子生徒へ視線を向けた。

 うちのクラスは成績順で席が決まっている。一番後方の列が成績の良い生徒、成績の悪い生徒は前に座るってかんじだ。もちろん視力の関係で成績がいい奴でも前列にいったりするが、基本的には教壇から遠いところが成績優秀ってわけだね。生徒からは色々不満もあったけれど、陽子先生には敵わずこういう席順で落ち着いている。

 ちなみに俺の席は一番後列の窓側から2番目。ふふん、意外だろう?親に無理言って日本に残してもらっている以上は、成績もそれなりに修めなければならないのだよ。こう見えても、前回のテストは学年7位だぜ!

 と、それは置いておいて今視線を向けている土井さんは、バスケ部のエースで次期主将候補という、面倒見の良い人だ。下級生にも慕われているらしい。ショートカットで背が高く、ボーイッシュ―――そんなお姉さま的なところも、後輩から慕われている要因だろうな。

 その土井さんは俺の視線に気がついたのか、前に向けていた顔をこちらの方に向ける。

 俺が眼の前で拝むように手を合わせると、彼女は笑いながら手をひらひらと振った。気にするなってことだろう。男前だぜ、土井さん!

 そんな遠距離のやり取りをしていると、俺の横、窓際の席に座っている生徒が、俺に向かって呟いてくる。


「お前、日直だったのか」


 聞きなれすぎた声―――春一だ。

 俺と同じ一番後列、しかも窓際に座っているということから分かるように、俺より成績がいい。クラスで一位、学年全体でも毎回ベスト3に入っている。それも俺みたいに必死に勉強してってかんじの成績ではない。まったく腹立たしい。


「そうらしい……すっかり忘れてた」


「忘れてたじゃなくて、知らなかっただろう?」


「ん……土井さんに悪いことしたな」


「松下嬢に知られる前にフォローしとけよ」


 言われるまでもない。

 なんだか分からないが俺と春一は、委員長である松下さんに目を付けられているフシがある。悪い意味でね。もし俺が日直の仕事をやってなかったって事を知ったら、眼鏡を光らせて説教しにくるにちがいない。土井さんはああいう人なので、松下さんに言いつけたりはしないだろうけど……まぁ、それは置いておいても、代わりにできることがあればやっておきたいな。


読んでいただいてありがとうございます。

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大悟にたいするノブです。

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