表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴォーカロイドパニック  作者: たかさん
16/44

脱衣所の攻防w(後編)

美雪が出てくる場面は書いてて楽しいです。

ブックマーク、評価、誤字報告有難うございます!

 俺の顔を見上げて、なにやら確認してきた。

 そんなに仰々しくしなくてもいいだろうに……


「よろしく」


 俺がそう返事をすると、深雪は予想外の行動をとる。

 彼女はすっと俺の足元へしゃがみこみ、「えい!」とばかりにパジャマのズボンを引き摺り下ろしてきたのだ。とっさにパンツをガードしなければ、それすらも下へずり下げられていたに違いない。


「ちょ! おまっ」


 深雪の突然の暴挙に、それ以上言葉が出ない。

 いや、普通そうだろ?いきなりズボンをひき下ろされたら……

 俺は即座にズボンを引き上げようと、パンツから手を離し、パジャマのズボンに手をかける。だが深雪が両手でしっかり押さえているために、引き上げることができない。こいつ、意外に力がつえぇ!


「手を離せよ!」


「なんでよ!」


「なんでって!」


「脱がないとできないでしゅ!!」


 できないって―――なんで着替えたばかりのパジャマを、洗濯する必要があるんだよ!しかも語尾を噛んでいるじゃねぇか!

 俺は力ずくで太ももまでズボンを上げた。


「なんでえぇぇぇぇぇぇ!? 上げちゃうのよぉぉぉぉぉ!」


 深雪がそう言いつつ、じりじりとズボンを下げていく。二人の力が拮抗し、ズボンを握る手がぷるぷると震える。顔を真っ赤にしつつ俺のズボンに手をかけている様は、我が妹ながら恐ろしい。


「はーなーせーよ!」


 負けずにズボンを上げようとする俺。


「いーやーだ!」


 こちらも負けずに、ズボンを下ろそうとする深雪。

 ぎりぎりの攻防のせいで深雪の頭が、俺の腰へと最接近してくる。


「おまえ! 今がどういう体勢か分かってるのかよ!?」


「―――え?」


 俺がそう言うと深雪は、力を入れるために下へ向けていた視線をふと正面へと戻す。その正面には、あらわになった俺の股間があった。あー、いや!勘違いしないでくれよ?!

あらわになっているといっても、パンツは穿いてるからな!

 それに気がついた途端、深雪はこれ以上ないというくらいに顔を赤くし、そのままの姿勢で動きを止めた。

 力が緩んだ!

 俺はそのチャンスを逃さず、一気にズボンを腰まで戻した。深雪が「あっ」と声をだして手を伸ばしてくるが、後ろに下がって距離をとることにより、それを回避する。

 よし!危機は脱した!


「あーーーーー!!!」


「あーじゃねぇ!! なにすんだよ!」


「お願いするって言ったじゃない!」


「それは今洗濯機に入ってるやつのことだ! 着ているものまでしなくていい!」


「洗濯機の中のでどうしろっていうのよ!」


「普通に洗濯すりゃいいだろ!」


「洗濯ってっ! ………………………………………………・・・洗濯?」

 

そう言って、深雪が動きを止めた。

 こう、なんていうのだろう。両手を前に差し出し、いまにも飛び掛ってきそうな体勢のまま、一時停止ボタンをおしたかのようにピタリと止まっている。まるでザ・ワールドの能力で止められた、スタープラチナのようだ。深雪はその体勢のまま、小さい声で「洗濯?洗濯なの?」とつぶやいている。時間は止められていないらしい。

 えっと……


「おーい」


「……」


 返事なし。


「みゆきー?」


「…………」


 返事(以下同文)

 うーん……動かないな……

 仕方ない。

 俺はしゃがみこんで深雪の耳元に口を近づけると、耳元に向かってふっと息を吹きかけた。瞬間、深雪はびくと体を震わせて、息を吹きかけられた耳を押さえる。

 あ、動いた。

 こいつは耳を触られたり息を吹きかけられたりするのを、極端に嫌う。何年か前に面白がって耳たぶを触っていたら、本気で怒られたこともあった。だからなるべくはしないようにしているけど、こういうときは仕方ない。だって効果絶大だし。


「ちょっと! 耳はやめてって―――」


「ようやく動いたな」


 深雪は俺がそう言うと、言いかけた言葉を飲み込み、何か考えるように俯く。どうやらようやく事態を認識したようだ。上目遣いでおれの顔を見て、両手を無意味に組んだり離したりし始める。こいつがバツの悪いときによくする仕草。


「あ……あの……いっくん……その、あれは……」


「これ洗われたら着るものなくなるからさ。これは洗わなくていいよ」


 言いながら、俺はパジャマのズボンをつまむ。


「う、うん……」 


 深雪は何か探るように俺のことを見ながら、小さく頷いた。


「……洗濯と思われてるんだ……よかった……」



「ん?」


「うんん! なんでもない!」


 そう言って、ぶんぶん首を横に振る。

 なんだ?なにか怪しいけど……ま、いっか。


「じゃぁ、今洗濯機に入ってるのだけよろしく」


「……わかった」


 深雪はぎこちない動きで、洗濯機のパネルを操作し始める。まるで錆びたロボットのような、ギギギッと音が出るのではないかと思える動きだ。もちろん深雪は何度も洗濯当番をしたことがある。だから洗濯機の操作がわからないから―――ということで、こんなロボット的動きになっているわけではない。考えられる原因は一つ。先ほど俺のパジャマを脱がそうとしたこと、それを引きずっているということだろう。俯いてパネルを操作する深雪は、激しく怒られたあとの子供のようだ。

 まったく……

 俺はため息をついてから、俯いている深雪の頭をくしゃくしゃと撫でる。俺も、まあぁ、そんなに背が高い方ではない―――スイマセン、ウソヲツキマシタ。背は低いです。そのため人の頭を撫でたりするのは、得意なほうではない。だけど俺の肉親である深雪も、女性の中でも小柄のほうだ。だから彼女の頭を撫でるのに、そんな苦労などしない。逆に「俺だって、こうやって頭を撫でることができるんだぜ」と、優越感に浸ることができるので嬉しかったりする。

 そして嬉しいのは深雪も同じらしい。昔から父親が仕事で忙しく、留守がちだった。だからいつも居ない父親の代わりに、俺にこういうことを求めていたのだと思う。なので機嫌が悪かったり落ち込んでいたりしているときには、こうしてやると機嫌が直るんだ。普段はそうでもないのだけど、こういうところは子供っぽい。

 今も頭に手をやった瞬間は少しびくっと体を震わせたが、後は俺の撫でるのに身を任せていた。洗濯機を操作する手も、スムーズに動き始める。

 よし、大丈夫か。


「とりあえず……気にするな」


「…………うん」


「じゃ、まかせた」


「うん」 俺は最後にポンポンと軽く頭を叩くと、深雪を残してそのまま洗面所を後にした。

 洗濯のセットするだけだったのに、なんだか疲れた。


読んでいただいてありがとうございます。

ブックマーク、評価は喜びです!

キン肉マンに対する牛丼です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ