脱衣所の攻防w(中編)
微妙に長いので分割投稿です。
ブックマーク、評価、誤字報告ありがとうございます!
ゆっくりとそれを指でつまみ、籠の底から持ち上げる。
それは一見しただけでは「布切れ?」と疑問を思えてしまうような小さな物体。だが両手で広げると、それがただの布切れではないことが分かる。いや、広げないでも、薄々なんだかは想像できる……
俺が両手で広げたもの、それは想像通り女性の下着だった。それもスケスケ、ヒモヒモ、アミアミなんていう言葉で表現できるほど心もとないもの。そもそも下着として機能するのか、いやそれどころか、穿けるのすら怪しいものだ。
俺はそれをみにょ~んと左右に引っ張る。
手にしたワインレッドの物体も、その動きに合わせて左右に伸びる。
お……結構伸びるな。
俺はさらに横に伸ばしてみた。
おお……これだけ伸びるなら穿けそうだ―――
「ちょっ! まこくん!!」
俺がみにょ~んと下着を伸ばしていると、慌てたような声と共に、洗面所の外から深雪が顔を覗かせてきた。そしてずかずかとこちらに歩み寄り、すごい勢いで俺の手から下着をつかみ取る。
「何してるのよ!」
「何って……洗濯だけど?」
「違うわよ! 今何をしていたのかって言ってるの!」
今?って、ああ……
「洗濯しようと思ったら、それが入ってて―――」
「いやらしい顔をして!」
「結構伸びるから、それ伸ばして遊ん―――」
「女の子の使用済みの下着を、一体何に使おうと―――」
って、俺が先ほどの状況を説明しようとするけど、深雪は聞いちゃいないな。俺の言葉にかぶせるように、何事かわめいてくる。
「まこくんだからといって! ……って……あ……」
と、だんだん勢いが弱くなっていき、やがて「はっ」となにかに気がついたような表情をすると、顔を真っ赤にして下を向いた。
「そっか……まこくんも男の子だもんね……」
声が小さすぎて何を言っているかわからないけど、なにかを呟きながら自分の髪をいじっている。風呂上りなので、トレードマークともいえるツインテールはしていない。もうしばらく切っていないから、だいぶ長くなっているようだなぁ。ちなみにこいつの髪は俺が切ってやっている。お金は節約しないとやっていけないのだ。俺の髪も深雪に切ってもらっている。でも俺はいいとして、深雪は女の子だからなぁ……そのうち「美容院じゃなきゃ嫌だ」と言うだろう。でもそれまでは―――と思ってやってるんだけど、意外にも未だ俺に髪を切らしている。こいつなりに遠慮してるんだろうか? そう考えると、ちょっとかわいそうだな。
「こういうのに興味を持っても当たり前だよね。い、妹だといっても、お、女だもんね」
なんて深雪の髪の毛を見ていたら、再び何事か呟く。
だからよく聞こえないってば。
つか、はやく洗濯機をセットしときたいのだけど……
「深雪」
「な、なに?」
「それ、貸して」
俺は洗濯機に放り込むために、深雪の持っている下着を預かろうと手を差し出す。
だが深雪は目をまん丸にした後、顔を真っ赤にして俺をにらみつけてくる。
「まこくん!」
「ん?」
「欲望に忠実なのはあたしも嬉しいけど、でもでも! そんな変態みたいな行為はどうかとおもうの!」
変態って……けなげに洗濯をしようとしている兄に向かって、なんて事を言うんだ妹よ。……って……あー、そうか。そうだよな。いつもは何も言わないから気にかけなかったけれど、男に下着を扱われるのは抵抗あるだろう。今日のは初めて見るなんだか大人版の下着だ。そのせいで俺が洗うのに拒否反応を示しているのかもしれない。それにそろそろ下着自体を洗われるのに、不快に感じる年頃になったのかもしれないな。ほら、「お父さんのとは別に洗って!」みたいな……これはちょっと違うか。
でも、んー、どうしよっか?洗濯はしないといけないし……当番を交代してもらうかなぁ……うん、それがいいか。
「じゃぁさ」
「な、なに?」
「深雪がやってくれる?」
洗濯を……って、なぜそんな目玉が零れ落ちそうなほど瞼を見開く?
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あたしが!?」
「うん。そのほうが深雪にも良いのじゃないかなと」
そう言うと彼女は下着を手にしたまま、くるりと俺に背を向けた。
「なんで?! どうして?! まこくんってば、こんなに大胆なの?! こ、これはあたしが日々つづけていた、女に魅せちゃうぞ作戦が実を結んだということかしら?!!」
「深雪?」
「でもでも、いきなりごにょごにょだなんて、そりゃあたしだってごにょごにょには興味あるし、ごにょごにょしたいなぁとは思ってたりも……」
「おーい」
なんだか深雪の思考が遠くに行っているみたいだが? 俺の呼びかけにも戻ってこない様子だ。最近時々こんな風になるな。大丈夫か?我が妹。
「でも、これはチャンスよ! 一気に禁断の垣根を越えるチャンス! ネットで勉強した技を披露すればっ」
深雪は俺に背を向けたまましばらくぶつぶつ呟いていたが、「チャンス!」(ここだけちゃんと聞こえた)といいながら再びくるりと体を回転させた。そして俺のすぐ眼の前まで歩み寄り、うるうるとした目で俺を見上げる。
「上手に出来るか分からないけど、まこくんがしてって言うのなら……」
「上手にって……」
上手も何も、いつも普通にやってるじゃないか、洗濯。
それともあれかな?ネットに入れて洗わないといけないものをそのまま洗ったりだとか、柔軟剤入れ忘れたりだとか、ああいうのを謝っているのかな?でもそれならいつものことなんだけど……。
それに正直、当番で家事をやってくれていることには感謝しているんだ。こいつは今年度中学三年になっている。つまりは受験を控えているってこと。なのに塾にも行かず、家のことをしてくれている。元はといえば俺が親に着いていくのを拒否したせいで、この二人暮らしが始まった。こいつがこの家に残ったのも、たぶん俺を一人にするのが心配だったのだと思う。だからたとえ失敗した料理が出てきたり、セーターを洗って伸ばしたりしても、本当に気にしていないんだ。
「いつも通り普通にしてくれればいいんだけど」
「い、いつも通りっ?! もしかして壁が薄いの?! でも防音は完璧だし……それじゃぁ、覗かれ――そんなのダメ!!」
ダメ?
家事が不得意なのそんなに気にしてたのか?
いつもあっけらかんとしてたから、こんなに家事の失敗を気にしていたとは思いもよらなかった。なん となく泣きそうな顔までしているしなぁ。
うーん、どうするべきか……
やっぱり俺が当番どおりに洗濯しておくか。
「やっぱり俺がしようか」
「え?」
「深雪に任せるのも悪いから―――」
「ひとりでしちゃうの!?」
「え、うん、そうだけど」
二人ですることなんてないし。
「ま、まって! あたしがしたい!」
「うん?」
「下手でもがんばるから、あたしにやらせて!」
そう言って、俺の方に迫ってくる深雪。手に下着を握ったままだ。なんだか妙な迫力があったりする。
「やらせて!」
「じゃ、じゃぁ、お願いしようかな」
その迫力に圧されて、俺が了承の言葉を口にする。すると深雪はぱぁっと顔を輝かせたあと、今度は顔を真っ赤にして俯き、自分の握っていた下着を洗濯機へと放り込んだ。そして洗剤をその中にいれ―――ない?
「い、いくよ?」
読んでいただいてありがとうございます!
普通に邪な気持ちが無くても、下着をみょんみょんしてたら
変態ですねwちなみにまことくんは中身がないと興奮しません(?
ブックマーク、評価は喜びです!
アンパンに対する牛乳です!




