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ヴォーカロイドパニック  作者: たかさん
14/44

脱衣所の攻防w(前編)

微妙な文字数なので3分割で投下します。

ブックマーク、評価、誤字報告有難うございます!

 疲れた~

 俺はベッドへうつ伏せのまま倒れこむ。

 時刻は午後9時を回ったところ。

 場所は自宅マンションの自室だ。

 深雪が干してくれていたようで、掛け布団から太陽の香りがする。いや、太陽なんて嗅げるわけはないんだけど、そういう表現が適切かと。

 こうしていると、寝そうだな……

 俺はごろっと横に転がって、仰向けになる。


「うーん」


 光合成をして(厳密にはしていない)ふかふかになった布団の感触を味わいながら、今日一日のことを思い起こす。

 激動の―――という言葉を、頭につけても良いだろう一日。

 人前で歌うだなんて暴挙の後、サイン会にまぎれて脱出した。簡単に「脱出した」と四文字で表現をしているけど、その四文字にどれだけの苦労が込められているか……

 歌が終わって奈美のサイン会にプログラムが移ると、すんなり帰れると思っていた。

 だけど、まずお店のスタッフに捕まった。

それで「色紙へのサイン」と「写真」をお願いされて、丁重にお断りする。

次にスタッフを突破した後に襲い掛かってきたのは、行列に並んでいた人達からの握手攻め。人間握手するつもりがなくても、手を差し出されたら無意識にこちらも出してしまう。で握手する前に「ああ、自分はそんな立場じゃないじゃん」と気付いて引っ込めようとするが、もう後の祭り。まるで蛙に飛び掛る蛇のごとく、向こうから俺の手を握ってきた。一人そうして握手してしまうと、あとは流されるままだ。何人握手させられたか分からない。俺は少しずつ移動しながら、なんとか囲いを突破する。何かサインも頼まれていたけど、それは苦笑いを返すだけにとどめてスルーした。かけるわけないし……

 そしてボロボロになって会議場から離れた。

近くにいたら何に巻き込まれるか分からない。

もうこの時には、少し前の高揚感なんてない。触られたくないのに触られる、子犬や子猫の心境だ。とにかく逃げたいっていう。

 俺はそのまま歩道を進み、死角になる路地へと逃げ込む。

 そこでようやく一息吐こうとしたところに、あの人が現れた。

 俺はベッドに転がったまま、机に置いてある名刺に視線を向ける。もちろんこの体勢からでは名刺を見ることはできない。


「よっと」


 掛け声をあげベッドから起き上がり、机の方へと歩み寄る。そして無造作に置かれていた名刺を手に取った。

 その名刺にはこう書かれている。


 フェアリー・プロダクション 主任マネージャー 柏木美佐

 

あの場から移動してきた俺に、美佐さんは声を掛けてきた。

 美佐さんの言っていたのは、「声優に興味はないか?」ということだった。あの人は、俺が声優の卵でないことはもちろん、乗り気でヴォーカロイドの面接に行ったのではないということも知っている。うかろうとする気がないのも、当然分かっているだろう。それでもなお、美佐さんは俺に「興味はないか?」と声を掛けてきたのだ。


「私の目に狂いはないの。あなたはきっと売れる」


 と、熱心にそう言ってくれた。

 もちろんそう言ってくれて悪い気はしないよ?正直言ってね。だけどそれでも声優とかする気までにはならなかった。

 俺は丁重にお断りをして、差し出された名刺を取ろうとしなかったのだけど、「気が変わったら連絡してね」と、強引にポケットに差し込まれたのだ。さすがに捨てるのは悪いから、こうして持って帰ってきたけど……


「まぁ、電話かけることはないな」


 机の引き出しを開け、その中に名刺を放り込む。そして引き出しを閉め、自室を出て洗面所と向かう。

洗濯をするためだ。

 俺の家―――というと語弊があるけども、我が橘家は3LDKのマンションである。俺と妹の深雪に自室が一つずつ、それと両親の寝室という部屋割りで……っと、そういや親のこと話してなかった気がする。現在ウチには両親がいない。あ、いや、死んでるわけじゃないよ? 父親が海外出張、母親がそれに着いていったって感じ。普通は単身赴任とかを最初に考えると思うのだが、「一緒に行く」ということしか頭になかったらしい。まぁ、子供の俺が呆れるほど、ラブラブな夫婦さんなのですよ。海外は3年間の予定らしいので、当初は俺と深雪も着いていくって話だった。だけどせっかく本命の高校に受かったんで、もったいないから日本に残ることを決めた。そうしたら深雪も「あたしも残る!」と言い出し、結局子供だけで残ることになったわけだ。なので炊事、洗濯、掃除、買い物といったことは、俺と深雪とで当番を決めてやることになっている。俺は帰宅部だからいいとして、深雪は部活をしているので、交互ってわけにもいかないんだよね。

 てなわけで、今日の洗濯当番は俺ってわけだ。

 洗面所に着くと、電灯のスイッチを入れ、洗濯機の蓋を開ける。

 洗濯は夜のうちに洗い物を洗濯機に移し、洗剤をいれ、タイマーを仕掛けておく。そして明日の朝に、それを干して学校へ行くって寸法だ。最近の洗濯機は、音が静かで助かるよ。

 俺は服を脱ぎいれている籠を抱えると、蓋を開けた洗濯機の中にぽいぽいといれていく。総勢2名の服なので、量は当然少ない。風呂に入ったのが、深雪、俺という順番なんで先に俺の服、次いで深雪の服という流れで、衣服を掴んで入れていく。

 そして最後の一枚となったところで、俺の手が止まった。


「こ、これは……」


読んでいただいてありがとうございます!

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犬に対するチュールです!

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